ちっちゃな種が暮らしいい。
2006-11-19T22:27:53+09:00
gil-mendel
議長至上主義。黒くて結構!
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phase-50-2「分かるだろう、お前には。俺は、ラウ・ル・クルーゼだ!」
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2006-11-19T22:27:53+09:00
2006-11-19T22:27:53+09:00
2006-11-19T22:27:53+09:00
gil-mendel
seed-destiny
「何故なんだ、何故こんな!」
キラが叫ぶのは、ラウが生きているはずはないと思うからか。そうだな、その手で殺したのだ。あとは、何故その遺志を継ぐものがいるのかという問い、そして、再現される恐怖。
「ええいっ!!」
レイ……口開けすぎ。何度見てもここでどうしても笑ってしまう。どうやったらフルフェイスのメットを被ったまま、口の下側だけ顎が落ちそうなほど開けるという芸当ができるのか誰か教えてください。
放たれるドラグーン。両者の決着は、未だ着かない。因縁の、対峙。
アカツキとインフィニットジャスティスは真っ直ぐレクイエムへ向かう。あれ? 何でデスティニーが追いついていないのだ??
「えらい数だなあ、こりゃあ。が、数だけいたってねえ!!」
名無し男が蟻でも潰すように、防衛線を突破していく。
そうだ。問題は数ではない。問題は──機体性能と、遺伝子、そして、神の寵愛。何て虚しい物語なのだろう。何故人は、報われないのだろう。
一方AAもゴットフリートをぶっ放していく。そこへ、ミネルバが来襲。
「距離16!」って、そりゃちょっと近いですな。しかしこの間「距離20!」とかを聞いているのでまあたいしたことはありますまい。
タリアさんが、く、という顔をする。今回は本気だな。
ミネルバに戻らず雑魚をぱしぱし落としていたルナマリアは、ジャスティスを発見。無論、同時にアスランもインパルスを発見。
ルナマリアの脳裏に過ぎる、アスランの思い出。ミネルバに勝手にやってきた頃から始まって、ちょっかいかけた様々な記憶が。さらにそこにメイリンを思い出す。
「でも、何であなたがメイリンを……!」
すみません、その後に続くべき言葉は「連れて行った」とか「たぶらかした」とかなんですかね?
「よくもメイリンを!」
いやそんなこと言われても、あれは単なるモノの弾みって奴ですから。行きがかり上ついつい、女難フラグ大量に立てはしたものの、君を連れて行く訳にはいかなかったもので。つうかメイリンが勝手について来たって言っちゃ駄目ですか? まあルナの立場からしたらそうは見えないんでしょうが。
インパルスの砲撃を当然シールドで防ぐアスラン。力の差は歴然、といったところか。
「やめろルナマリア! お前も!」
「逃げるな!」
逃げてくれるだけましだと思ったほうがいいかもな。本気でぶつかったらあなた死にますよ。
「邪魔をするな! 君を討ちたく等ない!」
…………アスランって本物の馬鹿だと思うのはこんなときだ。ルナマリアがどういう性格か、上官だったくせに全く分かっちゃいない。侮られたと思えばルナは激昂し、普段以上の力を発揮する人だ。その辺り、レイの操縦術とか少々参考にしたほうがいいんじゃないかと思う。
「何をぉっ!?」
しかし彼我の差は埋めがたく、ルナにダメージ。そこへシンが助けに来る。いや遅いって。先刻はジャスティスのすぐ後ろくらいを追い縋ってたんじゃなかったのか?
「こんのぉー、裏切り者がぁーーっ!!」
シンの言葉はレイに規定されている。アスランを裏切り者だと呼ぶのは、それはシン自身の言葉ではなく、レイの言葉だ。だからその言葉は、あくまでも借り物で、シンの一番深くには根ざしていない。だがそれを使わなくては、シンは行動できないのだ。
「シン!」
アスランは自分の育てるべきだった部下の名を呼ぶ。どうして分かってくれないのだと言いたげに。しかし彼は、自分がいかに分からせようとしなかったかを、問わない。
「大丈夫か、ルナ!」
「シン!」
デスティニーが羽根を開く。飛べない翼。
「あんたって人はぁーーーーーっ!!!!」
シンが本当に言いたくて、本当にシンの言葉であるのは、寧ろこちらだ。ずっとシンはそう言ってきたのに、アスランの心には正しく響くことはなかったけれども。
「よくもルナを、ルナをやったなあっ!?」
シンの怒りの種が割れ、ジャスティスを地へ落とすばかりに。
ルナは二人の名を呼ぶ。……何ていうか、もう彼らは兄弟喧嘩しているようにしかみえない。ある意味ほのぼのしていさえする。
そんな痴話喧嘩の戦場とは別な場所で、レイとキラは激突を繰り返していた。最中のレイが、妙に幼く見えたりする。
「誰だ、誰なんだ!」
……キラよ、そんなこと問うても無駄だと思うんですが。つうか知って意味がありますか?
彼ら二人の能力はある意味怖い。明らかに通信回線を開かずしてお互いの顔を見、お互いの心を聞き取るのだから。
ついにキラは相手が誰か知りたいという一念で、こちらを睨み付けるレジェンドの搭乗者の顔を知る。少年。ラウ・ル・クルーゼではなく。
「君は!」
「……分かるだろう、お前には。俺は、ラウ・ル・クルーゼだ!!」
「!」
キラが怯んだ隙に、レイは集中攻撃を喰らわせ、そのいくつかは微かにヒット。
レイにもキラの声が聞こえ、顔が見えているのだろう。だから会話が成り立っているのだが……何者だ君らは。
「人の夢、人の未来、その素晴らしき結果、キラ・ヤマト!」
……そうだな、キラもまた、結果の子だ。レイ同様に。素晴らしい結果か、その踏み台かという違いはあれど。
怯んだところへ集中砲火を浴びせるも、防がれる。さらにその上に言葉を重ねるレイ。
「ならばお前も、今度こそ消えなくてはならない!」
死人の名を名乗られて、キラは明らかにトラウマに入る。もともと前大戦の後半分死んだようだったのは、そのトラウマがあったからだろう。
メンデルで相対したラウを思い出す。仮面を着けた男。
「俺たちと一緒に──生まれ変わるこの世界のために!!!!」
レイが何を為そうとしていたのか、はっきりしたと思う。「お前『も』『今度こそ』消えなくてはならない」、つまりは自分もラウもキラも、同じ人間の業として、次の世界にいてはならぬものとして、消えねばならないとレイは言うのだ。
議長が創る、新しい世界に、元からレイは生きるつもりなどないのだ。自分が何かを知っているから。
ふと、レイが回想する。
何故かアカデミーの赤服を着たレイが、まだ議長になっていないデュランダルへ問う。
「ねえ、ラウは?」
明らかに時空がおかしい。まさかアカデミー卒業時までラウの生死を隠しておけた訳もあるまい。だが議長の回想も時空がばらばらなことを思えば、仕方ないのか?
にしても、レイの声が妙に幼い。多分、こちらがレイとしての素、なのだろう。
「ラウは、もういないんだ」
背を向けたまま、デュランダルが答える。そして、振り返りながら。
「だが、君も、ラウだ」
「は?」
何を言っているのだろう、と不可思議な顔をする幼げなレイに、ポケットから例の薬を出して渡すデュランダル。
「それが、君の運命なんだよ」
いくら考えてもこの回想がよく分からない。レイが薬を貰ったのはもっと幼い、それこそ7歳くらいの頃だったはず。あのとき、デュランダルから薬を渡されて泣いていたのは、自分の運命を知ったからではなかったのか?
まあ勿論、今回は象徴としてラウの薬を手渡したのだという考え方も成り立たなくはない。それまではラウとレイが同一の遺伝子だと語っていなかった、のだとしたら。ということは、レイの立場からすると、自分と同じ薬をラウが持っていたと、このときになって知らされたことになるのか。まあ、そうでなければあの年齢よりもさらに幼げな表情はあるまい。とすると、レイのやたら大人びた人格が形成されたのは、ラウ死亡後ということになるのか。あり得ないとは言わないが。
だがそうだとしても、時空がおかしい。百歩譲ってアカデミー入学前くらいにしておいてくれるなら、意味不明な部分も調整つけられるような気がするのだが……どうだろう。
いつからレイは、自分もラウもキラも消えねばならない存在だと思うようになったのか。ラウ死亡後、その死の意味を考えていたのか。議長が描く世界の露払いとして消えようと思うようになったのはいつなのか。……まだそのあたりについては分からない。矛盾しない回答がうまく見出せない。
さて、一方シンとアスランは兄弟喧嘩を続けている。アスランに本気でシンを殺すつもりがないのだから、そうとしかとれまい。
シンは種割れするが、迷いを吹っ切り赤い機体に乗ったアスランには全く敵わず、ソードを叩き斬られてしまう。息を呑むシン、そしてルナマリア。
レイとキラに戻ると、どうもキラはレイの回想部分まで見えてしまったかのようで、恐怖に眼を見開いている。
「そんな、何故君が! 何故君がまた!!」
キラはレイとラウを同一視することから抜け出せない。そうでなくては「また」などと言えない。どう考えても明らかに別の人物であるのに、恐怖のあまり亡霊がそこに現れたかのように感じてしまうらしい。
「逃れられないもの、それが自分」
議長の声、恐らくはレイの回想。そこにオーバーラップする、研究所で若い議長から薬を渡される7歳くらいのレイ。幼く、従順な。自分、というか遺伝子というものから逃れられないことを知ったレイ。
そしてアレックスと名乗っていた頃のアスラン。彼も自分というものから逃れようとしていたのだった。
オーブの慰霊碑の前で立ち尽くし、悔し涙に暮れるシン。
再びフリーダムに乗ることを決意したときのキラ。戦士であることから逃れられなかったキラ。
カガリ。オーブを背負わなければならなかった少女。
撃たれたミーア。影武者として、始めからこうなると定められていた少女。
「そして取り戻せないもの、それが過去だ!」
声はレイ自身の声へ。レイが自分で得た答えなのだろう。
幼いレイはデュランダルの手から薬を受け取り、その運命に泣く。けれども次には、彼はデュランダルの傍からピアノへ嬉しそうに駆け寄り、微笑んで弾いている。どちらの時間がより早いのかは分かりにくいが、同時期のことと考えてもよさそうだ。
取り戻せないものは、辛い思い出も優しい思い出も、同じように流れているのかもしれない。
「だからもう終わらせる、全てを!!」
殺戮されるコーディネイター、血のバレンタイン、オーブ陥落。人類の負の歴史。
「そしてあるべき正しき姿へと戻るんだ!」
最初のコーディネイター、ジョージ・グレン。人工子宮を開発する研究者たち。人は人の命を手段にし、歪めてきた。
「人は! 世界は!」
憤りと激情を、レイはぶちまける。それを遠く、メサイアから注視している議長。
レイがこんなに激昂したのを、初めて見た気がする。今までは、例えばアスランを追うときも、計算されつくした「怒り」だった。感情に走らない人が感情に走るとき、それは殆ど、敗北へと繋がる。
それほど、許しがたい存在だったのだろう。踏み台にした者への、踏み台にされた者の怒りとだけ言うのでは足りない。存在そのものがあってはならない、自分と同じく存在してはならないモノ。自分と同じく、新しい世界を歪める者。だからともに、消えねばならないのだと。
レイはずっと、死へ向かって疾走していたのかもしれない。新世界建設という名の死へ。
一緒に死ぬんだと言われたキラは、反論する。
「でも違う!」
キラに撃ち抜かれる、レジェンドのドラグーン。レイは一瞬怯むが、新たなドラグーンを差し向ける、しかしそれも撃ち抜かれてしまう。
「命は、何にだってひとつだ!」
思わぬことを聞いたように、レイが硬直する。確かに、先刻まで自分とラウがイコールだと認めていた敵から、やっぱり違うといわれると驚きもするだろうが。だが、多分意味合いとしては、『君も、ラウだ』と言った議長の言葉に対するものとして、『俺は、ラウ・ル・クルーゼだ』という名乗りに対するものとして、聞き取ったのだろう。
「だからその命は君だ! 彼じゃないっ!!」
「ぁ……」
キラがどういうつもりでそう言ったにせよ、実は自分こそが亡霊に囚われているのを否定したくて言ったにせよ、その台詞はレイの弱い部分を衝いてしまった。いや、恐らくはレイ自身が心の隅で思っていたことだからこそ、図星を衝かれたというべきなのだろう。そうでなくては、そんな短い曖昧な言葉で虚に墜ちる理由がない。
心の底で、納得などいっていなかったのだろう。議長の描く世界を理性では理解し、賞賛し、それしか望む世界はないと考えていたとしても、奥深くの感情の部分で、違う、と叫ぶ思いが伏流水のように存在していたのだろうと思う。激情に駆られていただけに、言葉が感情の深い部分に届きやすかったというのもあるのだろう。
……だが、こんな状況で、こんな土壇場でそんな想いに気付かされるとは、レイがあまりに哀れだ。そんなことに気付くのは、もっと早く、せめてシンたちとの温かい時間の中であってほしかった。こんな段階では、もう、できることが少なすぎる。
身動きできなくなってしまったレジェンドを、キラはフルバーストで斃す。
レイの絶叫が、……耳に、残った。
駆け足でAパートを追ってきました。Bパートは、やはり私にとってかなり辛いので、もう少し先になると思います。また、Aパートについても後日追記する予定です。]]>
phase-50-1「そうさ、終わらせる──今度こそ、全てを!」
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2006-11-19T17:47:00+09:00
2006-11-19T18:10:41+09:00
2006-11-19T17:47:25+09:00
gil-mendel
seed-destiny
未だ、観る度に心臓が止まりそうになるのを覚えます。
それでも、私にとって一つのけじめをつけておきたいと思うのです。もうあれから1年以上が経過しているのに、未だ嘆き続ける心臓は終わらない、変わりません。だからこそ、書いておきたい。
しっかし種運命関係の文字を打つのが久し振りすぎて、あらゆる文字変換に多大な時間を要します。思えば遠くへ来たものだ。
今回はものすごく無駄に長いです。覚悟してください。まずはアバンから。
アバンはメサイアに向かうAA、それを迎え撃つ議長側。議長の表情が思ったよりも厳しいのは、戦況の厳しさを理解しているからか。
一方オーブに残ったカガリ。こちらはさらに無言で唇を噛み締める。
アスランがキラに声をかける、そこへレイのレジェンドが軽く一発脅しつける。
キラは自分が食い止めるので先にレクイエムを落とすようにと提案。提案しながら軽くシンを一蹴、デスティニーは被弾。……ああそうですかそうですか。
マリューさんは「でも、それではエターナルが!」と主張。彼女の主張には根本的におかしなところがありますな。
ラクスが「この艦よりもオーブです」と非常に当たり前のことを言うのがおかしい。だってエターナルはAA同様不沈艦ですから! 実際に沈む危機に直面し、かつ沈むのならその言葉にも価値があるがな! ほら、また名無し男が変なシールド張ってる。この力を他へ振り向けるなら信じてやってもいいですよ、その言葉。
イザークらはステーションワンを落とした後、やや迷う。だが、ディアッカの「どーすんの、イザーク」に「エターナルを援護する! ザフトの艦だ、あれは!」と意味不明な理由を付けてさらに明白な裏切り行為へ。
いや、そんなこと言ったらメサイアだってザフトの要塞だろうが。もううんざりだよ君たちには。頼むから視界に入らないところへ消えてくれたまえ。
AAとインフィニットジャスティスがレクイエムへ向かったのをレイが発見。
「行かせるか! ミネルバは何をやっている!」
