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ちっちゃな種が暮らしいい。

phase-38「僕たちはまた話せる、いつでも」

何だ今回の話は! 最もまともなのがロゴスか! もうロゴス=AAで終わっとけ!
ていうか何だこの第4クールOPは!! 主人公キラかよ全くよ!!!!!!! いい加減タイトルバックくらい返しやがれ! …てか、そういうレベルじゃ語れないくらいにシンの影が薄いよ…。ミネルバメンバーの集合カット、背景が何故ロドニアラボなんだ!
…まあOPについては別途語るとして、取り敢えず感想を。今回は比較的かなり短いです。



第38話「新しき旗」。議長の、ロゴスの、だが何よりも、AAの。




ヘブンズベースでは回答期限を待たずして迎撃準備を着々と進めている。
守りきれるのか?と問われてジブリールが答える。膝の上にはちゃんと猫が。よかった連れてきてたよ!
「守る? は! 何を仰っているのですか。我々は攻めるのですよ、奴らを、今日ここから!
我々を討てば戦争は終わり平和な世界になる?
は! そんな言葉に易々と騙されるほど愚かです、確かに民衆は。
だが、だからこそわれわれが何としても奴を討たなければならない。
本当に取り返しのつかないことになる前に、
この世界が奴とコーディネイター共のものになる前にです!」
ジブリールまともだな。…そんなはずはないのだが、今最もAAと通じていそうな面子だ。「本当に取り返しのつかないことになる前に」あたり、つくづくそう思う。
実はAAのバックにはロゴスがいました…とかやってくれませんかね、脚本家。
「正義の味方や神のような人間などいるはずもないということを我々は知っていますがねえ」
…ロゴスのおっさんよ、恐らくはアズラエル父よ、それをAAに言ってやってくれよ。


所変わってミネルバ。
一人ロッカールームにいるレイとは別に、シンとルナが喋っている。…ものは考えようですかね。ルナマリアの考え方は、まあ絶対に分からないと言う訳じゃないが、そういう風に合理化しなければやっていけないときもあるとは思うんだが…、それで本当に良いんですかね。
「でもあいつらが、ロゴスが狂わせたんでしょ、アスランもメイリンも」
どこをどうやったらそういう結論に辿り着けるかさっぱり分からん。分からないもの、認めたくないものと向き合わないために、人間は時に、論理を無視する。
「ずるいのよアスランったら…皆裏切られたわ。私も莫迦よ…でも、負けないから」
口走っているだけの言葉は、理由を知らされずに脱走された側が自己を保つだけの、哀しいもので。
もう他に寄る辺のないルナマリアはシンの髪を撫でる。置いて行かれた者たちがくっつくのに、大した理由付けはなく。
シンとルナマリアは抱き合い、口づける。辛い心を紛らわすのに、ありがちな。
「…ごめん」
「ううん」
「大丈夫」
「え」
「インパルスは絶対、俺が守るから」
「シン…」
シンが守ると言ったモノ、それは守れない結果に終わるのかことごとく? この先のルナマリアがいきなり心配になった訳だが。



戦端はヘブンズベース側の手で開かれた。
…スティング普通にいるんだが。ひっそり死んでましたではなかった訳か。まあそれはそれでいいんだが…。
開戦の様子は世界中に中継される。


そんな最中、キサカの手によってAAへ連れてこられていたアスランが目を覚ます。
どうでもいいがキサカがあっさりオーブ軍服を着ていたのには笑った。戻らなくていいのかね東アジアへ? 話がややこしくなるんじゃないか?
アスランは重傷のように見えないのだがどうもかなり重傷らしく、ほとんど喋ることはできない。そのアスランが目を覚ましたときに傍にいたのは、お約束のように、キラだ。…いやそこはカガリに譲れよ。
「お前、死んだ…」
いや待て。先週「きっとキラも(死んではいない)」と言ったのは何だ? ていうか殆ど死んでいたのはあんたの方ですから!
「大丈夫だよ、アスラン。君、ちゃんと生きてるって」
ああ残念ながらな! あんたもな!


さてヘブンズベースには量産型デストロイが5機。アーサーが「ええええええええっ! あれが、5機!」と相変わらずの驚きぶり。頼むから艦長席に座ってまで驚くのはやめてくれないかね。
議長も驚き顔。よかった、たまには驚いてくれて。この情報は得ていなかったということなのか、それともこれも芝居なのか。

さらに対空掃射砲ニーベルングをヘブンズベースは用意していた。勿論ザフトの降下部隊対策として。
展開させた降下部隊は総て消滅させられる。壊滅じゃなくて消滅ですよ消滅。
議長は、だがニーベルング情報を得ていなかったかどうかも実は微妙だな。
シンが「早く発進を!」と急かしてタリアが躊躇し議長が許可。シンのデスティニーとレイのレジェンド、ルナマリアのインパルスが発進していく。
タリアが躊躇う理由、それは今出ていったら彼らも落とされるという思いからか、それとも。


テレビで高みの観戦をしているオーブのユウナら。
現代の戦争はそう、こうして遠くで起っている限り、我々は唯の観戦者としてTVの前でのんびりしていられる。明日は我が身とも知らないで。
「万一これを失ってもまだ月があるんだよねぇ、連合には」
そうか月で最終決戦か?


ルナマリアが撃たれそうになったのをシールドでシンが防ぐ。
「迂闊だルナマリア! 飛んでいるんだから下からも撃たれるぞ!」
すみません飛んだの久し振りなんです。許してやって下され。ザクは地上では砲台代わりだったもので。

「お前達は、お前達もっ!」
シンはデストロイに搭乗しているのはエクステンデッドだと考える。だがそのあとがおかしい。
「ちくしょおおっ! こんなことをする、こんなことをする奴はぁ、ロゴス! 許すもんかぁーーっ!! お前たちなんかいるから、世界はあ!」
待てシン。「お前達なんか」と言いながら何故デストロイに斬りかかるよ。その行動と併せると「エクステンデッドがいるから」としか聞こえないぞ。
エクステンデッドに同情してはいるが、それも敵として立ち現れる以上、結局は倒すしかない。シンに、敵を倒す以外の選択肢は、まだないのだ。

種割れしたシンがデストロイ1機を倒し、アーサーが無責任に「凄い、これはまた凄いですよ、シン!」と喜ぶ。いや君は喜んだりしている暇があったら戦局の打開を考えなさいと。一応艦長席に座らせてもらってるんだから。
「彼らも頑張ってくれている。この間に陣容を立て直すのだ」
デストロイに焼き払われた艦船は相当量あったと思うのですが、あれはほぼ地球軍有志だったんですかね? 割とへっちゃらな感じのする議長が怖い。焼き払わせるのまで計算尽く…なんてことだったりしたら尊敬します。
レイが1つを破壊、それを見たシンはルナマリアにソード換装させてエクスカリバーをルナマリアとレイにともども使わせ、二人で1つを撃墜。
量産型は初号機よりも劣るのか。
「やるなルナマリア、大したものじゃないか」
「忘れてた? あたしも赤なのよ」
…忘れてました。そうでしたねあんた赤でしたね! 盗聴とかに特化してるのかと思ってましたよ。射撃が苦手ならソードで、か。正しくはあるかな。
そしてシンもスティングの乗るデストロイを撃破。
「…俺はっ!」と叫んで散るスティングが気の毒だ。復活したと思ったら一瞬ですか、去るのは。


ジブリールは形勢不利と見て、他のロゴス連中を置いてとっとと逃げる。
それに気付くのが遅れた周囲はデストロイが討たれたことと併せて動揺、白旗を掲げる。
相当程度にデストロイ頼みだった訳ですが、ベルリンでデストロイ(初号機)は既に破れているので、かなり作戦的には無理があったといえようか。初めから見えていた結果だと思うのですがねえ。ニーベルングはそれなりに良かったと思うが。




カガリがアスランの頬を拭う。その指に贈った指輪が嵌っているのを知り、一瞬アスランの目が大きくなる。泣き出すカガリ。
「カガリ…キラも…だから、時間が…議長…それを、知って」
途切れ途切れに何かを言いたげなアスラン。それをキラが遮る。
「アスラン、もういい。今は喋らないで。いいから少し眠って。
僕たちはまた話せる、いつでも」
今までは話せなかった。最初はキラにその用意がなく、次にはアスランにその気持ちがなく、すれ違ってきた彼らが、漸く共に話せる舞台まで来た。
共に語ることができる、それは何よりも大切なことだ。
「言葉が聞こえないのか」(カガリ)、「私の声は届いていただろう?」(議長)。「敵とは何か」に並ぶ今作のテーマは「対話」だろう。(つい、「対話」とくると「ミール」と言いたくなる…)
声を届かせることと対話とは次元が大きく異なる。声が届かなくては対話は成り立たないが、片方の声だけが届いていては対話にならない。一方的なプロパガンダにはそれに呼応するのは喝采か銃声だが、対話に応えるのは対話だ。
OPが「Wings of Words」であらねばならないその訳は、今作のテーマそのものであったと。
しっかし、38話かけて前作主人公達のすれ違いから共に同じ場に立つまでを描くなんて、何て比重を置いているのやら。

戦闘がヘブンズベース側の敗北に終わったという報を受けて、キラは考える。
「僕たちは何をやっているんだろう…世界は」
……………まだ答え出してなかったんかい! もうその問いにはいい加減に飽きたっての!
何をやっているんだろうだあ? あらゆる意味で世界に間に合ってないんだよ君らは!


議長が満足げな顔で、眸を閉じて微笑む。
そう、ここまではあなたの思い描いた棋譜の通り、だったはずだ。ミスさえなければ。
# by gil-mendel | 2005-07-09 23:38 | seed-destiny

ミュージカルバトン、受け取りました!

Refugeのtamayadem様からミュージカルバトンをいただきました。ミュージカルバトンの存在すら知らなかったので(どうよ)、ちょっとわくわくしながら質問に答えてみたいと思います。

(1)Total volume of music files on my computer(今コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)
(2)Song playing right now(今聞いている曲)
(3)The last CD I bought(最後に買ったCD)
(4)Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me(よく聞く、または特別な思い入れのある5曲)
(5)5人に回す
…およ? 答えられるだろうか?


(1) PCの音楽ファイル用量
…どうやって調べられるだろうと延々考え、とりあえず426MBという答えを出してみました。マイミュージックのフォルダの計ですが、違うのかも知れません。
ダウンロードすることはないので、PCで聴くことのできたCDがいくつか入っているよう。

(2) 今聴いている曲
すみません、これを書き始めたときは未明で起き抜けだったため、まだ静かにしていました。よって現在進行形ではありませんが、聴くつもりの曲なら書けるかな。
デッキを見たらクレンペラーのバッハミサ曲ロ短調が入っていました。寝る前にはこれを聴いていたはずです。
kyrieではじまる初っ端のところが何より大好き。悲痛な叫びに似たkyrieは、穏やかなものよりも好きかも知れません。天から叩きつけるような、深淵を覗くようなkyrieと、やがて天に導かれていくが如きkyrie。
圧倒的な、あくまで圧倒的なこの曲は、クレンペラーはテンポがゆっくりすぎる!という人に、きっとその良さと深さを再発見していただけるものではと思います。

(3) 最後に買ったCD
デュファイの「Flos Florum」…すみませんフランス語が分からない癖に一文字たりとも日本語解説のないCDを買ってしまいました。先週の木曜日に買ったと思います。
デュファイは15世紀のヨーロッパで名声を上げた歌手にして作曲家です。その導き出す旋律は繊細で美しく重層的で、最初に「聖三位一体のミサ 私の顔が蒼ざめているのは」を聴いたとき一瞬で惚れ込み、それ以来見つけてはちょくちょく買っています。
流通量が少なく日本語解説があまりないのが悩み、です。当然リンクもなし…残念だ。

(4) よく聴く、または特別な思い入れのある5曲
5つに絞るのはかなり難しいような気もしますが…選んでみましょう。

1 デュファイ作曲「聖三位一体のミサ 私の顔が蒼ざめているのは」。(私の顔が蒼ざめているのは
やはりこれは是非入れておきたい一枚です。朝聴くのがお勧め。
静謐にして深い感動を呼ぶ、人の歌声だけでこれほどに神に近づけるのかと思うばかりの響きが世界を揺さぶります。ディアボルス・イン・ムジカというグループが歌ったもの。その名唱とともに、絶賛いたします。
是非一度聴いていただきたい…のですが、手に入りにくいのが難点。

2 Coccoの「雲路の果て」。(ベスト+裏ベスト+未発表曲集
彼女の曲はどれも心に突き刺さりますが、その中でも特にこれを。
歌い終えて沖縄の蒼に還っていった彼女の、痛みとその向こうの癒しを、感じてほしいと思います。現在はまた復帰モードの彼女に、乾杯。

3 中島みゆきの「瞬きもせず」。(singles 2000)
歌姫、と呼んで憚らない彼女の曲はどれも好きで選曲に迷いましたが、元気の出る曲と言うところでこれを。「店の名はライフ」「肩に降る雨」とかも捨てがたいですが。
昔、中島みゆきの歌詞ばかりノートに書き留めていた知人がいまして、その人の影響で惹かれていきました。心を揺り動かす、歌姫です。

4 大島克保の「イラヨイ月夜浜」。(島めぐり~Island Journey~
始めにこの歌を聴いたのは夏川りみが歌うヴァージョンでしたが、作詞者である彼自身が唄者(うたさー)であると知り、聴くようになりました。その三線、深く広がる歌声、琴線に触れる何かを確かに持っている人です。心の師匠、と密かに呼ばせていただく人の一人。先日丁度NHK教育に出て歌ってくれました。

5 フルトヴェングラー「第九」、バイロイト祝祭盤。(ベートーヴェン交響曲第9番「合唱」)
カラヤンの戴冠ミサ曲とどちらにすべきか悩みましたが、やはり彼の生きた過程とその神が愛でた指揮に敬意を表して、こちらを。
ナチスドイツへの妥協はその評価をやや落としはしたものの、彼が復興の過程にあるドイツで指揮したこのバイロイト祝祭盤第九は、その訴えかけるものの大きさと強さ、何より心を引きずり出すような深い指揮で、他にやはり比肩するもののない、素晴らしさだと思う。
なお、私が最初に手にした彼の第九はこのCDではないのですが、今手許にないのでこちらを。

(5) 5人に回す
うーん…難題中の難題なので、今回はこれはパスすることに。
どうぞ皆様、適宜この問題に答えてやって下さい。ここからTBしてバトンを繋いでいただけると助かります。
# by gil-mendel | 2005-07-04 06:29 | interest

phase-37「裏切った彼らを、敵を討ったんだ、俺たちは」

キサカ! そのまま沈めといてやってくれよ頼むから! ていうかその行動はカガリに報告済みか?
アスラン…議長の考えが読めたんだったら、ザフトから自力で逃げ切れるとでも? 逃げるんだったらデスティニー使えば良かったんじゃ? その方がまだ確実性が増すだろ?
ミーア、今日初めてミーアが可愛いと思ったよ。最後の泣き疲れた顔、でもちょっとエロティックだったような気が。このまま殺されるのを待つしかないんですかね。
議長、タリアを凄い顔して睨み付けたり傷ついてるフリをしたり…いやもう役者だよ! もう真っ黒すぎて笑えるくらい。
レイ、シンを追い込んでシンにアスランを撃たせる方を選んだか。正しくはあるが、レジェンドの動きをもっと見たかったような。最後はシンとルナを気遣っているようだが…。
ルナマリア…心中はお察ししますが、偽ラクス情報を握っているんだからメイリンが撃たれた時点でザフトに疑問を持ったらどうだ。シンに抱きついても話は進まんぞ!
タリア、誰よりも今回はタリアが気の毒。この上は折角同じ艦に乗っているんですから、議長をバズーカで撃ち倒してやって下さい。





第37話、雷鳴の闇。昨日まで味方だと信じていた人を裏切ったといって討ち、そしてそれが誤りだったと知ったことのある身に、最近の話は、少し、辛い。
今回は今までになく私情を挟みますので適宜回避してください。





アバンは先週のおさらい…と思ったらデスティニーとレジェンドが起動していた。
レジェンド…Generation Unsubdued Nuclear Drive Assault ModuleをGeneration Unrestricted Network Dr…に書き換えて起動ですか。ええと、書き換えってことは取り敢えず今は核機動でないということでいいんですかね。
シートベルト、ピンクなのに笑った。どうよその色。
「訳など知らない。だが保安部に追われそれをうち倒して逃走したのは事実だ」
えーと、追っていたのは君も含めてていうか君自身だと思うんですがね、レイ。何で逃げたかも知ってるだろう? 多分に嘘と事実の隠蔽が混じってますな。
黒い黒い、真っ黒だよレイ! 願わくばその描写が深からんことを。



キサカが東アジア共和国の艦船から発進していくデスティニーとレジェンドをみている。どう考えてもグフにアスランが乗っていたという推測はできないはずなのだが…スパイ能力が高いのかそれともこの世界の神の一人なのか。
まあここはザフトの通信傍受ってことで。この際ラグナロクのデータハックもキサカということにしておこう。


タリアが凄い剣幕で司令部へ呼ばれていく。そりゃなあ…部下が二人も脱走じゃ、驚きもするよな。
この世界で一番の苦労人はタリアだろう。ミネルバの艦長に就かされて腹黒議長の思惑に嵌められ延々地球を転戦、アスランをいきなり配属されるわ勝手にFAITHにされるわ、ハイネは配属されてきたとたんに戦死するわ、AAはどっちつかずの蝙蝠だし、部下は言うこと聞かないガキ共や自分で考えることもしない副長とかで、敵兵を脱走させて開き直る奴、仲間内で揉める奴、議長に内通してる奴、…まあ気の毒にも程がある。