いやそう言われても、ミネルバにもできることとできないことがありますから。
後を追おうとしたレジェンドをフリーダムが撃つ、それを例のキュピーンで避けるレイ。空間認識能力とは便利なものだな。
レイの様子を見てデスティニーが飛来するが、種割れしたキラと砲撃で牽制しあうのみ。そこへレジェンドが割って入る。
「シン、お前はミネルバと共に、アスランとAAを追え」
「えっ?」
そりゃレイ、シンじゃなくても驚くよ。
レイのこの時点の判断は、明白に間違いであったと思う。
シンはアスランに対して、フリーダムを討つよりも遥かなトラウマがある。以前はレイが傍で説得したから討てたものの、明らかに単身では落とせまい。アスランを討つのは、レイが行うべきだったろう。
フリーダムへのレイの怒りは尤もだが、実戦上はフリーダムにシンを当てるほうが無難だったと思われる。そうすれば或いは戦況は変わったかもしれない。結末も、無論。
滅多に感情に囚われることのないレイ、それが怒りに判断を誤ったことが、大きな敗因だったのだ。
「フリーダムは……、俺が討つ!」
レイの脳裏を過ぎる面影。ギルバートに会うために自分の手を引いていたラウ。幼い自分の目線までしゃがみこんで、頭を撫でてくれたラウ。
ラウがこんなに優しい人だったのだと、この物語は言った。そこに小さな救いを、見出す。
「……レイ」
「お前はジャスティスを。今度こそあいつを討つんだ。そして全てを終わらせろ」
「ああ、分かった!」
シンは自分のトラウマへと向かって去っていく。
それを見送ったキラは、レジェンドのドラグーンの集中砲火から身をかわしながら、その向こうに何故かラウを感じる。……どうして、ラウだと思うのだろう。遺伝子が同じなら同じだと、言っているに等しいのはお前ではないか、キラ。
ラウとの戦闘を思い起こすキラ。それはキラにとってのトラウマでもあって。
「これは、どういうことなんだ!」
だがラウの気配の向こうに、怒りに身を固めたレイを見出す。……レイ、明らかにあなたの左眼は髪の毛で塞がれてますけど。戦闘時くらいよけといたらどうですか。いくら空間認識能力に頼っているからって、視界は確保しておくべきだと思いますがね。
「君は!」
一方、アスランを追うシンは葛藤を押さえ込もうとして必死。それぞれがそれぞれのトラウマと戦おうとしているのだ。
そこへレイの声が被る。
「そうさ、終わらせる───今度こそ、全てを!!!」
怒りに満ちた、宣言。
そして、レジェンドとフリーダムが激突し、アバンが終了。
終わらせること、をレイは目標にしてきたのだと思う。
あらゆる悲しみを終わらせる、あらゆる戦いを終わらせる、そのためになら自分の命など百度焼いても恐れない、と。
あらゆるトラウマを終わらせる、あらゆる嘆きを終わらせる、あらゆる憧れを終わらせる、あらゆる絶望を終わらせる、あらゆる希望を終わらせる、あらゆる痛みを終わらせる。
それが自分の為すべきことだと信じて。人類の業の産物として生み出された、人間の欲を満たすためだけに造られた、自分という存在の為すべきことだと信じて。
けれど、今思う、それらは全て、人の歩まねばならない過程なのだ。それらの根本から存在しない世界は、痛みもしない代わりに、昨日も明日もない世界なのだ。……多分、レイが最期に辿り着いてしまった結論は、そういうことなのだろう。
私は痛みの積極的な甘受を主張しているのではない。人類の愚かさなどもう十二分に味わった。人が人を手段とする世界。紛争は止まず、核には核をと喚く世界。いっそ滅んでしまえばいい、としたラウの気持ちがよく分かる。私には破壊でなく建設の道を歩むことなどできそうもない。
痛みをなかったことにすることはできないのだと、この物語は呟く。
それらを潜り抜け、迷いながらも、傷つきながらも、人は歩んでいくのだと。
けれどもそこでは、その過程で命を落とし、また虐げられる者の痛みは軽んじられる。
だからレイは、最期混乱の中で死ぬしかないのだ。自分の光を、すなわち自分自身を己の手で撃って。虐げられた者の、贖いの子羊として、神を撃って、屠られる。
……アバンからこの調子では、あとどれくらい紙幅が必要となることやら。
まあぼちぼち行きます。今日中に書き上げられるかは非常に微妙。]]>
絶対無謬の正義でもなく、無欠の自由でもなく、永遠の平和でもなく、ただ、明日を。
http://mendel.exblog.jp/4153762/
2006-07-15T23:00:39+09:00
2006-07-15T23:00:40+09:00
2006-07-15T23:00:40+09:00
gil-mendel
seed-destiny
以前のような詳細なツッコミはする必要もないと思うので省きます。いやもう突っ込みたいことだらけですけど。
最終回を受け容れるためには、個人的に長い時間が必要でした。
今でもこの物語の視点について、(細かいツッコミはおいておくにしても)相容れると思っているわけではありません。
キラ・ヤマトとラクス・クラインがどこまでも是とされる世界、その世界に私はやはり相容れない。
けれども、結局、議長を撃って物語の決着をつけるのはレイしかいないのだというところにおいて、最終回のあり方も仕方ないのかと考える次第です。
議長とタリア、レイを置いて逃げ去るキラとアスランは、彼らの本質的な卑怯さを実は明白にしていましたし、所詮そのような彼らでしかない。彼らには人の痛みなど何もわからない。それでもう結構です。彼らにレイは明日を託さなかったのだから。ただこれ以上の「明日」を殺したくなかった、ただそれだけ。
オーブが世界を救える、そんな幻想は抱かない。
キラとラクスが世界を救う、そんな夢想は反吐が出る。
「また花を植える」、そんな超越者の視点など要らない。
自分で吹き飛ばしておいて自分で再び花を植える、無論同じ花などないのに、まるでその努力が何か尊いものであるかのような正当化は要らない。
明日を。
ただそれだけの言葉で、充分だったと思うのです。
人が鮮烈に生き、駆け抜け、慟哭しつつ去る物語には。]]>
…よしてくれ。
http://mendel.exblog.jp/2862649/
2005-10-10T20:43:35+09:00
2005-10-10T21:08:50+09:00
2005-10-10T20:40:38+09:00
gil-mendel
daily
正直、アニメでこんなにダメージが大きいとは思っても見ませんでした。
議長の死もレイの死も充分想定内事項だったのですが、未だに、思い返そうとするだけで心臓が痛みます。
普段通りツッコミ入れながら最終話感想を書けるのは、どうもまだまだ先のようです。申し訳ありません。
これが運命だったのですかね…? フ、よしてくれ。
種運命が終わってしまったので気晴らしにBLOOD+を見てみましたが、多分私向きではないようです。…全く受け付けませんでした。何故だろう。
エウレカには萌えませんが脚本に苛立つということはないので、安心して見ていられます。しかし感想を書くことはないでしょう(多分)。
このままファフナーのright of leftを待ちつつ、マルドゥック・スクランブルの映像化を期待していようかと思います。…私には、U氏の救いのある緻密で有機的な脚本が恋しくてなりません。これだけ痛めつけられれば救いも欲しくなるというものです。
例えばスピナーが球を投げる、その行為それだけで感動の涙が溢れる、そういう脚本に私は会いたい。]]>
生きられるのなら、生きたいだろう。
http://mendel.exblog.jp/2814499/
2005-10-02T21:03:02+09:00
2005-10-02T20:59:39+09:00
2005-10-02T20:59:39+09:00
gil-mendel
seed-destiny
大体私の通常の感想というやつが無駄に長すぎるだけなんですが…。
今週は私事も忙しい予定なので、何曜日頃という目処も立ちにくく、申し訳ありません。本編を消化しきるのに、私には未だ時間が必要なようです。今週中にはupできると思うのですが…。
なので、以下はごく簡単な溜息だけ。
……生きろ。
生きてくれ。
死を選ぶことに、どんな救いがあると?
死が何の解決になると? 死がどんな言い訳になると?
……ああ、だけれども、人間には臨界点というものがあるのかも知れない。
最初から、死ぬことだけを目指して描かれた人など、辛すぎる。]]>
あんたって人はぁっ!
http://mendel.exblog.jp/2807813/
2005-10-01T18:44:23+09:00
2005-10-04T05:32:42+09:00
2005-10-01T18:42:22+09:00
gil-mendel
seed-destiny
現時点での叫びなので、もう少し考えたらまた色々変わるかも知れません。
皆さんにお尋ねしたいのです。この物語の1話から49話まで見てきたはずだったのですが、私が見逃している話数がもしかしてあるんじゃないんでしょうか。
48話あたりに何か違う話が入っていたんじゃないかな。それとも今回は最終回じゃなかったのかな。実はCMの間に全国的には何か違う話数が流れていたりしてませんでしたか?
大団円ってこういうことじゃないだろう………。
ステラ…「明日ね、明日」って……切なかったなあ。
シン………生きろ。主人公だろう君は! どうしてこの物語は主人公そっちのけで話が進むんだよ! 可笑しいだろう! とりあえず生きてくれ、頼む。オーブを消滅させなくて、君のために良かったと思うよ。カガリでもラクスでもなく、オーブで辛いめに遭った、君のために。
レイ……………そうか。君か。分るような気もするし、分らないような気もする。君も議長の思考統制下にあったということなのかもしれないな。最後、「おかあ、さん…」と言ったっけ。「父も母もない」が、何より実はそれを望んでいたのかな。
議長。今回あなたには言いたいことがたくさんあり過ぎます。首洗って待ってて下さい。
タリア。あなたが議長を撃ってくれる方が、議長は喜んだかも知れないな。だが、ありがとう。]]>
phase-49-02 「キラ・ヤマト…お前の存在だけは、許さない」
http://mendel.exblog.jp/2777171/
2005-09-26T19:52:17+09:00
2005-09-27T07:18:45+09:00
2005-09-26T19:50:29+09:00
gil-mendel
seed-destiny
「一応出ていって瞬殺されてくる?」と言うディアッカにイザークは「そんな根性なら最初から出るな!」と怒鳴って自分も出撃していく。ヴォルテールには後方支援に徹するように言いながら。
この段階で、ディアッカは寝返る意志満々な訳だが……ミリアリアという存在がある以上、ある程度仕方のないことなのかも知れないけれども、そうならそういう描写をもっと以前に入れておけば良かったんじゃないかと。
タリアはAAと対峙しながら、オーブでマリューに出逢った時のことを思い出す。
「私も同感よ。だから今は戦うしかないわ……終わらせるために!」
それに重ねて思うのは、プラントにいる子、5話の艦長室でユニウスセブン墜落の動きを聞いた議長(バスローブだよ)、かつて議長と別れた際に交わした握手、椅子に座る議長。
意外に、タリアの感情のかなりの部分を議長が占めているのだなあと思った。議長を知るタリアさんには議長が怪物になる前に留めてやりたいという思いもあるのか。
「終わらせるために」、か。
そうだな、あらゆるものを終わらせなくてはならないのかも知れない。
「ザフトの誇りにかけて、今日こそあの艦を討つ!」
そうそう、タリアさんはこういうキャラだよ! 決して離反せずザフトの誇りを堅持してくれる、そして離反せずして過ちを糺してくれる、そういう人が欲しかったんだよ!
……もう見渡せど、タリアさん以外に見あたらないキャラだけれども。
シンをパイロット控え室に置いたまま、議長とレイは二人きりで話をしている。シンに聞かせられない話? まあそうかな。
「ステーションワンはもうまもなく墜ちるだろう。だがまあいい、換えはまだある。その後彼らは、恐らくそのままこちらへ来るだろう。何と言っても数が少ないからな」
「はい」
ミネルバが守ろうとしているもの、それが直に墜ちると議長は断言する。戦局が読めてしまうのも虚しいものだ。
「ミネルバや守備隊が大分消耗させてくれるとは思うが、だが分っているな、彼らは強い。それで討てねば全てが終わるぞ」
「分っています」
ミネルバでは撃破できない、それを見越してデスティニーとレジェンドを議長は自分の身を守るために呼び寄せたのだという訳だ。レイに最終決戦の覚悟をさせる、その心中や如何に。
一方、ルナマリアはエターナルを襲撃しようとしていた。だがそこにはメイリンがいる。
自分に(これでいいのよね、これでいいのよね、シン)と言い聞かせながら撃とうとするルナマリアに、メイリンが回線を使って呼びかける。
「お姉ちゃん、やめて! 何で戦うの、何で戦うのよ! どのラクス様が本物か、何で分かんないの!」
………正直唖然とした。
メイリン…君はミーアの死に際に傍にいたんじゃなかったのか。本物かどうかという問題じゃないことを、どうして学んでくれないのか。AAに行ったことが少しでも君を成長させてくれればと思っていた、だが、明らかに君は状況に流されただけで自分で深く考えるということをせず、その場の感覚だけで動いただけではないか。
何で戦うのかだと? プラント管轄下の宙域で戦闘を仕掛けてきたのはAAの側ではないか。「真のラクス様」のもとにプラントが馳せ参ずべきだとでも君は言うのか?
君にはこの言葉で充分だ。
「本物なら全て正しくて、偽者は悪だと思うからか」
…君の言葉のせいで躊躇した姉がドムにやられそうなんですけど。どうするんですかね?
タリアはタンホイザーでAAを撃つことに。AAは後ろのエターナルに当てないためには動けない……いやエターナルと通信取れるんだからエターナルとともに回避できるんじゃないんですか?
タンホイザーが撃たれる、そのブリッジを、だがアカツキが防いだ。
……………これがやりたくて名無し男をアカツキに乗せたのかーーーっ!
画面の前で思わず「まーたーかーっ!」と叫んでしまった…。
アカツキの防御力は普通ではなく、タンホイザーを完璧に防ぎきる。いやそんな…ありえないって。無理だって。溶けるって。
防いだその弾みで、名無し男に記憶が甦る。それによると、前大戦で「不可能を可能に」し損ねて溶解したはずが、九死に一生を得てジブリールに助けられたものらしい。………はあ。
ついでに名無し男はタンホイザーを一発射抜く。角度的に無理があると思うんですけどねえ。
その上、フィンファンネルバリア…じゃなかったドラグーンでバリア作ってAAを防御ですか。はあ……アカツキって金かかってるだけあって便利な機体ですねえ。その装甲をムラサメにも施してやれよと。
名無し男にはほとほと呆れましたが、でも以下の言葉だけはちょっと心惹かれたかも。
「終わらせて帰ろう、マリュー」
前作では結局帰らなかったからね。帰らせてあげるのもいいかなと、少しだけ思った。
イザークとディアッカはアスランを発見。
ディアッカは最初から決めていたらしく、AAと一緒にステーションワンを落とすことに。イザークもそれを阻止するでもなく、あっさり加担。
……例えば議長がそれをプラントに向けている段階なら、彼らの行動は必然性を帯びただろう。また既にオーブに照準を向けているのでも、それはそれで納得できたと思う。
だが…このような描写では、ディアッカはただAAの手先で、イザークもそれを追認したとしか見えないではないか。
本当にそんな描き方で良かったんですか? 彼らに再び祖国を裏切らせることに何か積極的な意味が?