議長からレイに通信が入る。グフもザフト機体だからこの通信が聞こえているようだ。シンには議長とレイ両方の様子が映像付きで届いている。
メイリンについて尋ねられ、メイリンは人質ではなく自発的意志でアスランと共にいると答えるレイ。間違っちゃいないけど。
それに驚くシン、戦くメイリン、怒るアスラン。

「お前は戻ってくるんだな」とステラを逃がすシンに問いかけ、「シンは戻ってきます」と言い切ったレイを思い出す。
彼にとっては、相手が何処を足場としているかが重要なのだ。敵が相対的な概念であると言い切ったということは、当然味方も相対的な概念でしかない。
それは軍人としては正論だが人としてはとても、哀れなことだ。

「脱走は絶対に阻止すべきものと考えます。撃墜の許可を」
強いレイの言葉にシンは驚き、タリアは慌てて止めようとする。しかし議長はあっさりと許可。
それに驚いたタリアが「議長!」と制止しようとするが、議長に厳しい眼差しで睨まれて退いてしまう。この議長の眼がいいと思う今日この頃。
驚くシンもレイに声を掛けるが、一蹴される。
…脱走は本当に彼らの想定外事項だったのか。殺す気満々じゃないか、レイも議長も。というより、シンにアスラン殺しというステップを踏ませる気満々だな。


「こんなことで、議長とそれに賛同する人の思いが無駄になったらどうする。今ここでの裏切りなど、許せるはずもない。覚悟を決めろ、シン。俺たちで防ぐんだ」
裏切る、とはどういうことだろう。裏切るという言葉がやたら連呼される今回、裏切りとは何かが引っかかる。
人は考えを変える、それとともに立ち位置も変える。それが許せないと思うのは、残された者の怒りとしては無論のことだ。
裏切るくらいなら、ザフトごと変える覚悟があればいいのにと、思わぬでもないが、アスランにできるのはあの状況ではせいぜいジブラルタル基地での演説くらいか。…口べただからなあ。
一つの目的の元に動いてきたものから離れる、それが目的を損なうというのなら、裏切りと呼ばれるのも、仕方のないことかも知れない。


アスランがシンを説得しようとするがレイに否定される。
まあ「彼らの言葉はやがて世界の全てを殺す!」とか言われてもハァ?だがな。もう少し分かるように話そうという気はないのかね、君は。直感で掴んだ答えだからそう整理はされていないんだろうが。
しかしそれを聞いた議長とレイの顔がやや引きつって見えたのは、ある程度真実に触れているからなのか。レイなぞ「シン、聴くな! アスランは既に少し錯乱している!」って、いや確かに若干錯乱してるけれどそれはあんたも同じですから!

せめてメイリンを降ろさせろと要求するアスラン。「その存在に意味はない」と切って捨てるレイ。
存在の意味を議長に求めているレイならばの答えと言うべきか。意味のない存在だった自分を救ったラウと議長にそのよりどころを求めているからか。
役割を果たし、味方である者でなければ、存在自体が無意味、寧ろ有害。
その言葉に未だ抗えぬ郷愁を誘われる。
そんな風に切って捨てた、それが全ての価値観が逆転したときに、愚かだったと知った後でさえ。


「彼は、彼らは! 議長を裏切り、我らを裏切り、その思いを踏みにじろうとする、それを許すのか! お前は言ったろう、そのためならどんな敵とでも戦うと」
そうだ、自分はそう言った。目指すもののためならあらゆる障害と戦うと。あらゆる困難を恐れない、あらゆる敵と戦うと。
それがつい昨日まで、色々問題はあり仲は良くないが、一緒に戦ってきた朋友、だとは。
それでも組織として、自分の立場として、やらぬ訳には往かぬ。

シンは種割れして、「あんたが悪いんだ、あんたが、あんたが裏切るからぁーーーっ!」という安直な感情に基づき、レジェンドと斬り結んでいたアスランに襲いかかる。
一歩退いた上空から冷めた目でレイが見下ろす中、グフの鞭も楯も落としてさらにソードでコックピットやや下を串刺しに。海面に落ちたところでグフ爆散。
……で? 普通死ぬよな? 少なくとも五体がバラバラになるくらいするような爆発だよな? それとも何か? グフのコックピットはハイネの件から問題ありとみて改良されたってか?
人の命は軽いもんだね。主人公補正の効いている人たちに比べて、名もない人の命の軽いこと軽いこと。それで生きてるんだったらベルリン市民に一人の死者もいねえよ!


戦い終わって苦痛に顔を歪めるシンに、レイが声を掛ける。
「シン。よくやった」
「あ」
「俺たちの任務は終わった」
「にん、む」
「ああ」
「アス、ラン…メイリン」
「裏切った彼らを、敵を討ったんだ、俺たちは。やるべきことをやったんだ。さあ、戻るぞ」
アスランらを敵と言われて、シンが息を呑む。シンが望んだ敵ではなかったから、か。シンが想定していたのはロゴスという漠然とした悪でしかなかったのだろう。だが、実際にシンの目の前に敵として示されるのは、AAであったりそれに繋がるアスランであったりするのだ。知っているものは守ろうとするシンにとって、アスランを撃つということは自分を大きく裏切ることではあっただろう。
「敵って何だよ」(アスラン)、「じゃあどことなら戦いたい」(ハイネ)、「何が敵であるかそうでないかは、陣営によって違います」(レイ)、「なら僕は、君を撃つ!」(キラ)。
シンの葛藤は、議長にしてみれば乗り越えるべきものだが、誰かを敵として撃つとはそういうことだ。


で、キサカ! ちゃっかり船で回収に行くとはどういうことだ!
中身がアスランと知ってのことか? いつ知った!
しかも、その小さい漁船なみの大きさの船でよくグフ撃墜場所へ追いついたな! あり得ないから!
………ま、所詮はランボーだから。諦めますわ。
なあレイよ。こういうこともあるんだから、本当に搭乗者が息絶えたかどうかまで確認してから帰るべきじゃないかな。キラについても死んだと思っているようだし…詰めが甘いんだよ詰めが!!


さて、司令部ではザフトの黒服らや文官、タリアらが集まって議長と共にメイリンを庇うアスランの映像を確認している。その隣の部屋ではミーアが力無く床にへたり込んでいる。
そこにグフの撃墜報告が入り、タリアとミーアはそれぞれ衝撃に顔を歪める。平然としている議長につかみかからんばかりの風情でタリアは歩み寄るが、議長はしれっと、他に指示を出す。ザフトの見解統一、現場海域の隔離、ルナマリアの尋問。…こういうところ、議長はなかなかやり手ではあるが、既にその現場海域でアスランらを救出している者がいるとは思っていない辺り、甘い。残念だ…。
そしてタリアにも艦内の居住区域捜索と、タリアへの尋問を要請。
「アスランは私が復隊させ、FAITHにまでしたものだ。それがこんなことになって…。ショックなのは私も同じさ」
いや議長、そんな顔したってあなた全然衝撃なんか受けてないですから! 元からアスランという駒を捨てる気満々でしたから!
タリアはその見せかけの苦渋に臍を噛むが言い返せない。議長はさらに、後で時間を作ると続ける。
…タリアって本当についてないな。ま、何が運が悪かったかって、こんな人間と関わり合ったことが一番なのだろうけど。
後で時間を、ってやっぱりそういうことなんですかね、議長?


デスティニーとレジェンドが帰投。
脚の進まないデスティニーに、レイがレジェンドごと振り返る…待て! 機体が振り返ったり首を傾げたり、おかしいだろう! MSで手繋ぎもおかしかったが、その距離でMSで振り返る意味が分らんぞ!
にしても、ぽすぽすと歩いていく二体の後ろ姿…妙に可愛らしくありませんかね。


一方、尋問を受けている…もとい、メイリンについて説明を受けているルナマリア。メイリンのアクセスログとアスランと共に逃亡する写真を示され、「そんなはずはありません…あの子がそんな、アスランを…そんなの、何かの間違いです! 絶対そんな、莫迦なことを!」と涙声になる。
ごく一般的な、容疑者の家族、というところか。

その涙声の後ろで、議長は指示を下し、ミーアは涙を浮かべて座り込んだまま、シンはデスティニーの足元で何かに耐え、レイはそんなシンを離れて見遣り、タリアは珍しく軍服の衿を開いて夜明けの空を見遣っている。
アスランとメイリンを撃墜させた、それは議長が思った以上にミネルバはじめザフトに影響を与えるのだろう。