ステーションワンを守ることが「大量破壊兵器」を保持することだとして、それが問題であると行動するなら未だ分る。
少なくとも、状況を「自分の頭で考え」て出した結論であって欲しかった。これではただ勝ち馬の尻に乗っただけではないか。そうでないと言うのならそうでない描写があって然るべきだろう。
……ハア。やれやれ、だな。
携帯に縋るシンの所へ、レイがやって来る。
「少しは休めたか。俺たちもそろそろ出撃だぞ」
「ああ、大丈夫だ。状況、ミネルバは」
「ミネルバも奮戦したようだが、ステーションワンは墜された。今は、こちらへ向かっているAAらを追撃している。
…心配しなくても、ルナマリアは無事だ。もっと信じてやれ、彼女は強い」
…すみません、レイ。ルナマリア撃墜もやむを得ないと思ってるんじゃないかと冷や冷やしてました。そうじゃなかったのか。信頼していたんだな、ルナマリアを。
思っていた以上に、彼ら三人は「仲間」だったのかもしれない。
今頃、今頃になって何か暖かいものが去来する。彼らに幸あらんことを。
「奴らはこのまま、ダイダロスへ向かう主力隊と合流しレクイエムを破壊して、オーブのその力を世界中に見せつける気だ。そうなればまた、世界は割れる」
…ああAA連中が勝利するということは世界的に見ればそういうことなのだ。小さいが強い国オーブ、その軍事力が強大であると世界に示すことになれば、まつろわぬ国も出てこよう。それは世界の不安定を勿論呼ぶ。
オーブ国軍が、ひどく悪役に見えた。世界を破滅させるモノに。
「オーブは…」
「お前が救ってやるんだ、あの国を。……そういうことだ」
そういう責任の取り方も、あっていいのではないかと思う。祖国の行く末を案じるが故に、道を過たせぬために祖国を討つ、そういうやり方もあってもいいのではないかと。
メサイアにはネオ・ジェネシスなるものが装備されていた。…ネオという名前の付くモノは大体従来のモノより簡略化されていたりスケールが小さかったりくだらなかったりするようだ。ネオナチとかネオ・ロアノークとか。
今度のは、焼き尽くした範囲も非常に狭く、地球に向けても届きそうになく見えるところから、やはり簡略版と見るべきか。
デスティニーとレジェンドを出して、議長がにまりと笑う。
「さあ、今度こそ消えていただこう、ラクス・クライン」
漸く暗殺未遂について議長が犯行声明を出しましたよ。
お待ちしていました…まあ遅かったですがね。
それよりあなたには、他に述べていただきたい謎が山ほどできましたから、最終話はその謎解きもしていただきたいものです、議長。
インフィニットジャスティスはデスティニーと、ストライクフリーダムはレジェンドと戦闘態勢に。
そこへ「君の姿は僕に似ている」とEDが被って。
レイが大写しになって、ああ、流石にサブタイトルが「レイ」なだけはあるなと思っていたら、レイの声が。
「キラ・ヤマト……お前の存在だけは」
あ、と思ったら、さらに大写しな仮面とパイロットスーツをつけたラウが。
「許さない…っ!」
うわ……っ、キターーーーッ!
「許さない」だけラウの声になってましたよ確かに!
やった、隊長が、隊長が還って来たーーーーっ!
ですが、これはレイにラウが憑依しているというよりも、レイがラウとともに復讐を果たしたいと思っているという一つの描き方なのだろう。
「誰が悪かったんだ?」と問うレイにして、ラウが死んだことへの怒りは激しく持っていたと。
「もう一人の俺」という認識そのままなのかどうか、それは次回で分ることでしょうが、それはそれとして、ラウはキラに自分を殺させたことでキラをも憎しみの連鎖から逃れられないものにした、そのことを喜んでこそすれ怨んではいないのではないかと。
キラに止めて欲しかったと思っていたというのではなくて、所詮は君もそんな人間たちの一人だよと、笑って死んでいったのではないかと。
私たちは人が亡くなると墓を作り、葬式をし、弔う。それはあくまでも、死者のためではなく、自分自身のためだ。
「大切な人を殺された」と殺人者を糾弾し裁かれるべきだと思う、だがそれはあくまでも、大切な人を亡くして穴が空いた心を埋めるためだ。
殺人者を裁いても復讐しても、死者が帰ってくるはず等ないのだから。弔っても死者に届くことなどないのだから。
それはあくまでも、自己満足のためでしかないのだ。
もしかしたらその人はまだ生きていて、隣で笑ってくれたかも知れないと思う、その思いが、人に墓を作らせ、人を裁かせる。
…レイ。もういいんだよ。もういいんだ。
ラウはそんな憎しみに君が囚われることなんか、望んでやいないよ。
自由に、おなり。]]>
phase-49「俺たちは誰もが皆、この世界の欠陥の子だ」
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2005-09-26T19:45:41+09:00
2005-10-05T05:01:16+09:00
2005-09-26T19:43:46+09:00
gil-mendel
seed-destiny
ラウ!! そこで出てくるのか!
シン……君、いい奴だよ…やっぱ。クレジットが3番目に落ちても最終回予告で機体名呼ばれなくても、最終話あらすじに殆ど名前上がらなくても、やっぱいい奴だよ、君は。願わくば、生き延びてくれ。
名無し男………まーたーかぁーーーーっ!!! もういいよいい加減にしろよ。
イザーク…株下げてますよ株。メイリンなんか枠外。
…ていうかさ、種49話が半分くらい流れていた気がするんだが…気のせいか? 気のせいだよな?
第49話「レイ」。総集編でもなく題名になった人が死ぬ訳でもなく…ある意味安心した回ではあったか。
二晩置いて、漸くテンションが落ち着いてきました。これで落ち着いているのかと思われるとは思いますが、土曜夜はもっとひどかったのです、堪忍してください。
文字数が多すぎるようなので、後半と分けます。
アバンではシンとレイがミネルバを離れてメサイアの議長の下へ向かい、キラとアスランがミーティアを装備してレクイエムを落としに向かう。
シンとレイが機体ごと去っていく様を、タリアが、アーサーが、ルナマリアが見送る。突然こんな状況の中二人を呼び出すとはどういう了見かと、タリアならずとも不安に駆られずにはいられまい。
ミネルバに残されるMSはこれでインパルスだけとなる。
ラクスがレクイエムを落とそうとする、その理屈が何よりも笑える。
「私たちはこれよりその無用な大量破壊兵器の排除を開始します。
それは人が守らねばならないものでも、戦うために必要なものでもありません。
平和のために、その軍服を纏った誇りが未だその身にあるのなら、道を空けなさい」
大量破壊兵器だからと? 笑わせる。お前が鍛えていた剣は大量破壊兵器ではないと? 規模が違うから許されると?
巫山戯るな。
所詮、兵器は兵器だ。その殺傷する量をもって線引きするとすれば、では聞こう、一体何人殺せるならば「大量破壊兵器」と呼ぶのか?
そして聞こう、議長ではなくジブリールがその兵器を握った時に同じ理屈で滅ぼさなかったのは一体何故だ?
所詮君のいうことは己に都合の良い政治的喧伝以外の何ものでもあるまい。それは君の行動が一番よく示してくれているよ、ラクス・クライン…小人物よ。
軍と大量破壊兵器は密接に結びついている。軍人にそれを否定しろというのは無理なこと。あんた自身にもだがな。
所詮ラクスには、真面目に兵の心を組織化していこうという気はない。「ラクス様のために」という思考停止の言葉しか、彼女の旗下には必要ないものなのだ。
レクイエムを落としたいなら、それによって生まれる悲劇を説いてみよ。だが彼女にはできぬこと…戦争の絶対肯定を行なった彼女には。
愚かな、余りに愚かな。
…と思っていたら、ミーティアなる大量破壊兵器でザフト兵を殺戮……。
いやはっきりしてるよあんたって人は! 自分の力だけは綺麗な力、自分の大量破壊兵器だけは綺麗な兵器、そういうことだろう?
議長…「問題は数でも装備でもないんだ…問題は…」って、何を言おうとしていたんですか。やっぱり「速さ」?
AAらを「ロゴスの残党」として狩ることを決めたザフト軍を、キラ達は躊躇も見せずにざっぱざっぱと落としていく。ええと、大量破壊兵器って何ですかね? 実際に人がゴミのように殺されていっている、それは明らかに大量破壊兵器じゃないですか。
AA現るの報にアーサーは驚きタリアは唇を噛む。…最後まで驚いてばかりだったねアーサー。それが癒しだったけれど、せめて最終話で少し成長してもらえませんか。
一方イザークとディアッカはAAらの奮戦する様子を見ている。
イザークは重力なかったら怒髪天を衝いてそうにお怒り。ディアッカが何か腹に一物ありそうにそれを宥めている。
「でも連絡ないの当たり前だぜ? 俺たちはザフト軍なんだからな」
…ええと、「俺に連絡もなしに寝返りやがって!」とイザークがアスランを怒っているという理解でいいんでしょうか。ま、立場ないよな。
メサイア議長室に呼ばれたシンとレイだが、シンには覇気がない。レイから聞かされた話が頭をぐるぐる回っているのだろう。議長がそんな彼らに声をかける。
「確かに、アーモリーワンでの強奪に始まってユニウスセブンの落下、そして開戦からこんな事態にまでなってしまったのだ、誰だって戸惑うだろう。
だが、そんなやりきれないことばかり続いたこの戦うばかりの世界も、もうまもなく終わる」
「はい」
「いや、どうか終わらせてくれ、と言うべきかな。君たちの力で」
「はい」
答えているのは常にレイだ。…ああ、そうやって答えぬ者の傍らで代りに答えたことがあり、一方で傍らに立つ者の真っ直ぐな答えを答えられぬ者として聞いていたことがある。何だろう、レイの返事が胸に痛い。
こういう場に心揺れる者を単独では呼ばぬのも一つの手だ。より信頼でき、心揺れる者を指導している者と共に呼ぶ、そして規範を示させ心を固めさせる、そのようにしてきたではないか。
ラクスはエターナルから呼びかける。
「このようなもの、もう何処に向けてであれ、人は撃ってはならないのです」
願わくばその言葉、ジブリールがレクイエムを撃った時に聞きたかったね。
ラクスの声に躊躇したザフト兵をあっさりとインフィニットジャスティスが撃破していく…それは卑怯というものではないですかね?
尚も議長の言葉は続く。
「今、レクイエムのステーションワンがAAとエターナルに攻撃されている。私があれで、なおも反攻の兆しを見せた連合のアルザッヘル基地を撃ったので、それを口実に出てきたようだが、いや、全く困ったものだよ。
我々はもう、これ以上戦いたくないというのにね。これでは本当にいつになっても終わらない」
議長、本当に困ってますかあなた。読み違えて、アルザッヘルを討っておけばAAが意気込んでやってくる、それを叩けるとでも思っておいでなのでは? しかし相手が相手だ、議長の目論見は確実に失敗に終わるだろう。
だが議長、シンがレクイエムによるアルザッヘル攻撃を肯定するという前提があるようですが、どうでしょうかね?
議長の言葉に応えたのは、またもやレイだ。
「はい、でも仕方ありません。彼らは言葉を聞かないのですから。
今此処で万が一、彼らの前に我々が屈するようなことになれば、世界は再び混沌と闇の中へ逆戻りです。
嘆きながらも争い、戦い続ける歴史は終わらない、変わりません。
そうなれば人々が平和と幸福を求め続けるその裏で、世界はまたもかならずや新たなロゴスを生むでしょう。
誰が悪い訳でもない、それが今の人ですから。
俺はもう、絶対に世界をそんなものにはしたくありません。
漸く此処まで来たのです」
『言葉を聞かない』というフレーズは今まで幾度も調子を変えて繰り返された。多分この作品の主題の一つなのだろう。
『言葉だって聞いたろう!』(アスラン)、『私の言葉が聞こえないのか!』(カガリ)、『私の声は届いていただろう?』(議長)。
言葉が届くこと、言葉を聞くこと、それは世界を変えること。
だがそれは、遙か上から降ってくる言葉であればあるほど、その言葉を聞くことは『王化に帰する』意味合いが強くなる。
言葉は同じ地平で同じ視線の低さで発されてこそ、それに対する応答が為されうるのだ。
議長の発する言葉もAAの発する言葉も、どちらも高みから降る言葉であるが故に、互いに届かず、互いに聞かれることがない。
議長の言葉がより響くのは、高みから降りながら僅か上から導くような偽装が施されているからだ。
だが、シンにはそれでは全ては届かない。だから通訳者としてのレイが必要なのだ。己のすぐ隣で、自分の深淵を通して血肉に噛み砕いてくれるレイが。
にもかかわらずそれでも、いやそれだからというべきか、レイの願いは真っ直ぐで、そして恐らくは紛う方なく彼の本心だ。
レイの嘆きは深く、であるが故に己を捨ててでも新たな世界を望む。
自分を生み出した世界を破滅させるのでなく、変革することを望んだレイは、真っ直ぐすぎる。
「誰が悪い訳でもない、それが今の人ですから」と言い切れるレイは、個人を怨むことなどとうに通り越そうとしているのだろう。誰が悪いのかという問いを延々と積み重ね、個人がというよりは世界に問題があると辿り着くまでにはだが相当の時間を要したのではないかと思う。その過程は、暗く果てなく、苦しみに満ちたものだったろう。
「俺はもう、世界を絶対にそんなものにはしたくありません。漸く此処まで来たのです」
もう少し、あと少しで世界を変えられる。その切羽詰まった思いが、辛い。
その新しい世界に自分がいないと知って、なおかつ人は新たなもののために闘うことができるだろうか?
ふと、議長の「既にここまで来てしまったのだからね」(44話)を思い出す。
シンはレイの言葉を聞きながら、回想する。
失った妹の、ちぎれて落ちた腕を。
ユニウスセブンを落とした人を。
ロドニアラボで実験材料としての生を終えた子どもを。
その子どもの行き着く先である、息も絶え絶えなステラを。
……シンが繰り返してはならないと思う世界、それはとても、辛い。
「レイ…」
「デスティニープランは、絶対に実行されなければなりません」
「そうだな」
レイの強い願いに押されるシン、自分の願った世界がデスティニープランで実現されると信じるレイ、レイが正しく教導者の役割を務めていることに満足する議長。
…ああ駄目だ、彼らの上にはっきりと「悪役」と烙印が押されているようで、辛い。
キラはじめAA一行は現れたミネルバに驚く。…今更驚くまでもないと思うんですが。宙域にいることくらいご存じでしょう? ましてやザフトの危機ともなれば、現れ出でぬはずがない。そういう立ち位置に、議長が置いたのだから。
議長はシンへと畳みかける。
「君はどうかな、シン。やはり君も同じ思いか?」
「え……」
問われて、シンはレイを見る。自分を此処まで導いてきた者を。そのレイがシンを見ている、自分が託したものが伝わっているのかという眼で。
言葉に詰まるシン。そこに重なる、緊迫したミネルバ艦橋のタリアら、AA艦橋のマリューら、エターナル艦橋のラクスら、さらにイザークとディアッカ、そして、一人ミネルバに残されたルナマリア。
この息詰まる感覚が好きですよ、胸が圧迫される感じで。
「俺は…」
レイを見遣るシン、そのレイがシンを見ている。そして、レイの言葉を回想するシン。
「実際、俺にはもう余り未来はない。テロメアが短いんだ、生まれつき。
俺は…、クローンだからな。
キラヤマトという夢のたった一人をつくる資金のために俺たちは造られた。
恐らくは唯、できるという理由だけで。
だがその結果の俺は、…フッ、どうすればいいんだ?
父も母もない、俺は俺を造った奴の夢など知らない。
人より早く老化し、もうそう遠くなく死に至るこの身が、科学の進歩のすばらしい結果だとも思えない」
「レイ…」
「もう一人の俺はこの運命を呪い、全てを壊そうと戦って死んだ。
だが誰が悪い、誰が悪かったんだ?