翌朝。
グフの沈んだ海域の捜索が続く中、シンとレイは議長の前に呼ばれる。この時点で二人とも艦にはまだ帰っておらず、基地内の与えられた部屋にいるのだろう。
「だが、よくやってくれた、ありがとう」と讃える議長に、レイが「撃ったのはシンです」と報告。無論議長もそんなことは知っているが、シンに「自覚」を持たせるために「そうか」とやや驚いたフリをして見せ、「大丈夫か」と気遣ってみせる。
「大丈夫、です。…でも、アスランとメイリン、…何でそんなことを」と尋ねるシンに、議長とレイが用意していた芝居を見せる。
「未だコックピットも見つからず何も分かってはいないが、こちらのラグナロクのデータには侵入された跡があったようだ」
「らぐなろく…」
「ヘブンズベース作戦のコードネームだよ、大層な名前だがね。ただその中にはデスティニーとレジェンドのデータもある。
侵入はそう容易ではないはずだが、情報に精通している者がいれば、或いは」
「メイリン…ですね」
「うん。彼はラクスを連れ出そうともした。だがラクスは拒否し、それでこちらにも事態が知れたのだが、一体彼は何故、何処へ行こうとしていたのかな?
AAとフリーダムを打てと命じたことを大分怒ってはいたようだが、だがそれも」
「後ろ盾を失い、焦ったのでは」
「分からんね。ならば尚のこと、何処へ」
「ラグナロクの情報なら、欲しがるところは一つです」
「…ロゴス!」
彼らの誘導は実に巧みだがあからさまだ。アスランとメイリンをロゴスに結びつけ、同時にAAも結んでみせる、アスランが元々AA=ロゴスのスパイだと描いてみせるのだ。
その図式に多少の無理があろうとも、アスランを撃ってしまったシンはそう思い込まねばやって行けまい。
アフターケアのある意味行き届いた芝居、ということか。
さて、本当にラグナロクデータに侵入されていた箇所があったかどうかは不明だが、まあ仮にその形跡があったとして、議長が意図的にデータを流していたに70%、残り25%にキサカのハック、最後5%に別筋からの侵入というところだろう。

「開戦の折り、それだけはどうしても避けてくれと言って来てくれた彼だからこそ、私は信じて軍に戻した。それが何故? ロゴスを討って戦争を止めようというのが気に入らない?」
「議長」
「心中はお察ししますが、もう思い悩まれても意味のないことです。
我々がいます、議長」
「レイ」
「困難でも究極の道を選ばれた議長を、皆支持しています」
「レイ」
「次の命令をお待ちしています」
「…ありがとう」
たかが芝居、シンを安定させるために議長とレイが打った芝居、だというのに。
どうしてだろう、どうしてこんな言葉が心をかき乱すのだろう。
「我々がいます」と自分が言った、そのことを覚えている。
正しいと見えていた、その判断が少なくとも誤りだった、としたら、それまでの行動は何だったのだろう。
世界は何でもって贖われるのだろう。
答えは、出ない。



ミネルバにルナマリアが戻される。デスティニーとレジェンド、シンとレイも。
メイリンを殺したと呟きそうになるヴィーノをヨウランが止める、その描写が結構好きだ。
デスティニーから降りてきたシンが無言で佇む、その方にレイが手を置いて、待っていたヴィーノ達と言葉を交わさずに歩み去る。
互いに何も、言わぬ方がいい。特に、こんな時は。


艦長室にて、タリアとアーサー。アーサーはタリア不在の間艦長代理をどうやら務めていたらしい。
「悪いけどもう少し頼める? これではシートに座れない。…すぐに行くから」
タリアが動揺し、感情の揺れを見せているのに、密かに萌えた。
人前で泣いたりするようなキャラじゃないが、艦長席の気丈さを保っていくのも大変なのだろうな。


ミネルバ艦内、シンとレイが歩いていくその向こうから、茫然としたルナマリアが歩いてくる。立ち止まる三人、そして意を決して再び歩き始めるシン、それを見送るレイ。ルナマリアの傍を通り過ぎるとき、シンがぽつりと「……ごめん」と言う。その言葉をきっかけに、ルナマリアは抑えていた感情が溢れて、泣きながらシンの背に縋り付く。シンもルナマリアを抱えて泣きそうになる。その二人を視て、レイが辛そうな様子で踵を返し、去っていく。
…仕方がなかった。妹は軍に背いた。命令だった。ルナマリアならずともそう自分に言い聞かせるだろう。そう思う。それでも泣ける場所があるとしたら、シンの胸なのだろうか? …人の弱さは、正直、よく分からない。仮に、妹とアスランが自分たちを裏切ったのだと思い込もうとするなら、ザフトに残っていく者としては、残った者の間で感情を処理する必要があるだろう。そうとしか、もう考えつかない。
アスランとメイリンが生きていると知ったら、彼らはどうするのだろうと、その時の崩壊が寧ろ心配でならない。


ヘブンズベースを討つために、ザフトと地球連合軍有志が動き出す。
ミネルバは旗艦となった模様で、「旗艦BB01ミネルバより通達。全軍、我に従え」との由。その艦橋には議長やザフト黒服が集まり、本部のような様相。艦長席にはアーサーが座り、タリアは議長の後方に立ち、メイリンの席には既に他の人間が座っている。
こうしてみると、ミネルバを信頼しているから旗艦にしたというよりは、勝手な行動を取られては困るという監視的な意味も含んでの議長らの同乗という雰囲気が否めない。
議長はヘブンズベースへ通告を送りつけることに。まあ対華二十一箇条の要求よりはずっと穏やかだが、ロゴスメンバーの引き渡しと基地の放棄、武装解除とは、何かに似ている。そうだな、まるでイラクに米国が突きつけた要求のようだ。
タリアはやや目を瞠るが、しかし自艦から脱走者2名を出した今議長に強く言えるような立場ではなく、無言だ。


さて、ここでキサカがかくして置いた飛行艇を飛ばせようとしている。そこに積まれているのは、治療中のアスランとメイリン。
さあこの飛行艇はどこへ。AAへかオーブへか…?
にしてもキサカの手回しの良すぎることと言ったら、まるで神。


AAは海底ドックへ。待ち受けていた人々の中にエリカ・シモンズがいるところをみると、モルゲンレーテの秘密ドックか?
議長の通告を傍受したAAでは、キラが「ラクスと話したい、急がないと」と言い出す。エターナルでもラクスがキラとほぼ同時に同様の結論を出している。
離れていても一つの情勢を読み解いて出す答えは同じ、そりゃそうだけどさ。
「ヘブンズベースが落ちたら、次は恐らくオーブです。そうなったらもう、誰も彼を止められなくなります」
彼とは無論議長のことだろう(気分的には止められない奴とはキラじゃないかという気がするが)。議長がオーブを狙うのは、表向きはロゴスと繋がりがあるという言いがかりで、その狙いはモルゲンレーテなどを潰すため、か。pax ZAFT、それには無駄に強い軍事力が他にあればそれだけ不安定になる。
軍産複合体を叩くならザフトをも叩くべきなのに誰もがそれを指摘しない、そんな描かれ方にややうんざりしつつ、議長の描く世界とその崩壊を、見てみたいという思いにはやはり駆られる。


シンは私室へと帰ってくる。その様子を窺うレイの目に、微かな気遣い。
シンはベッドに横になって、随分久し振りに、マユの携帯を持ち出す。
「戦争を無くす…、今度こそ、本当に」
軍人は基本的に、戦争を無くしたいと思ってはいるだろうと、思う。殺戮が無性に好きという兵士はまあいるだろうが、自分が死ぬのが好きな奴はそうそういない。問題は、戦争を完全に無くすためには軍人としては、相手を完全に殲滅するか、そうでなければ完全に自軍に取り込むかしてしまわなければならないということだ。その過程は当然、戦争になる。敵がいるというのは、結局そういうことだ。そしてその後に創り出される世界は、やはり身動きの効かないものではあろう。
「戦いを終わらせるために戦うというのも矛盾した困った話だが」と議長は前話で言ったが、実は多くの場合戦争とはそういうものだ。少なくとも、戦いを終わらせようとして戦う。敵と味方という二項対立がある限りに於いて。例えそれが三項対立になろうとも、互いを殲滅しようとする戦いに違いはない。
「今度こそ、本当に」
その言葉に続くのはキラでありラクス、カガリ、ミーア、アスラン。
いずれもが、もう戦争は終わらせたいという思いを一度は抱いた人たち、だがそれぞれが全て当事者だ。
いずれもが武力を手にし、或いは手にさせた。
暴力の応酬の先に何を描けるというのか、暴力そのものを生産しているラクスが今更何の説得力ある言葉を放てるのか、聞いてみたい気がする。
# by gil-mendel | 2005-07-03 15:55 | seed-destiny

phase-36「やっぱり逃げるんですか、また!」

議長! その創りたい世界はDNAの完璧な解析に基づいた、最初からその役割や職業が確定されている世界ですか? 黒いよ議長、あんた本気で真っ黒だよ!
レイ、その容赦ない撃ち方…理由が「俺は許しませんよ、ギルを裏切るなんてこと!」ってどうよ。だが、ラウがあくまでも心にあるんだな。ついでにテロメア問題、解決してなかったのな。
メイリン…今回一番訳が分からんのがあんたの行動だ! いきなりアスランについていくってどういう展開だよ全くよ! アスランも、女難メンバー多々いるのについてきたのはメイリン一人かよ。意味あったのかあの女難?
アスランはさ、元々分かってたことだろう? てか、そんなことザフトに戻ろうかと思った時点で考えとけよ! 今頃脱走か! …ま、しゃーないかな、アスランだから。これからを期待してるよ、君には。迷いを吹っ切った君の活躍が見たいものだ。
アーサー、漸く理に走ってくれるかアーサー!