俺たちは誰もが皆、この世界の欠陥の子だ。
だからもう、全てを終わらせて変える。
俺たちのような子どもがもう二度と生まれないように。
だからその未来は、お前が守れ」
レイの言葉にくるくる回るステラを、苦しむステラを、そしてロドニアラボで苦しむレイを重ねるシン。
…シンの中で、ステラとレイが重なっていく。
一方、レイは「もう一人の俺は」としてラウを思い浮かべる、メンデルで銃撃戦のあげく仮面を飛ばされたラウを、キラと戦って散る間際のラウの笑顔を。
レイの頭から、ラウが離れることはないのだろう。
さらに「誰が悪かったんだ?」と半ば自問自答するようなレイの言葉に、最初のコーディネイタージョージ・グレンとシーゲルとパトリック、そして羽鯨の化石の映像が重ねられる。
それは、コーディネイターという存在そのものが問題だったのではとレイが考え出しているということなのか? …判断しにくいな。まだ分らない。
そしてシンの精神世界のような映像へ。このアニメでは珍しいことだ。
は、と衝撃的に気付かされたようなシンの後ろに、パトリック・ザラがアスランを突き飛ばすところ、オーブが灼かれウズミが炎に身を投じ、カガリが泣きじゃくる、そしてマユの携帯を取ろうとしたシンが爆風に飛ばされるところ、ラウの最期の笑顔、幼いレイの頭を撫ぜるラウと頬を染めるレイが、順に流れていく。
そしてレイが微笑んで「その未来は、お前が守れ」と言ったところで、マユとステラ、そしてルナマリアが映った。シンの、守りたかったもの。
レイの声は常に穏やかで。
胸が潰れそうだ。
レイの言葉はいつもいつも胸を衝く。
それでもこれは、シンに対するレイの最後の切り札なのだろう。最後のカードを提示したのは、議長の指示ではなくレイの判断だろうけれども。
己が何者であるかを開示し、自分を生み出した世界を変えると語り、そして新たな世界を守れとシンに言う。…これが遺言かつ切り札でなくて何だろう。
シンにとってある意味残酷な枷だ。だがレイにとってはそれは紛れもなく、真摯な発露であるのだろう。己がいなくなった後の世界を託せる人間として、レイはシンを選んだのだと思う。
だがここで頭を切り換えて、レイの語った内容を検証しよう。
レイがシンに語った言葉をそのまま取れば、レイの現在年齢はキラよりも確実に上ということになるが…? すいません、一体お幾つですか? 確かに公式では年齢も伏せられてはいるが…少し変じゃないかと。
「人より早く老化しもうそう遠くなく死に至るこの身」という割に、ラウのような仮面を必要とするほどでもなく、ラウほどの苦しみでもないようだ。またラウより相当身長低く、あと数年で183cmに育つとは予測しがたい。本当に純粋なクローンなのか? 違う調整が施されているのでは? その影響で老化のスピードがラウに比しても速いのか? ラウと同じアルのクローンならあと10年くらいは寿命がありそうなものだが…? それともラウのクローンだと? とすればレイの語る内容に矛盾するように思えるが。
レイの言葉通りならラウと同時期に造られた実験体ということになるが、レイについてはコールドスリープされていたと考えるべきなのか? だとすれば「資金のために」発言の意味を考え直さねばなるまい。フラガ家は資金のために後々まで当初造ったクローン胚を材料にさせていたか。まあフラガ家の遺伝子は先読みには定評があり、欲しがる先はある程度あったろうが…。そうなるとアストレイの世界かな。
或いはラウの予備胚が(バックアップを造っておくのは実験上普通ではある)、何らかの理由で流出し、それが育てられたか…とすれば議長の関わる余地もある訳だが。とすれば初めから議長の手は血塗られているとは言えるかな。
そして、気になるのは「俺たち」と繰り返していることだ。ラウを「もう一人の俺」と言ってはいるが、まだ他に成功体がどこかに存在しているような口振りではある。「俺は、三人目だから」なんてこと、ないよな? しかもまたテロメア不全なんて、これ以上許さんぞ!
…この辺りは、次週を待ちたいと思う。次週で明かされなければ、もう好き放題補完しまくってやる。
ちなみに、レイの一人称が「俺」なのは、対シン用ですかね。
議長と二人なら「私」になるんでしょうか。さてさて。
レイの告白を回想して、シンは一度頭を振って目を瞑り、そして様々なものを振り捨ててはっきりと答える。
「はい、俺もレイと同じ思いです」
その声に、レイは眸を閉じてほっとした顔で僅かに微笑んだ。
これほど確信に満ちたシンの声を聞いたことがない。
ずっと迷ってばかりだったシンに、ここまで確かな声をさせたのは、ひとえにレイの導くところが大きかったと言えるだろう。
シンがダークヒーローだとは、思わない。人が人たるべくして望むことをシンは望んだに過ぎない。今にも命尽きようという、人間の欲望が生み出した存在をかつて救えず、今も救えはしないが同じ哀しみを二度と生まない世界を創り、守るという願いを託されてそれに自分を投企しようとするシンの、どこがダークヒーローなのだろう。
偶々、その世界像に過ちがあるだけのことで。
「守りたい世界があるんだ」、前作最終話でキラはそう言った。
シンにも「守りたい世界がある」のだ。同じことを繰り返さぬ、人が人を手段にせず、戦争など起らない、穏やかで優しくて暖かい世界を。
議長の描く世界像とは一致していないことにシンは気付いてはいないが、だがシンの願う世界を否定することは私にはできない。
その真っ直ぐなままでいておくれ、シン。できれば、最後まで。
…無理な願いなのだろうが。
レイが微笑んだ、その表情が忘れられない。
穏やかな、シンに後事を託せて本当に良かったという静かさが。
「遺児を託す」という、自分が死ぬ際に残していく子どもを託せる人が本当に信じられる人だという。
シンがそれに値すると、レイは漸く安心したのだ。……どうか、その願いが裏切られることのないように。せめて、あと僅かの間でも。]]>
phase-48「俺は…、クローンだからな」
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2005-09-18T11:52:57+09:00
2005-09-24T16:34:41+09:00
2005-09-18T11:50:12+09:00
gil-mendel
seed-destiny
「生きているということはそれだけで価値がある。明日があるということだからな」「どんな生命でも、生きられるのなら、生きたいだろう」
どうして今その言葉がこんなに重く降るのだろう。
そんな風に微笑まないでくれ。そんな風に言葉にしないでくれ。涙がとまらないじゃないか…。
第48話「新世界へ」。その新しい世界は、持たざる者の世界か。
………眠れなかった。言葉にするにはあまりに重く、彷徨いながら言葉を探す。
アバンは先週の復習から。……と思ったら、懐かしい人たちが帰ってきていたよ!
スティングが、アウルが、何よりステラが帰ってきた! もう出てこないだろうと思っていただけに、彼らの戦闘シーンがもう一度見られたことは嬉しかった。
と思っていたら、24話のロドニアラボでパニック症状を起こすレイが。…ああ、この人が結局全ての鍵だったのだと思われてならない。その映像に被る議長の言葉は、「…ロゴスの存在所以です」だった。レイもエクステンデッドも、いずれもが人類の欲望のせいで生まれたのだということか。
デスティニープランが起動する。多元ゲノムデータベースは恐らくメサイアのなかにあるのだろう。ということはこれを打ち砕く戦いにAAが出ることになるのか。
議長がデスティニープランの概要としてPRしたのは、やはり遺伝子データに基づき人間をあるべき役割にはめ込む、高度な管理社会。
ジブリールに叱責される議長がデスティニープランでジブリールを除き、その位置に着くアニメは…いや議長、これあなたが作ったんですよね? いかん、爆笑してしまった。無闇に可愛い。
そのアニメ内アニメで議長とジブリールがそれぞれ渡された緑と赤のカードに、そしてジブリールが連れ去られたことに意味がある。
その前のシーンで、集まる人々から採血し、そしてそれぞれが緑と黄色と赤のカードを受け取り、さらには人々がそのカードを持って各列ごとに別れ並んでいく。一見飛行機の搭乗手続きのように見えるが、これは人の人生を分ける搭乗口なのだ。
赤のカードを受け取るとどうなるのだろう。やはり危険因子として抹殺されるのだろうか。何せ、遺伝子レベルで証明された危険さなのだ、再教育して何が変わるというものでもないのだろうから。そういう点で、再教育という口実の元に長期間拘束したソ連よりも、クメール・ルージュに似たものを感じる。
カードを受け取っていた親子。親が黄色を、二人の子が緑と赤を受け取っていた。あの赤いカードをもらった幼い子は、どうなるのだろう。
ずらりと並んだ列には、黄色と緑しか映っていなかった。とすれば。
レイと自室でデスティニープラン発表を見ていたシンはただ唖然とする。その唖然とすることを見越していたのだろう、レイがシンを強い言葉で抑えに掛かっていた。
「分かっている。だがだからと言って議長は諦めるような方ではない。 それはお前も知っているだろう。今は俺たちもいる。
議長の目指す、誰もが幸福に生きられる世界、そしてもう二度と戦争など起きない世界、それを創り上げ守っていくのが俺たちの仕事だ」
確かにね、議長は不屈ですから。最近話数が少ないので色々焦り気味ですが、基本は常に不屈ですから。
「そのための力だろう、デスティニーは。そして、そのパイロットに選ばれたのはお前なんだ」
人類の運命を託すべく創られた機体。それは多分、レイの願いをも強く乗せた機体なのだろう。
だがシンはそんなこと余り考えていないから、「はあ?」とか言ってしまう。その辺り、シンらしいよ。
だがレイは急いでいる。今しか言う時はないとでも言わぬ気に。
「議長がお前を選んだのは、お前が誰よりも強く、誰よりもその世界を望んだ者だからだ」
「俺?」
戸惑っているシンの向こうの携帯が映し出される。シンが本当に望んだ世界、優しくて暖かい世界、それを実現させるためなのだと。
そこにルナマリアがやってくる。男の子二人の部屋なので、インターフォンでシンに呼び出しをかけるが、それに何故か勝手にレイが出て追い返してしまう。………気持ちは分かるがね、レイ。ドス効き過ぎですよ。
シンも後ろで退いているじゃないですか。
「レイ、何する…っ」
抗議しようとしたシンの言葉をまるっきり無視してレイが言葉を畳みかける。
「だがお前の言うとおり、本当に大変なのはこれからだ。いつの時代でも変化は必ず反発を生む。それによって不利益を被る者、明確な理由はなくともただ不安から異を唱える者が必ず現れる。
議長の仰るとおり、無知な我々には明日を知る術などないからな。
だが人はもう本当に変わらなければならないんだ。
でなければ、救われない!」
どれだけの犠牲を払えば、人は変わるのだろう。どれだけの人を踏み台にすれば、人は変わるのだろう。人が変わらないなら、犠牲にされ踏み台にされた者に救いはあるのだろうか。
シンがその言葉に驚く、それにやや遅れてレイが一度何かに驚いたように目を見開いて閉じる。レイが驚いたのは、シンの反応にではなく、己の身体の変化に対してなのだろう。…ついに、来たかと。
「そりゃあ俺だって、それは分かるけど、でも!」
受け入れようとしないシンに、更にレイは言葉を重ねる。
「あの、エクステンデッドの少女や、あんなこと…二度と繰り返さないためにも、これは、やり遂げなければならないんだ!」
ミネルバの医務室で苦しむステラ、そしてデュランダルから薬を受け取ったラウ、キラに殺されたラウの最期の笑みが回想される。ああ多分、この回想の主体はシンではなくレイなのだと思う。ラウのような悲劇を繰り返してはならない、だから、そのための捨て石になるのだという、決意。…ステラのこと、本心からだったとは。確かにそれは君の意志だった、レイ。
レイの声が震える。やや上を向いて回想していた目が見開かれ、見ればレイの握りしめられた左手も震えていた。
「強くなれ、シン。お前が守るんだ。議長と、その新しい世界を…!」
レイの声が震えているのが本当に辛い。そうまで痛みと恐怖に耐えてでも、今言っておかねばならないことがあるのだと。遺言に似た、自分が居ない未来を確かに今シンに託さなければならないと、覚悟した言葉。
おぼつかない足取りでレイが椅子から立ち上がり、ベッドに顔を覆って座り込む。
「あ、レイ!」
「それが、この混沌から人類を救う、最後の道だ…っ」
「どうしたんだ、レイ?」
シンの声は本当に素直で。レイの言葉よりもレイの体調を気遣っている。常にシンはそういう子だった。弱い者、苦しむ者の近くに素直にいて、気遣うことのできる子だった。
「何でもない、構うな!」
激しく撥ねつけたレイはひどく冷や汗をかいて、苦しそうで。いきなり棚を開いてラウの持っていたのと同じ薬を取り、水もなしに飲む。
……ああ本当に来てしまったのだと、いたたまれない思いに駆られる。
前作のアンチテーゼだというのなら、せめて、テロメア問題の解決されたクローンであって欲しかった。あんまりだと思う。
どうして痛みに喘ぐ者が救われない話なのだろう。どうして虐げられた者が常に苦しみながら救いの光もない中で進まなくてはならないのだろう。どうして何もかもに恵まれた者だけが絶対正義として描かれるのだろう。
救いは、ないと…?
…ああ、ラウが答えてくれるだろう。
「救いとは何だ? 望むものが全て、願ったことが全て叶うことか? こんなはずではなかったと、だから時よ戻れと祈りが届くことか?」
ラウ、せめて願ったことの僅かだけでも叶ってくれと願うことは、いけないことなのでしょうか。
救いなどあり得ないとラウが言いたいのは分かっている、だがなればこそ、救いが欲しくて仕方がない。何かを救いの代りにしなければやっていられない。
慌てに慌てたアーサーが動転して、タリアに叱られている。
「どうもこうもないでしょ? 私にだって分からないわ。戦争は政治の一部よ、そこから全体などなかなか見えるものではないわ。…艦内の様子、気をつけておいてね。みんな、あなたと同じ気持ちでしょうから」
アーサー単純すぎるよアーサー。「皆があなたと同じ気持ち」って、それは副長として間違っても誉められてはいないぞ。
しかしタリアさん。一部から全体を、考えることはできますよ。所詮手段に過ぎなくてもね。
今回という今回は、カガリやキラ、ラクスを見るたびに情けない思いに駆られてなりません。
「だがもうこれ以上、世界を彼の思い通りになどさせる訳にはいかない!」
カガリの主張としての決意さえ、薄っぺらに聞こえてならない。
オーブの理想が全てを守る、そんな理想論など虚しいだけだ。絶対悪と定義した存在を倒す、そうしたいのならガンダムと名の付かぬ世界でやってくれればいい。自らの存在の痛みに基づかない言葉は虚しいだけだ。
AAでもデスティニープランについて検討中。まあ彼らの結論など聞くまでもないが。
エターナルと通信しながら議論…って、虎が名無し男の存在に対してスルーしてるんですが…これはそれより大分前にお披露目ってことでいいんですかね。虎は複雑だろうなあ。昔の名前で呼んでみたりしたんでしょうか。
その中で映るシンとレイ…。枕元でレイの薬を手に取り見詰めるシン。レイが呻いたので急いで薬を棚に戻す。
意識を失ったレイの顔に、キラの言葉が被る…「戦うしかない、か」。
戦いを終わりにしたいというキラにラクスが言う。
「でも私たちは、今は戦うしかありません。
夢を見る、未来を望む、それは全ての命に与えられた、生きていくための力です。
何を得ようと夢と未来を封じられてしまったら、私たちは既に滅びた者として唯存在することしかできません。
全ての命は未来を得るために戦うものです。戦ってよいものです。
だから私たちは戦わねばなりません、今に生きる命として。
私たちを滅ぼそうとするもの、議長の示す、死の世界と」
どうして、「夢を見る、未来を望む、それは全ての命に与えられた、生きていくための力です」に、タリアとその子、そして目を覚ましたレイと枕元でそれを心配そうに見守るシンの映像を被せるのだろう。
タリアにとって子どもは確かに夢であり未来だった、それはまだ許せる。
だけどレイは。レイに何が与えられたというのだろう。夢を見、未来を望んでいなければ生きられない存在に対して、何を言えるというのだろう。その夢の中にも未来の中にも確実に自分はいない、だがその夢を未来を実現させるためにあらゆることを尽くして怯まない、その存在に対して、夢を見ることができるからいいと、未来を望むことができるからいいとでも言いたいのか。
巫山戯ている。
何もかもに恵まれた存在にそんなことを言われる筋合いはない。
どうしてこの物語は、持てる者が常に幸せで、持てない者が常に苦しむのだろう。
レイにとってラクスの言葉が救いにでもなると? ご冗談を。
未来を得るために戦う、だから他者の未来を消し去ることも構わない。
それこそが万人の万人に対する闘争だ。
ラクスは、AAは、永遠に血の道を彷徨えばいい。そんな世界に、私は生きない。
殺戮と戦争の肯定、これが前作に対するアンチテーゼだとでも主張するのなら、笑い飛ばしてやろう。
戦って戦って死ぬの、でないと許さない!
戦いを生命そのものとして肯定するなら、ラクスは死ぬべきだろう。自らの主張に対して責任を取ってもらおうではないか。
絶対不沈の艦に乗る絶対不死の神が戦争を肯定する、その矛盾。
戦争の絶対肯定とは、その中で傷つくありとあらゆる生命に対しての尊厳の否定だ。大量破壊兵器で死ぬか他の兵器で死ぬかは大きな問題ではない。
もしかして、ラクスは笑い飛ばされるために今作にいるのだろうか。最近、そうとしか思えなくなってきた。…ああ、胃が痛い。
議長はアルザッヘル基地へ向けて、直しておいたレクイエムを撃つことを指示。
今までの議長ならコープランド大西洋連邦大統領とコンタクトを取ってその様子を全世界に中継くらいしてくれそうなのだが、よく言えばレクイエムの試射を兼ねて、悪く言えばラクスを絶対正義にするために、あっさりとレクイエムを撃つ。
いや本当に不思議です。アルザッヘル基地の連中に少しプラントを攻撃させてから叩き潰す方がまだ名目も立つというのに。議長らしくありませんな。
シンとレイはまだ自室にいた。
漸く椅子に座れるほどに快復したレイがシンを見る。困って視線を逸らすシンを見て、レイが少し穏やかな顔をしてから背を向ける。
「先刻のことなら何でもない。驚かせて悪かった。……持病のようなものだ。気にしなくていい」
「いや、あの、俺…」
無理だってレイ。気にするから。シンは人の苦しみを見過ごすことなんかできる子じゃないから。レイの語った内容なんかより、レイの苦しみの方に目が向いて仕方がない子だから。何より優しい子だから、本来的にはとても。
「そんなことより、その前に俺が言ったこと、忘れるな。この先何が起ころうと、誰が何を言おうと、議長を信じろ。世界は変わるんだ…俺たちが変える」
レイ、眼がうるうるしてるよ……。この先何が起ろうと、って、それはまるでそこに自分がもう居ないこと前提みたいじゃないか…っ! 遺言なんて、いやだよレイ…。
さらに回想。暗い部屋で蹲る小さなレイ、そこにやってきたラウ、ラウに手を引かれてデュランダルに初めて会ったこと、10歳くらいのレイがやや戸惑い勝ちにデュランダルに頭を撫ぜられている光景…。これを見る限り、ラウはレイを研究所から連れ出した後、ある時期からはデュランダルに預けて養育させたと考えていいのだろうか。レイ視点の回想だからなのか、出てくる議長はいずれも優しく、裏などないように見受けられる。
「だがそんな時には、混乱の中、これまでとは違う決断をしなければならないこともあるだろう。訳が分からず、逃げたくなる時もあるだろう。だが、議長を信じていれば大丈夫だ」
レイ自身がそうやって、あらゆるものを乗り越えてきたのだろう。議長を信じることで、自身の否定からも、ラウの否定からも救われてきたのだろう。だから、シンにもそうしろと託すのだ。
「レイ…」
シンにはレイの背景などこの時点で見えてはいない。だから「議長を信じろ」と切々と説くレイに、どんなことがあったのかと思いながら問う。
そのシンに、レイは、静かに微笑んで見せた。とても静かに。
「正しいのは、彼なんだからな」
「うん、まあ…。
けど、何でそんなこと言うんだよ、いきなり。何か、それじゃドラマの死んでく親父みたいだぞ。やめろよ」
シンの言い出したことはレイのツボを衝いていて、レイは小さく苦笑せずにはいられなかったようだ。シンは人の死には敏感だ、だから今更隠しても無意味だと感じたのだろうか。それとも、あれほどステラに拘ったシンだから、信頼し、どこかでその心を議長に結びつける枷にできればと思ったのだろうか。少し苦笑して、レイは真面目な顔で切り出した。
「実際、俺にはもう、あまり未来はない。…テロメアが短いんだ。生まれつき…。俺は…、クローンだからな」
最後にレイは、微笑んでそう言った。悟りきったような、穏やかな顔で。
………どうして、どうしてそんなことを笑顔で言うんだよ! どれだけの苦しみを経てどれだけ人を信じたら、そんなこと微笑んで言えるようになるんだよ!
「生きていることはそれだけで価値がある。明日があるということだからな」
「どんな生命でも、生きられるのなら、生きたいだろう」
今になってぐさりとくる台詞がレイには多かった。
レイが生きることを全身で肯定している人であるが故に、レイの微笑みは、余りに辛い。
生きていたいのは、レイ自身のはずなのに。
余りに短く区切られた命を、それでも全力で為すべきことのために使い切ろうとする、レイ。生きることに絶望していただろうレイだからこそ、自分やラウのような存在がもう二度と現れないようにと世界を変革することのために己を投じることができたのだと思う。
確かに、議長に会えていなかったら、こんな風に笑うことはできなかっただろう。自分の確実にいない未来のために全力で走ることなどできはしなかっただろう。人を怖いくらいに信じたりはしなかっただろう。
だけど。
だけど。
あんまりだ。
レクイエムはアルザッヘルを焼き尽くす。
「従わねば死、どちらにしてもこのままでは世界は終わりです」とラクスはエターナルと合流してザフトと戦うことに。まあ一応オーブ軍なので、オーブ本国に連絡はしていくようだが、どうもAAが好き放題動いているのをオーブが追認するという感じで好きではない。軍って…それでいいんでしょうか?
一方、議長はシンとレイを機体ごとメサイアに寄越すようにと指示。シン説得のためとメサイア防衛のためなのだろうが……ミネルバが危ない、そんな気がする。
ルナマリアはシンを漸く呼び出して、話をしようとする。彼女はレイの態度にひどくお怒りの様子だ。…そうだな、まあレイは確実に君を排除しに掛かっていますから。
レイには迷いがない。シンを議長の確実なナイトにするためなら、心が痛んだとしても、あらゆるものを切り捨てる覚悟だ。何故なら、レイにはもう時間がないから。自分が居なくなった後も、議長とその世界を自分に代って守ってくれる存在が、どうしても絶対に必要だから。
…何故だろう、眼から塩水しかでない。
レクイエムが使われたことを知り、ルナマリアは自分が折角壊したのにと驚く。
だがそんなルナマリアはまるきり眼中にないが如く、レイはシンに宣言する。
「言ったとおりだ、シン。たとえ良いことでも、スムーズには行かない。
次は奴らが来るぞ、アークエンジェルが」
………来なくていいから。不沈艦など来なくていいから。
宇宙での戦闘を、当初ひどく楽しみにしていた。だが今は、もう戦闘など要らないから、どうか生きて欲しいと願ってしまう。]]>
phase-47「ラクス・クラインって、本当は何だったんだろう?」
http://mendel.exblog.jp/2684378/
2005-09-11T23:46:27+09:00
2005-09-14T05:45:26+09:00
2005-09-11T23:43:23+09:00
gil-mendel
seed-destiny
シン……本日の台詞、「議長…」のみって………頑張れシン。あと3話、何とか頑張ってくれ。
議長…明らかに時期尚早、何をそんなに焦っておいでになるのですか? まだ地にはオーブが残っているのに、宇宙にはAAとエターナルがいるのに、ザフト内部は旧クライン派に蝕まれて崩壊寸前なのに、何故今?
ラクス。責任を感じてくれていますか、ミーアの死に対する。もし少しでも己を問うなら、己が為し得なかったことを問うてくれ。ミーアを死なせたのは己だと、分かってくれ。
アスラン。…いつまで君は逃げるのだろう。
第47話「ミーア」。………本気でこの時期に半総集編とはいい度胸だ。
まさか49話まで半総集編だったり……しないよな? 幾ら何でも最終回直前でそれは………ないといえないのがこのアニメの怖いところだ。あと8話くらい残っていたらそれもありだろうが……風呂敷、畳めるんですかね。
今回は日曜になってから見たのでかなりに遅刻。更に半分総集編だったのも手伝い、比較的駆け足気味の感想です(当社比)。
選挙速報見ながらてけてけ感想を打っているのですが…頼むから20時ジャストで当確出すのは止めてくれ。まだ票開いてませんから。投票所に投票人が残ってたら投票箱閉鎖すら終わってませんから。
瀕死の人をAAに連れて行ったらAA補正が効いて生き返る、そう思ったのかどうか知りませんが医者にではなくAAにミーアを連れ帰った彼ら。
しかしミーアは既に事切れていたのか、ストレッチャーではなくアスランが抱きかかえてクルーが整列する中を連れて行く。…それって、ミーアの生に対して早々に諦めたってことですか。目の前で本当に人が死んだことのない人が脚本書いているんじゃないかと思えて仕方がない。人が目の前で自分のせいで命を失うことがどれだけ悔しいことか分かってますか。
死にそうな人に色々喋らせるなんて命が大切ならしない、とにかく医療をと考えるのが普通の人なのだが、アスランにもラクスにもキラにもメイリンにも名無し男にもそんな常識はなかったようだ。
「俺はそんなに諦めが良くない」って嘘ですかアスラン。それとも実はミーアの死を望んでいた人物があの5人の中に? …誰とは言わぬが。
整列しているクルーの中に妙な違和感…と思ったらドム3人組がザフト軍服着て混ざっていた。しかもヒルダ姐さん赤服なんだが……その服でオーブ軍艦たるAAにいるのはやめてもらえませんかね。怒り倍増しますから。
駄目だ、本気でザフトは崩壊しているよ。
で、アスランはミーアを軽々と抱いて歩いていくんだが…本当に死体ならそんなに軽くないし、冷たくて、足も首も手もあらぬ方向に曲がるのだ。ミーアの脚の角度から見て、まだ筋力が残っているように見える。この時点でミーアは未だ完全には息を引き取っていなかったのではないか。
医療を施してなお駄目なら仕方ない、なのに彼らは余りに諦めが良すぎる。
抱き上げた角度的に、進行方向向かって左の列の人にはミーアのパンツが丸見えなのではないかと思うが…死者だと思うならせめて辱めないでくれ。
ミーアは冷たい部屋に横たえられる。寂しい部屋だ。裸電球がぽつんと照らす、寂しい部屋。
名前以外何も知らないからって持ち物検査ですかそうですか。日記はなあ…公開用じゃないんだから放って置いてやってくれよ。逆の立場なら嫌でしょうが。ディスク開くまでは何か分からなかったとしても、日記だと分かった瞬間に閉じろよ。明らかに覗き趣味じゃないか。
ミーア日記は賛否両論あると思う。
残り3話となった今ミーアにこれだけの半総集編を割く意味が今ひとつ分からないが…あり得るとすればAAが議長を倒す動機付けの一つとして利用されるという点か。巫山戯るにも程があるけどな。
ステラの死にもそれだけの重さを持たせてやって欲しかったな。スティングの、アウルの、トダカの、ハイネの、ユウナの、馬場の、数え切れない沢山の死に。
日記を見る限り、ミーアは明るくて一生懸命で、ややピントはずれていたけれども平和のためにとひたむきだった。
ラクスがいないプラントで、整形までして身代わりを務め、自分の言葉ではないけれども自分もそれに同意できるからと、議長の下での平和を語り、世界がそれに靡かぬことを苛立たしく思い、平和のための戦争に疑問を持たず、ただ頑張ってきた健気なミーア。
そうだね、確かに君の唇を通して出た言葉が世界を動かしてきた。それは確かに君がしたことだ。君を利用するどんな力があろうとも。
「今の私の言葉はラクス・クラインの言葉。本当にこれで世界が変わるなら…どうか変わって! みんなどうか私の声を聞いて!」
ああ、まるで巫女のようだ。その身に神が宿ったと信じて、必死に舞い叫ぶ巫女。
ラクスがミーアの映像に介入してきた辺りのミーアの言葉が痛い。
「ラクス・クラインって…ラクス・クラインって、本当は何だったんだろう?
誰のことだった? あたし?」
「ラクス・クライン」とは一つの象徴、偶像だったのかもしれないと思う。
実際のラクスがどうあろうとも、受け手にとってはラクス・クラインはこのような者でこうあるべき、という像ができてしまう。期待が大きければ大きいほど。
その代行を務めたミーアには、過剰な負担が掛かったであろうことは想像に難くない。まして他人になりきるという「嘘」の上では、やりがいがあるといってもしんどいはずだ。
世界のためにと信じてラクス・クラインという一つの虚構を演じてきたところに、「私が本物」と今更ながらにしゃしゃり出たもう一人のラクスを、ミーアが「あたしがラクスだわ!」と否定したくなったところで、責められるものでもない。
「あたしがやった! だからあたしは、あたしが!」
……うん。そうだね。
忘れないよ、ミーア。ラクスが言う「忘れない」とは全く違った意味で、忘れない。
やりきれなさに席を立ったアスランをキラが追う。もうこの二人に関しては色々諦めました。アスランのぐるぐる状態には何だかんだ言ってキラが必要らしいです。ああもう好きにしてください。我関知せず。
「俺が最初に認めなきゃ良かったんだ…こんなことは駄目だと」
「うん…でもやっぱり、すぐにそんな風には言えないよ。後になんないと、分かんないことも多くて」
まあね。アスランには傷を舐めてくれる人がいていいね。
「僕もラクスも、狙われたりしなきゃデュランダル議長のこと信じてたと思うんだよね。戦わない方がいいって言った人だもん」
……あちゃ。議長の計画破綻はラクス暗殺を立案したことそのものにあり、か。まあミーアを「私のラクス」として使ったりしなければラクスを暗殺しようなどということにはならなかったはずだから、要するに下手なカリスマが存在していたことそのものが議長の計画を破綻させたということですかね。
それとも、特に議長に疑いを抱いていなかったラクスやキラを初めから取り込んでおけば良かったか。…いやあんな危険因子、取り込んだ瞬間からいつ牙を剥くか心配しなきゃいけないだろうから、それは無理か。
まあ藪をつついて蛇を出した、議長の失策はそこに尽きると。
ちなみに、「そんな世界は傲慢だよ」とキラが言う、そこに被る映像がロドニアラボ、叫ぶシン、そしてアスラン脱出時にやたら銃を撃ちまくったレイなのは、それはアスランが傲慢だと思うものってことですかね?