第36話、アスラン脱走。脱走理由に今ひとつ何かが掛けているような気がする回。




アバンは前回のまとめそのままなので省略。


議長がシンとアスランを前にしてデスティニーとレジェンドの商品説明。
以前機体のことは分からないと言っていた議長…あれはカガリ向けのお芝居ですか。
レジェンドのドラグーンシステムは空間認識能力が優れていなくても扱えるものらしい。はあ。兵器の開発方向としては正しくありますが、それで視聴者が喜ぶとでも?
インパルスを凌ぐ最強の機体、デスティニー。換装しなくてよくなっただけマシかな。
素直に喜ぶシンとは対照的に、アスランは議長に食って掛かる。
以下台詞起こし。

「アスラン。では私も訊くが、ならば何故彼らは私たちのところへ来なかった? 思いが同じというのなら、彼らがこちらへ来てくれても良かったはずだ。私の声は届いていただろう? なのに何故彼らは来ようともせず戦ったのだ。
機会がなかった訳でもあるまい。グラディス艦長も戦闘前には投降を呼びかけたと聞いている。
君の憤りは分かる。何故こんなことに、何故世界は願ったように動かないのかと、実に腹立たしい思いだろう。だがいってみればそれが今のこの世界、ということだ。
今のこの世界では、我らは誰もが本当の自分も知らず、その力も役割も知らず、ただ時々に翻弄されて生きている。
AA、いや、君の友人のキラ・ヤマト君に限って言っても、そうだな、私は実に彼は彼は不幸だったと、気の毒に思っているよ」
「不幸?」
「あれだけの資質、力だ、彼は本来戦士なのだ。MSで戦わせたら当代彼に敵うものはないというほどの腕の。
なのに誰一人、彼自身それを知らず、知らぬが故にそう育たずそう生きず、ただ時代に翻弄されて生きてしまった。あれ程の力、正しく使えばどれだけのことができたか分からないというのにね。
ラクスと離れ、何を思ったのかは知らないが、オーブの国家元首を攫い、ただ戦闘となると好き勝手に現れて敵を討つ。そんなことの何処に意味があるというのかね」
「しかしキラは!」
「以前強すぎる力は争いを呼ぶと言ったのは攫われた当のオーブの姫だ。
ザフト軍最高責任者として私は、あんな訳の分からない強大な力をただ野放しにしておくことはできない。だから討てと命じたのだ。それは仕方のないことだろう。
本当に不幸だった、彼は。彼がもっと早く自分を知っていたら、君たちのようにその力と役割を知り、それを活かせる場所で生きられたら。彼自身も悩み苦しむこともなく、その力は讃えられて幸福に生きられただろう」
「こうふく…」
「うん」
「あ、でありますか」
「そうだよ。人は自分を知り、精一杯できることをして役立ち、満ち足りて生きるのが一番幸せだろう?」
「あ、はい」
「この戦争が終わったら私は、是非ともそんな世界を作り上げたいと思っているのだよ。
誰もが皆幸福に生きられる世界になれば、もう二度と戦争など起きはしないだろう。夢のような話だがね。
だが必ずや実現してみせる。
だからその日のためにも、君たちにも今を頑張ってもらいたいのだ」

議長の望む世界、今までよりもはっきりと浮き上がってきたようだ。
これらの台詞に「最初から正しい道を!」などの言葉を重ねれば、議長が展望する社会とは、遺伝子の高度な解析により、各個人を社会のあるべき(と思われる)位置にはめ込み、駒は駒としてその役割を果たさせ、それを幸福だと思わせる社会、といえるだろう。高度な遺伝子解析がそれを可能にする、だから議長は遺伝子分野の権威なのだ。
その描く社会像は、やはり旧ソ連などの一部の社会主義社会に似ているように思われる。
その世界で皆が幸福に生きられるとは、思わない。人間はもっと自由で、もっと可変的可塑的で、もっと迷い、もっと自らを省み、もっと伸びやかでもっと揺らぐ、その弱さも含めて人間なのだ。
誰もが疑わぬ社会に、未来はない。

議長が「だが私の声は届いていただろう?」と言ったのが印象的だった。そりゃあれだけメディアジャックすれば届くよ。だが声が届くことと、それに賛同することはイコールじゃない。ましてや、別の意図がある言葉は。
この作品のキーワードのうちに、「敵とは何か」と「声を伝える」があるような気がするが、今回は後者について議長自身が触れてくれた。
カガリが「私の声が聞こえないのか!」と泣き、議長が「私の声は届いていただろう?」と問いかける。
言葉はそれだけで人を動かす力を持つ、だからどんな言葉をどんなタイミングで発し届けるか、それはとても大切なことだ。


ジブラルタル基地にザフトが集結、連合軍からも有志が続々と集まってくる。
その中の、東アジア共和国からの艦船にキサカが乗っているのは…何故だ。
アーサーが「これで一斉に裏切られたらジブラルタルはお終いですね」と言ってタリアに叱られているが…ま、ありそうな展開だわな。少なくともキサカは何かしでかしてくれると思うぞ。
(ちなみにキサカというのが大嫌いだった教授の姓と同じなので、やや抵抗がある私である)
タリアは「これで本当にロゴスを滅ぼすことができるのかしら」と作戦にやや疑念を呈している。タリアくらいかね、議長にきちんと異議を唱えてかつザフトから離れないのは。


シンとアスランを格納庫に呼んでからそう時を移していないと思われる時刻、議長のジブラルタルの私室に呼ばれた者が一人。レイだ。
ミーアを伴っている部屋ではあるが、議長とレイとの関係性は不思議で、レイは躊躇いもなく椅子に座って議長に茶を入れさせている。…いやホント、議長にお茶を入れさせられるのは多分あんただけだよ。何か奥歯に挟まる物のある、疑似親子関係、とも言えぬ、もう少し何かを間に置いた関係のようだ。
にしてもピアノがあるんですが…レイ用に準備させたんですかね、議長? どんだけ猫かわいがりなんだ。

「レイ、元気だったかい。大丈夫か、身体の方は」
議長はレイに会うたびに身体の心配をしている。例えば親が久し振りに子どもに会うとき、毎度毎度身体状況から入るのは、それは子どもに何らかの持病があって気がかりだからだ。レイはテロメア問題が解決していないクローンで発症が間近なのか、それとももっと深い病を持っているのか。

「ロドニアのラボでは辛い目に遭ってしまったな…いや、私も迂闊だった」
「いいえ、ギルのせいではありません、大丈夫です。私も、自分があんな風になるとは思っていませんでしたので、驚きましたが」
議長の意を受けてロドニアラボへ潜入したことが改めて明確にされた訳だ。議長、本気で迂闊だったと思ってますか? 半ば、反応が見てみたいと思ってたりしませんかね?
にしても、レイは議長本人の前でもギル呼びですか。一人称代名詞は私…改まっているのかそうでないのか。

彼らの会話は続く。ミーアのいる部屋で話すのは、駒であるミーアを疑っていないからか。
「そうか、やはりだめかな、アスランは」
「思われた以上に彼のAAとフリーダムに関する思いは強かったようです」
ちょっと極端なほどにキラキラ言ってますからね。てか、ここまでキラしか頭にない人間だとは、議長の想定外ということですか。

「彼もまた戦士でしかないのにな、余計なことを考えすぎるんだ。それが折角の力を殺してしまっている。キラ・ヤマトのせいかな。彼と出会ってしまったことは不幸と言うことか、アスランもまた」
アスランもまた、とはどういうことなのか。誰を想定しているのか? それは例えば、ラウを?
少なくとも29話で議長はキラとラクスを天敵のように扱っている。議長の描く、固定された社会を壊す者として。「それが何故、彼と出逢ってしまったのか」と議長が残念に思う、だがそれも一つの、運命なのだ。

「だが彼はもういない、ならば」
「いえ、生きています。…彼が殺さない限り、胸の中では」
「はは。それはやっかいだね。罪状はある、あとは任せていいか」
「はい」
議長、キラの悪運の強さを読み違えておられるようで。それが大きな誤算となってその計画を狂わせていくのだろうな。
人の心は読みきれない、人の運命をDNAで読み解くことはできない。

胸の中で生きている人、それはレイ、あんたにとってはやはりラウなのか。自分の中で生き続けている人があるから推測がつくのか。
19話の時点ではもっとうち解けた関係だと思っていたが、レイは議長に対して何か含むものがあるようだ。それが何なのか、気に掛かる。