彼らはいずれも結果でしかないというのにね。傲慢だという言葉にそれを思い浮かべる君が傲慢だと思うよ、アスラン。
ラクスが涙を流す。
何故だろう、それが最も傲慢だと思えてならない。
己がプラントで為し得なかったことの結果としてミーアがラクス・クラインという商標を付けて世に出た。己が逃げたことの代償をミーアに支払わせた。その女が何を泣くというのだろう。
傲慢な涙だ。あらゆるものに恵まれた者が憐れんで零す涙など、ミーアに要らない。
一緒に泣ける者がいる者の涙など、ミーアに要らない。
そして、本当に悲しい時、人は涙すら出ない。それだけの哀しみと自責を味わった者にしか、分からない。
少しでもラクスに自責の念があったなら、涙など零れない。その死に自分が加担しているという自覚があれば、喉から出るのは無音の叫びだけだ。
ラクスの「忘れない」は、明らかに議長にのみミーアの死の責任を負わせるものでしかない。自分を問わない「忘れない」の虚しさに、怒りを禁じ得ない。
ミーアを死衣裳に着替えさせ、棺に収めて出棺する。
…ああどうか、その眠りが静かなものであるように。せめてその死は誰かに利用されることのないように。
議長がついに、世に問う。AAもターミナルもオーブも健在である今、議長としては珍しく賭に出たと言うべきだろうか。
議長の言葉を起こしてみよう。
「今私の中に、みなさんと同様の哀しみと、そして怒りが渦巻いています
何故こんなことになってしまったのか。
考えても既に意味のないことと知りながら、私の心もまたそれを探して彷徨います。
私たちはつい先年にも大きな戦争を経験しました。
そしてそのときにも誓ったはずでした、こんなことはもう二度と繰り返さないと。
にもかかわらずユニウスセブンは落ち、努力も虚しくまたも戦端は開かれ、戦火は否応なく拡大して、私たちはまたも同じ哀しみと苦しみを得ることとなってしまいました。
本当にこれはどういうことなのでしょうか。
愚かともいえるこの悲劇の繰り返しは、一つには、先にも申し上げたとおり、間違いなくロゴスの存在ゆえんです。
敵を作り上げ、恐怖を煽り戦わせて、それを食い物としてきた者たち、長い歴史の裏側にはびこる彼ら、死の商人達です。
だが我々はようやくそれを滅ぼすことができました。
だからこそ、今敢えて私は申し上げたい。
我々は今度こそ、もう一つの最大の敵と戦って行かねばならないと。
そして我々は、それにも打ち克ち解放されなければならないのです。
皆さんにも、既におわかりのことでしょう、有史以来人類の歴史から戦いのなくならぬ訳、常に存在する最大の敵、
それはいつになっても克服できない我ら自身の無知と欲望だということを。
地を離れて空を駈け、その肉体と能力の様々な秘密までをも手に入れた今でも、人は未だに人を分からず、自分を知らず、明日が見えない、その不安。
同等に、いやより多くより豊かに、飽くなき欲望に限りなく伸ばされる手、それが今の私たちです。
争いの種、問題は全てそこにある。
だがそれももう、終わりにする時が来ました。
終わりにできる時が。
我々は最早その全てを克服する方法を得たのです。
全ての答えは皆が自身の中に既に持っている、
それによって人を知り、自分を知り、明日を知る。
これこそが繰り返される悲劇を止める、唯一の方法です。
私は人類存亡を賭けた、最後の防衛策として、デスティニープランの導入実行を今ここに宣言いたします!」
議長、ここまで着々と策を講じてきたあなたが、どうしてこんな賭に出るのか今ひとつ分からない。進めてきた策にいくつかの綻びがある、それはAAとかラクスとかオーブとか旧クライン派とか、軽く見ると酷いしっぺ返しを喰らう類のものだ。何故に議長がかくも急いでいるのか。一気呵成にいけると読んでいるのか、それとも他に急ぐ理由があるとでも言うのか。
敵とは何か、それはお前自身の無知と欲望だと言われてはいそうですかと素直に受け入れる者などいないだろう。
ラクスの言葉を借りれば、まだ「戦う者は悪くない、戦わない者も悪くない」と言ってもらえた方が、人は自分を問わずに済む。敵は己の外、己とは違う者なのだと言われる方が戦いやすい。さてどうしますかね、ラクス。議長は「戦う者も戦わない者も悪い」と言ってしまった訳ですが。
デスティニープランに賛成か反対かと問われれば、個人としては反対だ。
どれほど遺伝子の解析が進んだとしても、人は人と出会って成長していくものだから、どんな人に出会うかは決して遺伝子情報には書かれていないから、全てなど読み切れるはずもない。能力には確かに遺伝上ある程度限界はあるだろうし、事前にこういう方面に向くと分かっていれば才能が見出されずに花開かぬということもなかろうが、しかし人は努力によっても変わるものだ。未来は見えない、だから進もうという勇気が出るのだ。
人は揺らぐ、その揺らぎが人類だ。
だが、コーディネイターの存在そのものがデスティニープランの一環であるようなものではある。遺伝情報を書き換えてより能力を持たせることは、既にコーディネイターが行なっていることではないか。遺伝子で全てが決まるとなれば、ナチュラルの中からも子どもはコーディネイトしたい者が多く出てくるだろう。デスティニープランとは実質全人類コーディネイター化計画と言えるだろうか?
そう思う一方で、実はコーディネイターとナチュラルはそんなに違わないのではないかと思ったりもする。副長アーサーの驚きぶりとか赤服ルナマリアの射撃下手とかプラント市民の煽動されやすさとか見ていると、コーディネイトされたって何を?と尋ねてみたくもなるというものだ。
人の愚かさも人の欲も、コーディネイトしてなくせるものでもあるまい。遺伝子で何とかなると思う愚かさも、遺伝子で何とかしたいと思う欲も、なくせる訳ではないのだから。
それでも、議長がそういう世界を渇望するに至った経緯を分からぬ訳ではない。万人の万人に対する闘争を止めたいと思う、その思い自身は共感するものがある。その手段と過程は真っ黒ではあるけれども、ただ手をつかねているだけの者やヴィジョンがない者には、行動すら起こし得ないではないか。
あなたはこの混沌の世界をどうするのかと問われて、戦争のない世界を導くための一つの答えを見出し、そのためにあらゆる策を講じあらゆる手を打って理想を実現させようとする、その思いには揺さぶられる。
確かに議長は夢想家だ、だがあらゆる手を打っていくその強かさは唯の夢想家ではない。
戦争のない世界、それを構築するためなら己の手など幾度でも黒く染めて怯まない。その黒さに、心惹かれる。
勿論、目的は手段を正当化しない。だが、黒さを引き受ける覚悟のある手に、惹かれる。
議長の宣言を聞くタリアが思わず呟く、「ギルバート…」と。
そこから生み出される世界を想定することが、タリアには容易いのかもしれない。議長をよく知る身であれば。
タリアに物語上どんな役割が用意されるのか知らないが、どうかザフトから離れる展開ではありませんように。己の立場から逃亡するばかりの人間ばかりでないことを、示してくれ給え。
一方、私室にいるシンとレイ。彼らにしては珍しく部屋が明るく、何故かレイが椅子に座ってその斜め後ろにシンが立っている。彼らの力関係には正しく則っているが、少し違和感を覚える。多分先に演説を見始めたレイの所にシンが寄ってきたのだろう。
シンにはやはり議長の言葉はすぐに受け入れがたく、「議長…」と驚く。いや今日のシンの台詞ってこれだけですか。最終回直前とは思えないほどないがしろ状態なんですが。
レイはシンを上手くコントロールするためにルナマリアから引き離して自室で演説を見ているのだろう。普段なら他のクルーも集まる部屋である程度皆の反応を見ながら議長演説を見ているのに、今回はシンをどうするかに絞ったか。余裕がないレイ、ということか。…時間も、ないか。
ルナマリアは他のクルーがいる部屋にきっとシンがいる者と思って姿を現したが、シンはいなかった。この先のシンとの関係にやや不安が残る。
次回…ああ、議長が壊れていく様を、それでも見ておきたいと思う。]]>
私は結果だよ、だから知る!
http://mendel.exblog.jp/2674193/
2005-09-10T11:21:50+09:00
2005-09-10T11:36:57+09:00
2005-09-10T11:20:00+09:00
gil-mendel
deliramentum
特殊設定森田繁氏の解説、来ていましたね。
やっぱり議長は第1話からやってくれていましたよ! アーモリーワンの強奪からずっと議長の掌の上だった、もうやったねとしか言いようがありません。
真っ黒議長至上主義者としては、嬉しくて嬉しくて仕方がない。
このまま議長の掌の上の世界を…と願ったりもしますが、やはり物語として大団円で終わらせるためには議長が牙を剥き謀が露呈され尽くして討たれねばならないのでしょう。
議長の掌の上を堪能させてくれてありがとう。もうそれでいいです。
本当はもっと解いてほしいものがあった、ミネルバにもっと描写が欲しかった、無駄な尺を使わずに掘り下げるべき関係がもっとあった、描写さえ省かれる軽い死とそうでない不死の生の間の重さの違いを埋めて欲しかった、語られるべき物語が幾つもあった、旧作キャラに都合の良すぎる展開がありすぎた、そうつくづつ思いはしますけれども。
でもせめて、ラスボス議長をとはいいませんからレイくらいは幸せにしてやってくれませんかね? ああ、でもレイにとってのBAD ENDは大切な人のこれ以上の喪失なのでしたね…。
少なくともシンくらいには幸せな結末を願いたいと思います。仮にも主人公なのですから。
しかし、議長の思いがラウとかくも重なっているとは。
欲望=悪、欲望が戦争を起こす、だから欲望の権化であるロゴスを叩く。だから人が欲望を生み出さぬよう、デスティニープランを実施する。
それは欲望の果てに自分を生み出した世界を許し難く思い、その欲望の果てに人類が世界を滅ぼすのならそれをも構わぬとして後押ししようとしたラウと、議長の思考はひたすらに近い。
欲望が人をして互いの身を喰い合わせ、戦争を生み出す、それは事実の確かに一つの側面ではある。戦争を欲望だと言い切るにはそんなに世界は単純ではないが、しかしそういう側面は確かにあり、それは大きい。
何故戦争はなくならないのか、それは人がよりよく生きたいと願う欲望のためだと答えるとするならば、結局万民の万民に対する闘争は根絶しがたいという結論をこの物語は出そうとするのだろうか? あるいは、欲望が希望という名を借りてあるならば、希望が自由と正義という双頭の仮面を被るならば、人が人に対する抑圧を行なうことは許されると?
いずれにせよ、あと数話。
行く末を、見守りたく思っています。議長の、シンの、レイの、タリアの、ルナマリアの、アスランの。]]>
phase-46「名が欲しいのなら差し上げます」
http://mendel.exblog.jp/2636164/
2005-09-04T18:43:27+09:00
2005-09-10T09:28:59+09:00
2005-09-04T18:41:14+09:00
gil-mendel
seed-destiny
ミーア………どうして頑張った人だけが酷い目に遭うのだろうね。世界のために自分を投げ出した、その君がこんな結末を迎えるなんて、あんまりだ。
シン、君の出番はアバンタイトルだけか! また出番を秒単位で数えなければならんのかね、こんなに土壇場に来て! シン頑張れシン!
キラ、一つだけ指摘しておこう。言い訳は見苦しいぞ。
第46話「真実の歌」。
久し振りに、萎えな回に出くわしてしまった…。来週は多分リアルタイムでは見ないんじゃないかと思う。
しっかし…大丈夫なんでしょうかね、余すところあと4回しかないんですが。
今回は場面的に非常に偏った感想です。全般的な感想を書く気が起らない……。
アバンタイトル…今週きちんと見たのは多分ここだけ。
議長はメサイア議長室にて、自分はちゃっかり椅子に座ったまま報告を受けている。
「しかし愚かなものだな、我々も。まさかそんなことにはなるまいという安易な思いこみがとてつもない危機を産むということは既に充分知っていたはずなのに、今度のことをまたも未然に防げなかった」
議長、そんなこと言ってこの危機を呼び起こしたのはぶっちゃけあんたですから! てか、そんな言い方したら軍高官がへこみますから!
「本当に、面目次第もございません」
「いや、君たちを責めている訳ではないよ。私もまた、詫びねばならん立場だ、失われてしまった多くの命に。
だが、そう思うなら、今度こそ本当に、もう二度とこんなことが起きない世界をつくらねばならん。それが亡くなった人々へのせめてもの償いだろう」
「はい」
プラントにも多大な被害をもたらしておけば、全てが自作自演だと疑われることもあるまい。
そして議長の計画は、ある意味ここまでが前段、地ならしなのだ。
ミネルバは戦い果てて許された、僅かな休息の中にいた。
艦橋をアーサーに任せて自室で暫し眠るタリア。ベッドではなく椅子で微睡む、その顔が綺麗だと思ったり。
しかし一方艦橋のアーサーは…指示するどころかまた驚いてましたよ。音声なしでも常に驚いているアーサー、やはり彼はミネルバの癒しですな。てか、駄目だろう艦長の代理をちゃんと務めないと! タリアが安心できるのは一体いつの日になるやら。
軍服のまま、布団も被らずベッドで横になるシン。ここにきて、初めてシンをかわいいと思ったり。
だがその横で、PCをぱりぱり打っているレイ。タイピングスピードはやはりナチュラルだ。議長への報告書でも作成しているのか。君は一体いつ休息しているのだろう。残された時間がない、だから休む暇なぞないとでも言わぬ気で。
実際、彼には時間がないのだろうな。それを思うと、心臓が痛む。
シンが微睡みから目を覚ます、起き上がってレイを見る。こんなところで、シンはレイの一挙手一投足に縛られている、のだと思う。
シンとレイが射撃の訓練。
シンの弾痕がばらけ勝ちなのに比してレイは急所を固めて撃っている。レイは努力の人なのだろうなと思いながら、そういえば地球に降りた当時もこんな場面があった気がしたと思い出した。アスランは親に施されたコーディネイトで、動く的まで撃って見せたっけ。表情を変えず見ていたレイの、心中はどうだったろう。オーブにミネルバを係留したときも、上陸許可が出たのに自分は射撃訓練を続けながらシンを上陸させていたっけ。あの頃は単なる冷めた嫌味な奴だと思っていた。……今思えば、と思うけれども遅すぎる。
そこへルナマリアが。シンを探していたのだろう、レイと一緒に射撃訓練にふけるシンを見て、少し驚く。気付いて中断し、戸を開けるシン。
「何じゃないわもう。やっと休息になったのに、何でいきなり射撃訓練なの?」
休息なんだから彼女である自分と一緒に過ごすのが普通だろ!とはルナマリア脳内。ああそういえば、シンはとんと普通の男女交際には無粋でしたな。ルナマリアはそういうことにばかり頭を使ってそうだが。シンにはステラの方が合っていたんじゃないかと思ったり。
「え、だって俺もう寝たし、レイがやるって言うから」
いやシン、素で返すなよ。相手の意図を掴む努力をしようさ。頼むからその問いの意味を考えようよ。「レイが」って、ああ君はレイの飼い犬だよ全くよ! いかん、シンがそれに気付く日は来るんだろうか……あと4回しかない放映の中、シンに割かれる時間もやたらに短いというのに。
「ああそう!」
言わんこっちゃない、ルナマリアがお怒りではないか。
ルナを追うシンをレイがちらりと見て、再び的へ向き直る。今は未だ監視に行くのは早いと見たか。
ルナを追って出たシン、それに一応普通の過程を経て腕を掴まれたルナマリアが言う。
「ちょっと話したいと思っただけよ。あの時はばたばたしてたから、アスランと…、メイリンのこと」
はっとしたシン、けれどルナマリアはシンの出てきた扉を見る。そこにやはり現れていた、レイ。監視に気付いたルナマリアは話題を慌てて転換する。
「でも、もういい。言いたかったのは、気にしないでってことだけだから。生きてるかもって思うと、私も何だか落ち着かないけど、でもシンは悪くないから。命令だったの、分かってるし、疑いは晴れてないんだし。だから気にしないでって、それだけ。…ごめんね」
明らかにレイに聞かれて構わないような内容に変えた気配。「シンは」悪くないって、それは例えばレイは悪いってことですかねルナマリア。命令させたのはレイだしね。
まあまたレイの報告事項が一つ増えたんでしょう。シンをより戦士に育てるために、邪魔な因子として。……むう。
あと数話、一体どうなるんでしょうな、彼らは。どういった形で落ち着くのか。
一応主人公なのに暗雲立ちこめる感のあるシンが気の毒で仕方ない。しかも今回の出番、回想を抜けばアバンだけなんですけど! どう落ちが付くんですかね、え?