議長の机に並んでいた写真はルナマリアがタリアの指示を受けて撮られたものだが、それが今の時点でここにあるのは…ついでに、一枚落としているのは。
前後の描写から見てわざとではないのだろうが、わざとらしいな。
タリアがデスクに向かう描写があったので、タリアがレイに持たせたか。
にしてもルナマリア、偽ラクス発言を抜いておいて幸いでしたな。議長が
聞いたら確実に君も処刑一直線でしたよ。

その写真を持ってアスランにもっと頑張れと詰め寄るミーア。議長に認められることが議長に捨てられない道であると。
…何か既視感を覚える。そうやって生きてきた過去に重なるからか。
それに対してアスランの台詞。
「流石議長は頭がいい…俺のことをよく分かって…。確かに俺は、彼の言うとおりに戦う人形になんかはなれない! いくら彼の言うことが正しく聞こえても!」
議長の方が明らかに先手を打ってきていますからね。ここで逃げなければ確実に殺される。最低限でも拘束→軍事裁判→処刑でしょうな。罪状はAAあるいはロゴスとの内通ということで書類が準備されるのだろう。4者会談は決してそんな意図で行なった訳じゃないが。
議長の読み違い、それは人は人形のままでいいと必ずしも思わないということ。出会いは時に、人を、世界を変えるということ。

ミーアに一緒に行こうと手を差し伸べるアスランだが、ミーアは自分は駒のままでいいと主張。
「あたしはラクスよ! ラクスなの! ラクスがいい!」
…多分それまで、あまり日の当たる人生ではなかったのだろうなと思われるミーアの素顔が一瞬映る。
いつまでもラクスとして役割を果たし続けられるはずもない、いつかは用済みとして亡き者にされる、だがそういう現実から逃避したくなるのもまた、人だ。
再びアスランの伸ばした手からミーアは身を引く。諦めてアスランは去っていく。
にしてもミーア、整形しすぎ。胸は以前から大きかったようですが。


アスランは保安兵に追われて何を考えたかメイリンの部屋へ。偶然、というわけでもなさそうだ。ルナマリアのところなら、赤服が脅されて逃がしたという言い訳はつかないだろうし、シンとは関係悪化中だし…しかしメイリンか。今まで描写が少なすぎて、そこに逃げ込む胸中が今ひとつ分からんよ。
それを助けるメイリンはもう一つ分からん。視聴者的には服を脱ぐメイリンとかタオル一枚で頽れるメイリンとか見られて喜ぶべきなんだろうが、ちょっと興味があった程度の男をそうまでして逃がしたりするかね、普通?
さらにはホストに侵入して離れた位置で警報を鳴らし、その隙に乗じて格納庫へアスランを連れて行く。
もうなんか、ちょっと己に酔っているとしか思えないメイリンの突発的行動に、やや茫然。


ミネルバにいるタリアに連絡を取る議長。
いきなり「アスラン逃走」と言われて驚くタリア。そりゃあそうでしょうね、議長とレイが殺そうとしているなど知らぬわけだから。
「レイやシンを借りるかもしれん」と言われて「何故です?」と聞き返すが「だからまだ分からんと言ったろう」と突っぱねられる。…すみません、殺す気満々ですとは言えません、流石に。
だがこの状況でアスランを殺すことに議長がどんな理由をつけてくれるのか、楽しみではあるな。

暴走する車を見ていたのはレイ。メイリンが運転しているのを見て明らかに事態を把握、しかしレイは一人で彼らを追ってくる。メイリンを含めた射殺となると部隊がいてはままならぬからか。…怖いが正当な判断だ。

アスランは格納庫まで辿り着き、残るメイリンの身を案じる、そこへ銃声。…アスランの反射神経がなかったら確実に死んでるわな。
一人で現れたレイは「やっぱり逃げるんですか、また! 俺は許しませんよ、ギルを裏切るなんてことを!」と叫んで銃をひたすら撃ちまくる。撃ちすぎだよあんた。撃つのになんの躊躇もない辺り、怖い。
…ええと、レイ、問題なのはそれじゃないと思うんですがね。ザフトを裏切るよりも議長の信頼を裏切ることの方が問題だと? その辺り、レイという人間の幼さということだろうか。年齢よりも遙かに老成した言動をとるかと思えば、議長のことになると幼児なみか。その辺りのアンバランスが今後どう影響してくるか。

弾切れになったと思われる瞬間にアスランが反撃、レイは一度身を引いて再度出て撃つが、銃をアスランに弾かれる。流石アスラン、射撃の腕は一流だね。てか、レイが闇雲になりすぎなのでは。無駄弾撃つのは、誉められたことではないような気がしますぞ。
メイリンを連れてグフのコックピットへ上がるアスランに、再度レイが銃を撃つが当たらず、銃をあきらめたレイはシンに連絡を取ってデスティニーとレジェンドを準備させる。

アスランは「AAを探す」と主張。「沈んじゃいない…きっとキラも」と。
不沈艦ですからね、AAは。キラも不死身だし。前作でその辺り、大分学んだということでしょうかな。

レジェンドに乗り込んだレイはなんの躊躇いもなく起動させ、まず一番に議長との回線を開く。…待て。議長は先刻まで議長の私室にいたはずでは? この回線どうなってるんだよ全く。レイ専用回線か!
てかさ、レジェンド、アスラン工作がうまくいかなかった折りにはレイのものにという約束ができていたんじゃないかと思えてならない。いくら一般人に使えるようにしたっていっても、あのドラグーンは流石にちょっと人を選ぶわな。

デスティニーを起動させるシン。ええと…GUNNERY UNITED NUCLEAR-DUETRION ADVANCED MANEUVER って…核搭載かよ! まずいじゃん、一応核は使っちゃいけないことになってるんじゃないの? それとも、連合と開戦した時点で条約の一切は無効ってか?
「油断するなよ。追うのは、アスラン・ザラだ」
「え? アスランって…そんな!」
迷わなければアスランは強いですからねえ。気をつけてくれたまえ、シン。てか、余裕があればアスランの声も聞いてやってくれたまえ…言いたいことが多々あるだろうから。てか、アスランが何もシンに説明しなかったらそれはそれで、元上司としては失格だと思いますね。どうして自分が追われているのか、自分が見つけた真実とは何か、逃亡するのもいいがそれを主張しておく必要がアスランにはあるはずだと思う。ザフトから逃げる経験二度目ともなれば、そのくらいの知恵はあって然るべきだろう?
# by gil-mendel | 2005-06-26 11:45 | seed-destiny

phase-35「正直、困ります」

議長、お願いだからその真っ黒すぎる表情と演説を何とかしてくれ! 白のクイーンの動きは予想の範疇外か? アスランの様子に全く動じてないところを見ると、脱走も含めて織り込み済みか?
レイ…ラウの仇を討ってほしかったのか。議長に従うのにはラウのこともあるようだが議長の言う「戦争のない世界」を実現するためにはあらゆる事に手を染めて怯まない、な感じか。…にしても今回君も真っ黒すぎるよ! とりあえず肩に手を置くのはやめとけ!
アスラン、ミネルバの中で「キラもAAも、敵じゃないんだ!」は拙いだろう。場を読めよ、少なくともさ。ホント、「正直…困ります」だよ全く。
キラは、核停止ボタン押す余裕があるならそのまま死んどけ! 医務室に入るほどの怪我なんかしてねえじゃねえか!
にしても…相変わらず既視感の強いのは何故なんだ。議長の視線やアスランの扱い、レイのシンへの言葉など、全てに身を切られるような既視感が拭えない。



第35話「混沌の先に」。誰もが振り回されるその混沌の先に見えるのは、しかし未だ、混沌。



アバンはAAが無事だった理由を少々。
沈んだと見せかけて逃亡、戦術としては正しいですよマリューさん。あの大爆発は何だったのかと思えば…第一エンジンのみですか。ちょっとでかすぎません?
フリーダム、やや達磨になりつつ沈みながらキラが押しているのはエマージェンシーボタン…かと思ったら「NUCLEAR REACTOR CUT OFF」となっていて、フリーダムが核誘爆するのを避けたらしい。この世界の核は便利だねえ。そんなに速く制御できるわけないだろ! ニュートロンスタンピーダーでも照射されてしまえ!
さらにキラを助けにカガリがルージュで出動。タイミングとしては、マリューに先週「駄目よ!」と言われた直後に出動してないと無理じゃないかと。
全く、主人公補正がこうも効いているとうんざりしますわ。

アスランは爆発を見て、「AA…キラ…、そんな、馬鹿なっ!」と大声で叫んでいる。
ザフトの服着てそこにいるんじゃなきゃ構いませんが、今そこでそれはやめろと。ていうかカガリを頼むから思い出せと。



さて、ザフト軍はAA撃沈とはやはり思わぬ様子。まあね、そりゃそうでしょう。

タリアは小さく溜息をつく。それをメイリン横から不思議そうに見ているアーサー。
フリーダム爆発のときにもタリアは驚愕の表情を見せていたから、やはりみすみす議長の思惑通りにAAを落としたくはなかったのだろう。今後の展開に期待したい。
このまま離反することなくザフトを正してくれる存在は、もうタリア以外にない気もする。


帰投したインパルスからシンが降り立つ。ミネルバクルーの多くは既に集まって賞賛を投げかけるべく待ち受けていて、褒め称える。
そこにレイとルナマリアも加わる。
「シン! 凄かった、あんな戦い方びっくりしちゃったわよ」
「そう?」
「よくやったなシン、見事だった」
レイはそう言って手を差し出す。レイが人に握手を求めたのを初めてみたような気がするな。
「ありがとう。レイのおかげだ」
「やり遂げたのはお前だ」
シンはレイに誉められるのが一番嬉しいようだ。それだけレイが巧く飼い慣らしていると言うべきか? レイの人を誉める笑顔は、あくまでも、優しい。

離れたところでアスランがぽつんと立っている。そこにわざわざ向かっていくシン。
「仇は取りましたよ?」
そこでレイが厳しい表情とともに、クルーゼの最期を思い浮かべる。キラに殺された最期の、笑顔を。
やっと記憶力のあるキャラがいたよ! てか、キラをクルーゼの仇だと認識していたんだな、やはり。あれだけキラキラ連発するアスランを自分の仇を賞賛する奴として殴らなかっただけ誉めてあげよう。その仇を討ち果たすためだけにレイが動いているとは思わぬが、議長の思いの中でできれば果たしたい願いだったのだろう。
クルーゼは、けれど仇など討ってほしかっただろうか。人の業、人の弱さの環に自分の延長であるレイがいることを、望んだのだろうか。クルーゼは、笑って、死んだのだ。
仇を討ちたいと思うのはいつも生き残らされた者だ。大切な人を助けられなかった自責、その悔しさと哀しさを晴らしたいと思う思いが復讐を産む。けれどそれは、転嫁でしかない。
「あなたのもね」
シンが取ったと思っているのはステラの仇なんだろうが…まだキラが生きていると知ったら怒り狂うだろう。
アスランはシンの挑発に乗ってつかみかかり、「キラはお前を殺そうとしていなかった!」とか何とか怒鳴りつける。シンは当然見下して反発、口論になったあげくにアスランは今度は握り拳でシンを殴り飛ばす。…成程、以前平手で叩いたのは手加減してたってことで? てかさ、ザフトで議長に従っている時点であんたのその発言は正直間違ってるよ。
シンを受け止めたレイの台詞が正論でキツイ。
「アスラン、シンの態度に問題があったことは認めます。如何に上官といえども今の叱責は理不尽と私も思います。AAとフリーダムを討てというのは本国からの命令です。シンはそれを見事に果たした。賞賛されても叱責されることではありません」
「うるさい! あいつに討たれなきゃならない訳などない!」
「はあああ?」
「キラもAAも、敵じゃないんだ!」
「何いってんですか、あれは」
「敵です!」
「!」
「あちらの思惑は知りませんが、本国がそうと定めたのなら、敵です」
「レイ!」
「我々はザフトですから。…何が敵であるかそうでないかは、陣営によって違います。人によっても違う。相対的なものです、ご存じでしょう? そこに絶対はない。我々はザフトであり、議長と最高評議会に従うものなのですから、それが定めた敵は敵です」
「お前!」
「あなたが言っていることは個人的な感傷だ。正直、困ります」
正論だ、正論過ぎる! 言ってやれ言ってやれ。個人の感傷だけで軍に入ったり出たり逃亡したりする輩に、言ってやれ!
軍人としてレイの意見は正論だ。何故ザフトがザフトとして成り立つのか、それはそういう軍としての正論が機能しているから。組織に属するとはそういうことだ。「何が敵であるかそうでないかは陣営によって違う」、組織として動くならば我々は常にそうあらねばならないだろう。
だから、私情を持ち込み「あれは敵ではない」と言い出す輩は「正直、困」る訳だ。
アスランはザフトに戻ることの意味を、やはり軽く考えていたのではないかと思う。力がほしい、けれどそれは、ザフトという組織体に属することによって得た力なのだ。ザフトを全肯定するわけではないという言い訳のためにフェイスというバッジをつけて余計に自分の足場を不安定にし、さらに混迷を深めた愚かなアスラン。
レイの軍人としての正論に触れて、自分が何をしようとしていたのか、ザフトに戻ったことから考え直してほしい。最初の願いは、争いのない世界を、だったはず。軍という存在とその願いとが甚だしく遠いことに、気付け。



AAの消えた海を眺めるタリアとアーサー。二人の車間距離が5㎝程度なのが妙に気になる。タリアは仁王立ちとでもいう感じで、決してAAが消えたことを喜んではいないようだ。その直ぐ脇に立つアーサー…両者の距離が近すぎるのは、何かあったか? まさかね。


ザフト軍事ステーションを行くイザークとディアッカ。台詞ありで出てきたのはもう随分昔じゃないか?
「笑い事ではないわ! 実際大変なことだぞこれは。ただ連合と戦うより遙かに!」
「イザーク」
「少しは自分でも考えろ、その頭タダの飾りか! ふん!」
「お前の頭は今に爆発するぜ」
「五月蠅いっ!」
年がら年中イザークは怒ってばかりのような気がするが…議長演説の際に難しい顔をしていたのは議長を疑っていた訳ではなかったのか? 残念だな。どうやってロゴスを倒すかの方法論を考えていたとは。あのおかっぱ頭が爆発する様を見てみたい気がする。アフロヘアになるだろうな。
まだディアッカの方が冷静だ。いいコンビということなのだろう。
彼らはザフトの中で議長の言葉の意味をより深く考え、その謀に気付いてくれる位置にいるのではないかと思う。伊達に先の大戦を経験してはいないだろう。
で? シホはどうした?


議長の思惑通り、世界各地でロゴスメンバーをナチュラルの一般人が襲撃する事態が多発。ひどいのは戦車まで乗っ取って襲撃している。あれ、ザフトの支給品か?
議長は自分は方法論を示した訳ではないと主張。
「私だって、名前を挙げた方々に軍を送るとか、そういう馬鹿な真似はするつもりはありません。ロゴスを討つというのはそういうことではない。ただ、彼らの作るこの歪んだ戦争のシステムは、今度こそもう本当に終わりにしたい」
じゃあどういうことがロゴスを討つことだよ! ま、それを今言ってしまえば議長の責任が問われることになる訳で。
自らの手を汚さずしてナチュラルがロゴスを倒すように仕向ける、議長の煽動はなかなか正しい。
「コーディネイターは間違った危険な存在だと、分かりあえぬ化け物だと、何故あなた方は思うのです。そもそもいつ、誰がそう言い出したのです。
私から見れば、こんな事を平然とできるロゴスの方が余程化け物だ。それもこれも、ただ我々と戦い続けるためだけにやっている。
己の身に危険が迫れば人は皆戦います。それは本能です。だから彼らは撃つ、そして撃ち返させる。私たちの歴史はそんな哀しい繰り返しだ。
戦争が終われば兵器は要らない。今あるものを壊さなければ新しいビルは造れない。畑を吹き飛ばさなければ餓えて苦しむ人々に食料を買わせることはできない。
平和な世界では儲からないから、牛耳れないからと、彼らは常に我々を戦わせようとするのです。
こんなことはもう本当に終わりにしましょう。
我々は殺し合いたい訳ではない。こんな大量の兵器など持たずとも人は生きていけます。戦い続けなくても生きていけるはずです。
歩み寄り、話し合い、今度こそ彼らの作った戦う世界から共に抜け出そうではありませんか」
大量の兵器を製造し現在戦争遂行中のプラントの指導者の言葉でなきゃね。
本当に終わりにする、それは何によって? 議長の望む世界とはクルーゼの望んだモノとはまた違うようだが、しかしそこは果たして此岸なのか?
議長のやろうとしていることは世界の荒療治のようだが、それで本当に誰もが納得する平和が来るのか?
「初めから正しい道を」歩もうという議長の目指す世界は、ナチュラルとコーディネイター共通の敵を描き、それを倒す戦いに世界を突き動かすことで、違う次元の「平和」をもたらそうというもの。
議長の言葉にレーニンの演説を思い浮かべたのは私だけではあるまい。民族対立を階級対立で覆い、「独占資本」という共通の敵を描いてそれへの戦いを呼びかけたそれを。その構想が破綻したことは、世界が知っていることだ。
議長が望む世界は確かに平和なのかも知れない、けれどそこには確かに、一つの色しかないのだろう。
あなたがほしいのはどんな平和なのか、あなたがほしいのはどんな世界なのかと、問いかけられている気がする。
「未だ見つからない」、それは今の世界に住む私たちがそうであるように、確たる答えが出ないまま、彷徨っている世界そのままなのだ。だが、いつまでも「未だ見つからない」ままではいられない。答えを出さねばならないときに答えを出せなければ、カガリやアスランやキラのように、混迷に陥って、為すべきことが成せないのだ。



議長の演説の後ろでラクスが何やらMS作っているっぽいのですが。エターナルでMS製造中、それを見せてもらっているラクス。ドムっぽいなあ。
これは流石に議長の想定外だと思われ。
議長の一番の失敗、それはラクスを狙うのにあんなちゃちな暗殺部隊を寄越したことですかね。この世界のジョーカーというべき存在なんだから、もっと本腰入れて掛かる必要があったと思いますよ、議長。

ロゴスメンバーは次々に襲撃され、ジブリール宅も危うい。
猫を蹴飛ばしジブリールは逃げてゆく。猫は大切にね!