全く、「まさかそんなこと(=主人公不在)にはなるまいという思いこみがとてつもない危機(=主人公交替)を産むということを既に充分知っていたはずなのに」、ってとこですかね。いや本気でどうなるんでしょう。気が滅入ります。
ここからは超駆け足でお届けします。
キラとアスランがシンについて喋っている。相手を高く評価するとかそういう普通の感性はスーパーコーディネイターにはないと見た。
「あれは、僕もザフトと戦っていいのかどうか、迷ってたから」
…………………ハア? 負け惜しみですか? 今更?
思わず34話を見直しちまったじゃないか。君も相当必死だったように思えますが? それとも何ですか、コックピットを狙わなかったのが「迷い」ですか?
「議長やレイがやっかいなのはそこなんだ。話してると、彼らの言うことは本当に正しく聞こえる」
相変わらず正しく聞こえてるんですかアスラン。てか、未だに正しく聞こえるようなら諦めてザフトに戻っては如何ですかね。AAに何か正しく聞こえるものがありましたか?
「だよね、それは分かる。実際正しいんだろうし」
ーーーーーーーーっ、ハア???? 正しいと思うそれに引き金を引くのは何故ですか? 君らは世界のあらゆるものを撃ってみなければ答えは出せませんか? いい加減にしろよキラ!
正しい、と認めるならせめてその道を邪魔しないくらいの努力はあっていいんじゃないんでしょうかね? AAはあれだけミネルバの戦闘の先々で介入し邪魔し立ちはだかってきたんですが。それは「正しい」と認めていて尚立ちふさがったのだと君は言っている訳ですが、そんな意味不明な行動をされたところで正直困ります。
「シンもそこから抜け出せないんだ、恐らく。あいつも夢があって、そのために頑張る奴だから」
いや、待ってくれよアスラン。そう思うなら、少なくともお前がミネルバにいる間にシンにそう伝えてやってくれよ! シンをそう評価していると何故言えないよ! 口べたとかそういう問題以前の問題だよ! 人間は言葉で相手を理解するんだ、その言葉を向けなくてどうする! 「彼らの言葉はやがて世界の全てを殺す!」とか抽象的な言葉じゃなくて、もっと言うべき言葉が君にはあったろう! 今更何だよ、今更!
ミーアはコペルニクスの保養所に寂しそうにいる。ラクス・クラインとして表舞台に立っていた、その時がこの子の一番素晴らしく輝いていたときだったとやはり思う。
サラの口からラクスがコペルニクスに来ていると聞かされ、殺害を暗に仄めかされるミーア。
ミーアの方が、ラクスよりもずっと人間らしくて、好きだったな。今になってそう思う。
ラクスとキラ、アスランにメイリンは船外を散策。気楽なものですな。あと数話で話が終わろうという時にそれかよ! ああ全く無駄だ無駄!
それを見送った名無し男は……セクハラおやじだった。はあ。
「ずっと船の中じゃあんただってきついだろ?」と言ったときにファントムペイン3人組をミーアコンサート見に行かせたことを思い出すおっさん。そうか、あれは息抜きだったのか。……あの3人にしてやれるべきことが、あんたには他にあると思うがね、おっさん! とりあえずマリューさんと温泉に入ったのかどうか教えろ!
しかし…ラクス。その格好は怪しすぎるぞ。着せ替えごっこして遊んでいる、彼らに危機感の欠片もなくて、もう唖然とするしかない。
「ちょっと呆れてるだけだ」
呆れてるならこの行動を阻止しろよアスラン!
そこへ都合良くミーアのハロが。ミーアのメッセージは英語。前から思っていたが、プラントの公用語も英語なんでしょう。彼らは英語も日本語も問題なく使いこなす人たちなんだろう、そういうことにしておこう。
「大丈夫だよ…みんないるし」
ああそうですかはいはい。赤信号みんなで渡れば怖くないんでしょ。問題を大きくややこしくしているだけだろうがキラ! アスランじゃないけど本当に頭抱えたいよ。駄目だこいつ。
指定された円形劇場にはポーチを下げたミーアが。
相対するミーアとラクス、ラクスに怯えるミーアが可哀想だ。偽者って、そんなに悪いことなんですかね。プラントが必要としたときにそこにいなかったのはラクスの責任なのに、その代役を果たしたミーアがどうしてそんなに怯えなくてはならないのか。
「偽者は悪だと思うからか」、その言葉をそうだと肯定させるためのラクスなのだとしたら、何のための彼らなのだろうと、もううんざりする。
「あたしがラクスで、何が悪いの!」
混乱して銃を向けるミーア、だがアスランに砲身を弾かれ飛ばされて。
「名が欲しいのなら差し上げます。姿も。でもそれでも、あなたと私は違う人間、それは変わりませんわ。私たちの誰も、自分以外の何にもなれないのです。でも、だからあなたも私もいるのでしょう、ここに。だから出逢えるのでしょう、人と、そして自分に。あなたの夢はあなたのものですわ。それを歌ってください、自分のために。夢を人に使われてはいけません」
教祖ラクスのお諭しに、うなだれるミーア。要するに、迷える子羊ミーアを救ってやるためにわざわざ教祖はお出ましになったという訳だ。
名が欲しいのなら差し上げます、だ? ラクス、そう思うならそれこそ君は違う名でオーブのカガリの傍に現れるべきだった。いつ君がその名を放棄したと? いつ君がその姿を放棄したと?
詐欺師の言葉には、もううんざりする。
現れたそのことで、ミーアの存在を危機に晒したことを少しでも認識しているなら、そんな言葉は吐けないはずだ。それとも何か? やはり「偽者」に制裁を与えるために「本物」が登場したと?
サラらと銃撃戦になるキラたち一行。ええと、これのどこが「大丈夫」なんですかねキラ。
月だから重力が軽いのか、それともアスランだからか、異様に身のこなしが軽いアスランは空を飛んだりして笑わせてくれる。キラはもうとっくに不殺解除なんだろう。
その上に何故かアカツキでムウが登場……アスラン、あんたこれ呼んだのか。中立都市でぽんぽんMS飛ばすのはどうかと思いますがね、全く。普通に車とか呼べよ。
そして、セオリー通り「偽者」が「本物」を庇って、撃たれる………。ああそうでしょうよ! どうせ偽者は偽者だよ! ここでラクスがミーアを庇って死亡なら、まだ物語が深まったものを! どうして死ぬのは常に「偽者」なんだよ!
ミーアを殺した議長が許せない、恐らくはそういう感情的な理屈をつけて議長と戦うための捨て石なんだろうが、ラクスが出てこなけりゃミーアが撃たれることもなかったんだよ! 毎度毎度、自分たちの責任というものを考えても見ようとしない人たちには、本当にうんざりする。
次回タイトルは「ミーア」。まさかここまできて総集編ってことはないよな?]]>
lascia ch'io pianga~私を泣かせてください~
http://mendel.exblog.jp/2600006/
2005-08-30T00:42:14+09:00
2005-08-31T06:52:51+09:00
2005-08-30T00:40:01+09:00
gil-mendel
deliramentum
以下、ネタバレと非常な動揺のため読みにくい文章となっています。適宜回避してください。
あんまりだ。
確かに、その生き方や言葉の端々から、寿命が短いのではないかと推察してはいた。だが、本当にもう一度失敗作クローンが出てくるとは思わなかった。
あんまりだ。
確かに、いつか異変が来るのではないかと、議長の言葉からも恐れてはいた。だが、まさか二度目はないだろうと、何処かで高を括っていた。
あんまりだ。
あんまりだ。
あんまりだ。
あんまりだ。
せめて、彼が生きることに対して真っ直ぐだったことを、喜ぼう。もうそれしかないのか。生きることに意味を見つけられた、それにしか救いはないのか。
救いはないのか。
………ああだから、自分を彼は投じているのだと思う。新しい世界、そこに自分は居ないのが分かってはいるけれども、新しい世界を開くために。人の新たなる未来、もう争いもなく穏やかな、人が人を手段にしない世界を拓くためになら、何でもするのだと。
暫くは、泣かせてください。]]>
phase-45「ありがとう、ジブリール。…そして、さようならだ」
http://mendel.exblog.jp/2588868/
2005-08-28T13:24:58+09:00
2005-08-30T19:03:47+09:00
2005-08-28T13:23:17+09:00
gil-mendel
seed-destiny
レイ、ドラグーンいいぞドラグーン! 宇宙戦の醍醐味、ありがとう! 相変わらず君も黒いがな!
シン……よく考えたら今回、レクイエムを落としたのはルナマリアで、ジブリールを落としたのはレイですが………主役、だろ? 頑張れよ!
第45話、「変革の序曲」。
前回長くなりすぎて懲りたので、今回は短め短めにしてみます。(できるのか?)
アバンは前回の続き、レクイエムを撃たれて大混乱するプラントから。
「市内はどこもパニック状態です!」と泣き叫ぶ部下(多分評議員?)に議長が言い放つ。
「分かっている、だがそれを収めるのが仕事だろう! 泣き言を言うな」
仕事の際に泣き言を言う奴って見苦しいですよね。泣き言言って何か事態が前向いて進みますか。仕事しろ仕事。
レクイエムの第2射が撃たれようとする中、議長は更に檄を飛ばす。
「ともかく救助を」
「それも分かってはいるが、そうしている間に二射目を討たれたらどうする!」
「停戦手段などは…!」
「停戦? 相手は国家ではないのだぞ。テロリストとどんな交渉ができるというんだね。力に屈服しろというのか!」
今となっては蓋し名言というべきか定説と言うべきか、最近のあらゆる国家のお言葉だ。まあ実質ジブリールと停戦交渉などありえませんがね。
OP、前々回で変わるかなと思った通りにアカツキカットに名無し男がきていた。予想まんまだよ。下手な予想も数打ちゃ当たるってか。
もうドラグーン対決なり因縁対決なりガシガシやってくれ、レイ。今はそれだけが楽しみだよ。
とはいえ、アカツキの反射率と相手の不死身度合いでは君の苦戦も見えてはいるがな。…それが残念だ。
では次に変わるカットを予想してみましょうか。シンとレイがデストロイを背景に向き合うカット、デストロイが議長になる! …そんな莫迦な。あそこはMSの定位置なんだが…議長の乗るMSが思いつきませんで。
AAではカガリが乗っていったアカツキを収容中。その他機体の調整作業をアスランとメイリンも担当。裏切り者は一般兵から始めてみよう、そんな感じですかね。…てか、アスラン全快に近い感じなんですが早すぎやしませんか。インフィニットジャスティスで気を失ってたのはアレはポーズですかそうですか。
プラント崩壊にも動じる気配を見せないキラがやってきて、アスランを手伝っていく。
「もどかしいね、今は何もできないって分かってはいてもさ」
いや、あんたはちっとももどかしくなんか思ってませんから! オーブの危急には起つのにそれ以外ならどうでもいいんだよな君は! 全く、己の言葉を己に向けてみろってんだ、『他の国はどうでもいいの?』だよ全くな!
思えばミネルバがオーブ領海近くでオーブ軍と連合軍に挟まれ、供え物にされて苦戦していたときから、君は既に他人事だった。誰かが泣いてる、だがその原因を何とかしようとする気は微塵もない。
人間として、本当にそれでいいのですかねキラ君?
宇宙へ上がったミネルバへ、次なる目標が示される。ミネルバ単独でダイダロス基地を落とせというものだ。
にしても、メサイアの議長室はストレートなラスボス臭がする。周囲をぐるりと兵と端末に取り巻かせ、それらに出させた映像が空間を覆い、玉座にも似た椅子に座る議長は居ながらにして世界を把握できるという仕組み。個人的には結構好きですがね、この議長室。議長の背景が宇宙なのも素敵ですよ。…しかしここにまでチェスを用意させるとは。白のキングに自らを準えているのだろうその駒の近くに、ナイトが守るように2つ。
示された特命にアーサーが相変わらず驚いてくれる。いやもう、驚いていないとアーサーじゃない気分がする。最終話までに、一人で艦を担えるように…はならないだろうな。何せアーサーですから。
特命を聞いたレイは驚きもせず、事態を分析してみせる。
「確かにここからではダイダロス基地の方が近い、そういう判断でしょう」
議長のお考えならば先刻承知済みといった態度で、それにタリアが返す言葉が表面上は普通だが内心酷く怒っているようで怖い。この二人、表面上は普通に作戦のことを話しているようで、タリアは議長の手先であるレイに苛立ち、レイはタリアに銃口を突きつけて見張っているようだ。
「ええ、あれのパワーチャージサイクルが分からない以上、問題は時間、ということになるわ。駆けつけたところで間に合わなければ、何の意味もないものね」
「敵が月艦隊に意識を向けているのなら、上手くゆけば陽動で奇襲になるということですね」
「そういうことよ」
てか、ハナから議長の意図だろ! とタリアの顔が言っている。
やってらんないよねタリアさん。それでもプラントを守るためにはその通りに動かざるを得ない。
ふと浮かぶ、タリアさんと子ども。子どもがいたのか。29話に出てきた結婚相手に、少し似ているか。この子は今どうしているのだろう…ミネルバが動き出した当初はこんなに長く帰らぬとは思っても見なかったろうに。
だがこの写真、結婚相手が映っていないということは、既に母子家庭なのかもしれないな。まあ子どもが欲しいという理由での結婚だ、破綻する原因は伴ってはいる。
タリアにとってプラントを守ることは、子どもを守ることであるのだろう。是非生き抜いてほしい。
ミーア! 何故水着! 月面都市コペルニクスって、そこはリゾートですか!
浮かない顔して、そうだよな。死刑宣告されたに等しいんだから。
だがここなら人に見つからないとでも? どうなんでしょうかね。
レクイエムが着々と第二射への準備を固める中、レイはシンとルナマリアに作戦説明。レイの口調が一貫して冷たい。もうラウが憑依しているとしか。
「第二射までに、月艦隊が第1中継点を落とせれば、かろうじてプラントは撃たれない。だが奴らのチャージの方が早ければ、艦隊もろとも薙ぎ払われるぞ。トリガーを握っているのがそういう奴だということは、知っているな」
「ああ、わかってるさ、全ての元凶はあいつだ。ロード・ジブリール」
そう言われてへこむルナマリア。
「…あたしが、オーブで撃ててれば」
「ルナのせいじゃない。悪いのは匿ったオーブだ。そんなふうに言うなよ
」
ルナマリアを庇ったシンをちらりと見て、レイが冷たく言い放つ。
「何であれ、時は戻らない。そう思うのなら同じ轍を踏むなということだな」
どうしてですかね、この台詞が29話のラウに重なった。「こんなはずではなかったと、だから時よ戻れと祈りが届くことか?」……ううむ。彼らは一瞬一瞬の貴重さを知っている人たちなのだろう。余命が短く、成し遂げたいものがある時、人は過つ暇などない。
「レイ!」
「わかってるわ」
「そうさ、プラントも月艦隊ももう絶対に撃たせやしないからな」
「…では作戦を話そう」
ここまで彼らの士気を高めるための前振りでしたか。お疲れ様、レイ。しっかしルナにとは、また大役を任せたものだね。的が小さければ外す可能性は高いが、これだけ大きければ大丈夫だと? まあルナマリアに任せたらシンが恐らく手助けに行くだろうからということか。逆にしたらシンがレクイエム本体を狙うのがお留守になりそうだし。
レクイエムの稼働率が50%に。
「今まで誰にもできなかったことを私は成し遂げる! 歴史は漸く糺されるのだ、あと数時間で!」
そう言った者が破綻する法則に、ジブリールは素直に嵌っていく訳だ。
作戦打ち合わせを終えて、レイがルナマリアに。
「ではいいなルナマリア、タイミングを誤るなよ。…俺たちも可能な限り援護はする、だが基本的には当てにするな。すれば余計な隙ができる」
まあそうでも言っておかないと、何せルナマリアですから。
シンが「レイ!」と非難の声を上げるが、ルナマリアは煽られたか、
「分かってるわ、ご心配なく」と憤懣やるかたない声。
「では行こう、今度こそ失敗は許されないぞ」
そう言って行こうとするレイ。続こうとしたシンをルナマリアが呼び止める。二人きりになろうよ、と。ついでにひどくレイを睨む…ああはいはい。
それを見たレイは、やれやれ、といった風情で一声掛けて先に行く。
「…急げよ」
うへ。レイ、怖いって! まあ彼らには必要だろ、出陣の前に少しでいいから二人きりになれる時間が。それが志気にも多分関わる。…恋愛至上主義なガキとはつきあってられませんわな、全く。
残ったルナマリアはシンと抱き合ってくるくる回る。
いいなあ、重力が少ない空間って。あのあと絶対壁にぶつかって、ルナマリアの頭にたんこぶができるのが分かっていても、生きている限り一度でいいから宇宙に出てやってみたい。宇宙飛行士の免許を取るには既に不適格だがな…。
「大丈夫だ。ルナも艦もプラントも、みんな俺が守る。絶対に」
…………待て! それはルナマリアとミネルバへの死亡宣告だぞシン!
お前が守るって言った日には碌なことがないんだ、守る言うな!
さて、漸くミネルバの機影に気が付いたジブリールは大慌て。「距離50!」てどんだけ近いよ。オーブ攻略時でさえ距離200とかだったような。
「ミネルバだと! 馬鹿者、何故今まで気付かなかったのだ!」
申し訳ありません、演出と脚本上の単純なる都合です。あの大きさを見逃すなんてぶっちゃけあり得ない。兵は悪くありません。叱らないでやってくだされ。
ダイダロス基地は上を下への大騒ぎ。
宇宙ではやはり、レジェンドが威力を発揮。ドラグーンっていいものですねえ。
その様子を聞いた議長。…あんた今、後ろにふんぞり返って半分寝てたろ? どんだけ余裕なんだ全く。
「そうか、来てくれたか。彼らに期待して祈ろう」
いや待て待て。あんたがわざわざミネルバをこのタイミングで宇宙に上げ、そしてダイダロスを攻撃させたんだろう? 流石は「議長期待のミネルバ」だ、艦船一つで議長の意志を体現していく訳か。昔の女、育てたクローン(暫定)、種持ち、彼らの舞台をつくらんがためにしているのではとさえ思えてくる。
「戦闘の情報は随時市内へ流してくれ、ありのままを全て。コロニーで戦う彼らのことも」
「いや、しかしそれでは」
「大丈夫だ、混乱など起きやしないよ。
皆知りたいはずだ、自分の運命、その行く末を。
そしてその権利もあるはずだ」
映像を見ているミーアの、ぽんやりした様子にちょっと萌え。
犬と一緒に月を見上げる、コニールにも萌え。
しかし何よりも、嬉しそうに「権利もある」という議長の表情に更に萌え。
ミネルバによって戦況が逆転し塗り替えられザフトの圧倒的勝利に収まる様を、プラント市民が知ることで混乱が寧ろ収まると議長は言う。確かにその通りで、そのようにして被害が及ばなくなることを知れば市民は落ち着く。情報はありのままである方がよい。日米戦で日本軍は検閲の元嘘の勝利情報を流して市民を混乱させたが、生活に響く情勢と戦勝情報の食い違いは、信頼をなくさせるだけだ。
人は、運命を変えられなくても、少なくとも知りたいと思い、また知る権利はあるのだと議長は言う。
それが誰かの手の内にある運命だとしても。
デストロイがまたも出てくる。……いやもうそれは出すだけ無駄ですから!
デスティニーもレジェンドも、あっさりとデストロイを撃破していく。ドラグーンのピュンピュンいう音に(宇宙だから音など聞こえるはずはないのだが)釘付けになったのは内緒。
一方、ルナマリアもちゃんと目標に向かって進んでいた。途中でちゃんとシンがフォローにはいる。この辺りも計算の内ですか、レイ。
ジブリールはフルパワーでないままレクイエムを撃とうとする。しかしザフト月艦隊が中継コロニーにダメージを喰らわせたため、撃ってもプラントに届かないことが発覚。…ええと、そのまま撃つとどっちへ向かうことになるんですかね。満月の夜の月の裏側から撃つってことは、真っ直ぐ外宇宙へ向かって? まあその方が迷惑が掛からなくていいか。
「私が生きてさえいればまだいくらでも道はある!」
ジブリール、せめて君が世界からどう見られるかを少なくとも議長並みに考えてくれる位置のキャラだったならと思うと勿体ない。
レクイエム第二射を撃つ間に逃亡しようとするジブリール…いかん、小物感が漂いすぎている。
ルナマリアはダイダロス内部へと潜行、撃たれる寸前のレクイエムへ辿り着く。一方シンとレイは基地司令部へ…行ったと思ったら、レイは凄い顔で待機してましたよ。……知っていたのか基地の構造を? まあこの人は何を知っていても不思議じゃないですがね。
ジブリールは懐かしのガーティ・ルーにイアンと乗っていた。猫が見あたらないんですが…?
基地から脱出しようとしたジブリールの、目前に現れたレジェンド。はっきりと網を張って待ちかまえていた感のあるレイは、容赦なくドラグーンを叩き込む。……強い。こんな強かったっけ君?
レイが最初のドラグーンを叩き込んだその瞬間、なんと議長が、はっきりと口角を上げて、黒く微笑んだ。…計算済みか! ここまで計画の内だというのか、議長! ああ、もうあんた真っ黒だよ黒すぎて手も足も出ないよ!
「ありがとう、ジブリール。…そして、さようならだ」
ありがとうとは、勿論、議長の壮大な計画に意図せざるとはいえ乗ってくれ、ロゴスという悪役を演じきってくれ、そして世界統一という議長の覇道を王道にしてくれた、という意味だ。実際、ジブリールのような役割を誰かが演じねば、議長の計画は絵に描いた餅で終わっていただろう。
役割を終えた駒が自分を危うくする前に手を打つ、それも含めて全て議長の計画の内だ。………ああ。
激戦中の月を、暢気に地球から見ていたAA。その激戦の一端に自分たちの責任があると、思っても見ないようだ。流れた血が己の責任だと、考えもしない者の言葉はあまりに軽く、虚しい。
「それなら何も起きないし、こんな戦争も起きない。でも僕は嫌だ」
「俺も嫌だ」
「これって我儘?」
ある意味彼らは前作の否定ではあるのかもしれないと思う。戦争という愚かな行為を寧ろ全力で肯定する面で。戦争こそが人類の前進力だと?
「みんなの夢が同じだといいのにね」
同じとは何か。それは皆一つの夢しか見ない、ユートピアでしかないのではないか。それは議長の描く、人と人との相克を止揚した世界の末にあるものと、実はある意味通底しているのではないだろうか。議長を否定する、その彼らにしてこれとはどういうことか。
………AAの求める世界も正義ではない。つくづく、思う。吐き気がするほどに。
翌朝、カガリを迎えてAAは出発式を挙行。
AAといいながら、旧タケミカヅチ乗組員が何の違和感もなくAA側にいることに不思議を覚える。いや彼らは元からオーブ軍でしたから! 今更改めてオーブ軍に組み入れられるなんて可笑しいですから! カガリ、よく考えて見ろよ。
AAの一兵卒側にアスランとメイリンがいて、カガリの横にはキラやラクス、マリューに名無し男がいる。……いやもう、オーブ軍の扱いはよく分かったから。はっきり言おう、反吐が出るよ。キラ? あああのつい先日まで惰眠を貪っていたガキ? ラクス? ああ迷いながら宇宙でMS造らせてたガキ? は! それがアスランより優先なんだね、はっきりしてるよねオーブってさ! AAの優先順位は正直反吐が出るよ。准将だか何だか知らないが、軍隊組織を舐めきってるよ!
もっと酷いのは名無し男だ。その男、ロアノークという名前でオーブ軍務に就かせる気かね! 誰あろうその男の作戦のせいで、ダーダネルスでオーブ軍は辛酸をなめさせられたのではなかったのか? やめとけよ、カガリ。そんなことしてるからブルーコスモスに内通する軍人が出てくるんだよ。それが対外的にどういう効果を持つか、少なくともオーブ軍がどう受け止めるか、考えてみてもくれたまえ!
しかもAAはオーブ軍に組み入れられて、月面都市コペルニクスで情報収集と来たもんだ。は! 情報収集とは仮の名、実体は海外派兵だがな!
「オーブは、何より望みたいのは平和だが、だがそれは自由、自立での中でのことだ。屈服や従属は選ばない」
ではまず国の中で自由と自立を確立してから言ってくれたまえ。オーブに民主主義はないようですが? そして、責任の伴わない自由など放埒と同じですが? プラントを批判するのもいいが、自分たちの行動が今回のプラント一部崩壊を招いたのだということすら忘れたオーブがそれを言うのは情けなくはないですかね。
名無し男は「ロアノーク一佐」との名をいただいてアカツキを借り受ける。
せいぜいが、レイとの因縁を消化してくれ給え。ラウにしてやれなかったことをレイにはしてやれるのではないのかね? まあ所詮は名無し男だ、ドラグーン対決くらいが関の山かもしれぬがな!
アスランは、カガリの手から指輪が消えたのを見ている。
驚くキラとラクスに「いいんだ、今はこれで。焦らなくていい、夢は同じだ」と主張。
その確信が、ずっと君たちになかったものなのだ。
逆に、指輪というものに頼らなくなることで、それぞれが同志として道を歩めるということなのだろうと思う。少し前に踏み出せた、アスランとカガリに、おめでとうと言おう。
一方、カガリはメイリンを見つける。何故かツインテールとザフト服に戻っているメイリン…その格好でザフトと敵対しに行くんですかね君は。名無し男でさえオーブ軍服をもらったというのに…いやまあ。
「あいつ、頼むな。私は一緒にいけないから…無事を祈る」
頼まれてもねえ。いやいいけどさ。ま、カガリがオーブに残る選択をしただけ、誉めてやろうかと。
AA発進は、ラクスの指示の元で。
ああもう好きにしてくれ。
次週予告…………ハロって! いかん、最後の最後に大笑いした。]]>
phase-44-02 「未来をつくるのは、運命じゃないよ」
http://mendel.exblog.jp/2553743/
2005-08-23T00:39:51+09:00
2005-08-27T16:19:42+09:00
2005-08-23T00:37:45+09:00
gil-mendel
seed-destiny
AAで、アスランが悲愴な顔で呟く。
「同じだ、ジェネシスの時と…! もう、どうにもならない!」
巨大な暴力の前に、人は無力で。
だがそのジェネシスを、自爆で止めたのは君だったのではなかったかね、アスラン?
「うん。プラントは勿論だろうけど、こんなの、もうきっとみんなが嫌だ」
おお、他人事だねキラよ。事態は嫌だとかいうレベルを通り越していると思うんですがね。てか、連合はこの事態が嫌だと主張している訳ではないのでは? みんなって誰のことですか?
「でも、撃たれて撃ち返し、また撃ち返されるというこの戦いの連鎖は、今の私たちに終わらせる術がありません」
…そう、結局前の大戦から君が学んだことはそれなのだね、ラクス。暴力の応酬、それは結局終わらないと。だからレクイエムの惨事も、仕方のないことなのだと。………は! お前があのプラントの中にいて同じ言葉が言えたらその時に聞いてやるよ!
「誰もが幸福に暮らしたい、なりたい、そのためには戦うしかないのだと、私たちは戦ってしまうのです」
つまり君の結論はこうだ、戦いこそが人間の幸福追求だと。暴力の応酬と悲惨こそが、人間の望みだと。だって、君には戦いを終わらせる術などないのだから。終わらせる意志もないのだから。暴力の応酬こそが君の答えなのだから。君が作らせていた暴力を、私は忘れないよラクス・クライン。撃たれて撃ち返す、その応酬そのものを何の目的も世界像も持たぬままに君が為したことを。
「議長は恐らく、そんな世界に全く新しい答えを示すつもりなのでしょう。
議長のいう戦いのない世界、人々がもう決して争うことのない世界とは、生まれながらにその人の全てを遺伝子によって決めてしまう世界です…恐らく」
……あちゃ。議長の描く世界とは本気でそれか? 思わず自分の口が言ったのかと思ったよ。
36話で予測していた議長の思惑がほぼ当たり、というところか。…もっと意表を衝いて欲しかったな。
というより、自分の見通しがラクスと同じでうんざりした。まあ判断材料はあの世界の神であるラクスと、視聴者=神視点に立つ我々とは同じだから、導き出す答えも同じということか。
前作のクルーゼの台詞を思い出す。
「私のではない! これが人の夢! 人の望み! 人の業!
他者より強く、他者より先へ、他者より上へ! 競い、妬み、憎んで、その身を喰い合う!
既に遅いさ、ムウ。私は結果だよ、だから知る! 自ら育てた闇に喰われて、人は滅ぶとな!」
それを無くすための一つの方法として、誰もが無駄に競い合わなくて済む世界を提唱するならば、議長はやはり、ある意味ラウの意を継ぐ者なのかもしれない。恐らくは、レイも。
「それがデスティニープランだよ」
とはもう一人の神、キラのお言葉。つか、ラクスが持つそのノートにそこまで書いてあった訳じゃないだろ? 断言するには早いんじゃないかね?
「生まれついての遺伝子によって人の役割を決め、そぐわないものは淘汰・調整、管理する世界だ」
「淘汰、調整?」
その言葉を聞いて名無し男が思い出すのは、ステラ、スティング、アウル。………今頃か! お前は彼らをどう扱ったのか、その責任を問われる立場であることを忘れるな! てかあんた早速溶け込みすぎだよAAに。
エクステンデッドも、結局は淘汰・調整されて残った者だけが兵器として利用された、その点ではデスティニープランと似ているのかもしれない。だからOPのミネルバの背景はロドニアラボなのかもしれない。いずれもその操作方法は異なるにせよ兵器として人間を扱い、操縦する。
役割を与えられて生きること、それにエクステンデッドもデスティニープランも変わりはないということか。
「そんな世界なら、確かに誰もが本当は知らない自分自身や未来の不安から解放されて、悩み苦しむことなく生きられるのかも知れない」
……まあね、アスランは悩まないとアスランじゃないですからね。悩んで成長しないところもアスランだけどね。
「自分に決められた、運命の分だけね。望む力を全て得ようと、人の根幹、遺伝子にまで手を伸ばしてきた、僕たちコーディネイターの世界の究極だ」
「そこにおそらく戦いはありません。戦っても無駄だと、あなたのさだめが無駄だと言うと、皆が知って生きるのですから」
二神かく宣いき。
いずれもがコーディネイターである彼らがこう語る、そこに大きな矛盾がある。しかも片方はスーパーコーディネイター。
コーディネイターという存在を、突き詰めればデスティニープランになる。遺伝子を操作して望みを叶えようとする、その社会が辿り着くべくして辿り着いた道なのだ。だからデスティニープランの否定はコーディネイターという存在そのものの否定に繋がる。
そこにキラとラクスの自己否定と混迷を結びつけたなら、この物語はもう少し広くなったろう。だが彼らは、「もう迷わない」のだ。残念なことに。
AAは、この会議が始まったときのプラントの大惨事を全く忘れ去ったかのように、「議長を止める」ために宇宙へ上がることを決意。
「未来を作るのは、運命じゃないよ」
どうしてだろう、それが、「未来を作るのはシンじゃないよ」と言われている気がして、少し虚しくなった。
ああどうせ未来はAAが造るものだろうよ! そんな未来には私は住まないがな!
全く、自分たちがジブリールを結果的に宇宙に上げたことの責任を僅かでも問うてみろよ! 暢気にハイタッチしてる場合じゃないだろ! 人がゴミのように殺されてるんだぞ! 間接的にあんたらの手でな!
玉座にも似た椅子で、議長が満足げに微笑む。
ああ、この笑いを見たくてここまで来たのだと、思った。]]>
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