不沈艦AAにて不死身な人々。
医務室で横になっているキラとネオ(ムウ)のところへカガリとミリアリアが。ミリアリアは何故かカメラを手にしている。キラの負傷と生存を世界に伝えるつもりか。
フリーダムをおシャカにしてしまったことを辛く思うキラ。…てかさ、理由はラクスにもらったMSを駄目にしちゃった、ラクスを守ってやれないってただそれだけなのか? 議長の方が余程世界人類の先を考えてるぞ全く。
「インパルスにやられたって? ざまみろ、へっ」
ネオ…仮面被ってる時もそんなキャラでしたかね? あれには人格抑制装置でも付いてたのか。キャラ違いすぎ。
そこへさらにマリューさんが。軽口のネオがマリューさんを見て一瞬詰まる。記憶が戻った訳でもないようだが、事情をやや察したか。
「ムウ・ラ・フラガってのは、あんたの何なんだ」
「…戦友よ。…かけがえのない。でも…、もういないわ」
ムウとしての記憶をどうにか取り戻させようという努力がAAには見られない。この状態を受け入れよう、という気持ちにマリューがなったということなのか。
それはそれで、哀れなことだ。だが、しかし、そういう答えを出したマリューの哀しみを、肯定したいと思う。



プラントにて、議長がミーアを引き連れてシャトルに乗り込む。
「旗だけ振ってあとは後ろに隠れているような奴に、人は誰も着いては来ないだろう。ジブリール氏の行方も未だ分からぬが。
しかしすごいものだね、人々の力は。恐ろしくもあるよ。こちらが手をつかねているうちに、こんなことにまでなってしまうとは」
いやいや議長、あなたが完璧煽った結果ですから! 手をつかねているんじゃない、ナチュラルをそう仕向けただけのことですから!
人が人を憎むエネルギー、それを対コーディネイターから対ロゴスに向け返させただけのことだ。その先に、戦争のない未来があると、議長は本気で思っているというのだろうか?

シャトル内でウィラード隊からの報告を受け取る議長。
成程ね、白のクィーンはラクスでしたか。そう、油断していると白のクィーンは着々とドムトルーパーとか作っちゃいますから! 全く、「プラントを見に行ってきますわ」とか言って、やってたことは兵器製造ですかラクス様。強奪じゃなくて自力で作ればいいんだってか?
ラクスさえいなければ、議長の計画はある意味正しく軌道に乗っていったのかも知れない。
しっかし、議長が黒の駒を持っていた側だとはな。まだまだチェックメイトには至りませんよ。クィーンは最強の駒、そう決まっているじゃないですか。


さて、漸くジブラルタル基地に入港するミネルバ。
集結するザフト軍を見て嬉しそうなアーサーを見て溜息をつくタリア。
「『剣を執らせるには何よりその大義が重要である』。誰だったか忘れたけど、指揮官講習の教官が言ってた言葉よ。ま、当たり前の事ね。
討つべき敵と、その理由が納得できなきゃ誰も戦えないもの。
今私たちにははっきりとそれが示された。
有難い事かしら? 軍人としては」
皮肉気なタリアさんには、議長の意図がやはり見えているのだろう。大義がなくては人は戦えない、逆に言えば、大義を作り上げるのは人を戦わせるため。
「大東亜共栄圏」とか「八紘一宇」とかいった虚言が必要だったのは、人を戦わせるため。
議長が示したのはより確固とした、しかし方法を示さずゴールも示さぬ、大義だ。その戦いはある意味永遠に続くだろう。ゴールも方法も見えないのだから、どうしたらロゴスを倒したことになるのか、人には分からない。常に戦争状態を継続するもう一つの方法が、議長の掌の上にある訳だ。それは軍産複合体の望む戦争の継続と、どう違うだろう?
ザフトはロゴスを倒していないと主張しさらに軍備拡大を続けていくだろう。世界に平和をもたらすために最強の軍備を持ち続ける、大きな矛盾に見えてその矛盾は衝かれにくい。


待機室にてシンとレイ、ルナマリア。
シンは完全にレイに心服している感がある。
「ジブラルタル入って、次はどうするんだろうな俺たち」
「さあな。だが、先日の議長の言葉に添った形での作戦が展開されることは確かだ」
「うん」
「ロゴスを討つなんて、議長ご自身だって難しいと仰ってたのに」
「でも、どうしてもやらねばと思われたのだろう、あの悲惨な状況を見られて。
シンは気が乗らないか、対ロゴスは」
「いや、そんなこと。議長の言葉聞いて、俺、凄く感動したよ。
難しいって言ってたのに、議長やるんだ、諦めないんだって。それが本当に戦争を終わらせる、唯一の方法だから。だったら俺だって、どんな敵とでも、戦ってやるさ」
レイがシンの肩に手を置いて、微笑みかける。思う手の内にすっぽりと収まってきたシンという駒に見せる、笑み。
レイもプレイヤーなんですかね。
しかし、レイが議長に殉じようとしているのには、ただの盲信というよりも、戦争とそこから生じる様々な悲惨はもう繰り返させないという思いがあるように思えた。
自分のような辛い思いを人にさせたくない、そんな悲惨はもう終わりにしたい、だから敢えて手を汚す、と。
それはある意味、とても切ないものかも知れない。



シンとアスランを議長はジブラルタル基地内部の工廠へと呼び出す。
「さて、と。これが最後のカードとなるか否か」
そう呟く議長の眼差しは、明らかに企みを持つ腹黒いものとして描かれていて。
当然レイからアスランの態度については逐一情報が入り済みと考えれば、議長はそのアスランに見せる兵器でアスランがどんな態度を取るかも予測済みだと考えられるだろう。
暗い部屋に戻り俯きながら視線を上げるレイの顔に、冷たい決意と議長に相通ずる企みが、見える。

シンとアスランが議長の前に連れてこられる。アスランは酷く警戒気味で、シンは明らかに議長に傾倒している様子。
「私も君たちの活躍は聞いているよ。色々あったがよく頑張ってくれた」
嘘だろ、議長。アスランの活躍なんか聞いちゃいないだろうに。
議長がシンに引き続きアスランに握手の手を差し出す。しかしアスランはその手を直ぐに取ろうとはせず、疑いの眼差しを向ける。それに対して議長が返す視線がいい。言葉にするなら、ふうん? 君は私を疑っているね?な感じで。
議長の手を漸く取ったアスランに、ミーアが飛びつく。ミーアはアスラン対策要員なんですな。しっかし議長、
「さて、もう知っていることと思うが、事態を見かねて、遂に私はとんでもないことを始めてしまってね」
いや違う違うから! 議長は別に何かを見かねた訳じゃないから! 最初からこうなるように順々に手を打っていった、ただそれだけだから! 最初からあんた真っ黒ですから議長!

「また話したいことも色々あるがまずは見てくれ給え。もう先程から目もそちらにばかり行ってしまっているだろう?」
シンの、というか視聴者の目がね。
「ZGMF-X42S、デスティニー。
ZGMF-X666S、レジェンド。
どちらも、従来のものを遙かに上回る性能を持った最新鋭の機体だ。
詳細は後ほど見てもらうが、恐らくはこれが、これからの戦いの主役になるだろう」
議長が何を考えてアスランにこの機体に乗せようとしているのか、或いは乗せるフリをしているのか、分からない。
プロヴィデンスの流れをくむ機体だと見れば分かるだろうし、現状のアスランが素直に自分の側につくとも思ってはいないだろう。この機体をAA側にアスランごと流すことによって何かを起こそうと考えているのか?
「議長、それは!」
と語気を荒くしたアスランから議長が悪い嗤いとともに目をそらす。
「君たちの、新しい機体だよ」
…………議長。明らかにアスランのノリの悪さが分かっていてそういう態度を取っている訳ですか。レジェンド、乗った瞬間に自爆するようにできてたりしませんよね? まあそれは冗談としても、レジェンドをアスランに渡すことで議長が受けられる利益とは…なんだろう? AA側がまたもや強い力を振っているという非難の対象にすることができるとでも? ううむ、議長の真意は次週明かされるようですから、それを待ちますか。



次週は「アスラン脱走」。グフで逃げるようですが…さて彼は、何を知って何処へ逃げるのか。
楽しみだ。
# by gil-mendel | 2005-06-19 20:44 | seed-destiny



議長至上主義。黒くて結構!

by gil-mendel
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