ちっちゃな種が暮らしいい。

phase-44「本物なら全て正しくて、偽者は悪だと思うからか」

議長ーーっ! プラント潰しまであんたの策の内とは、恐れ入ったな! 全て手の内と言わぬ気に、要所要所で密かに笑い、知っていた素振りを見せずにレクイエムに怒りの演技か! 議長真っ黒だよ議長!!! ここまで来られて本当に嬉しいよ! だが気をつけ給え、側近の一人が明らかにあんたの黒さに気付きかけているぞ!
レイ、駄目だ、泣きそうになったよ。名言だな。しかし君も、レクイエムの存在を知っていたな?
ラ、ラクス! 君にその台詞を取られるとは思っても見なかったよ! それは私の台詞だっての! まあ議長の計画に対する君と私の見解は同じということだ。ははは!
キラ、それが君の本質か! はっきりしたよ、所詮君は、所詮君らは、暴力の応酬の中でしか生きられないと! 戦いの連鎖こそが人なのだと、君たちは言うのか。それがこの物語の答えだとしたら、何とお粗末な、人を絶望にのみ叩き落とすものだろうか!!
てかさ、可笑しいだろう! 叩き潰されたのはプラントなんだぞ! 普通に考えればAAとして、ジブリールを逃したことの責任を感じ、ジブリールを撃つべきだと思うのではないのかね?!




第44話「二人のラクス」。真と偽、本物だから正しいのか、偽者だから悪なのか? …私はそれはどうでもいい。問題は、何を為したか、だ。


アバンは先週の復習から…と思ったらラクスとカガリの画面に小さくミーアを映し出してあったよ。うへ。汚ぇな。ミーアの困惑がバレバレじゃんか。
そしてラクスの胸はえらく大きくなった気がしますが…何ですかね、TV映りがいいように? それともやはりミーアに対抗するためパッドで対抗ですかね? とすると、ラクスはミーアコンサート映像をじと目で研究してたんでしょうか。
この映像を見ていたマリューさんと名無し男、二人してさっぱりした顔で珈琲飲んでるんですが…あああれは虎の秘蔵の珈琲だったりするんだろうな。…虎気の毒。
アスランとメイリンも医務室で見ているが、メイリンがやや困惑顔なのに比してアスランはすっぱり割り切れたご様子。
イザークやディアッカは他のザフト兵と共に見ているが、ディアッカが驚いているのにイザークは困惑の気配なし。どっちかっつうと本物が出てきて嬉しいんですかね?
ミーアは恐らくはその場で渡されたカンペを見てしまい、「わ、私は」と言いかけた上にラクスに「私はデュランダル議長の言葉と行動を支持しておりません」と被されて慌てる。そうだな、声も姿も同じで映像を出されたままじゃ、ミーアが言ったように取れなくもない訳だ。汚ぇぜ、ラクス。
ミーアの様子を見ていたアスランが、行く末を心配してか、憐れむように眉を顰める。ラクスを演じることに失敗したミーアの、その先は、プラントにいる限り絶望的なものだろうから。それは自分がそうなるだろうだったそのように。
シンが驚いたように世界中で驚きが広がり、プラント評議会でも混乱が広がる。
議長は急ぎミーアの映像を止めさせるが、既に時は遅く。
「戦う者は悪くない、戦わない者も悪くない。悪いのは戦わせようとする死の商人ロゴス…議長の仰ることは本当でしょうか?」
「我々はもっとよく知らねばなりません、デュランダル議長の真の目的を」
ラクスは答えない。ラクスは常に問うことしかしない。ラクスは己の真の目的を示すことはない。それが一番論破されない術だと知っているからだ。
問うこととは結局、相手に促す行為なのだ。答えを、或いは考えることを、要求する。
問いかけから開ける新しい世界というのもあるだろう。実際、そうやって人は新たなものを得てきたのだ。だが、ラクスの問いは自己を問わない問いであるが故に、かつそれが絶対正義と描かれるが故に、視聴者の心を上滑りしていく。



ラクスが二人現れたくらいで騒然とする地球とプラント。
議長、本当にあの役立たずな「特殊部隊」を送ったことが悔やまれますな。
と思ったらコニールが出た。元気そうで何よりですわ。
ザフトに疑惑を持つ人たちの中でコニールが叫ぶ。
「みんな何言ってるんだよ、ザフトは悪い奴らじゃないよ! 悪いのはロゴスと連合なんだ、オーブなんかそっちの味方じゃないか!」
「そうだ、誰が俺たちを苦しめたのか、そして、誰が解放してくれたのか、みんなもう忘れたのか!」
もっともなお言葉。議長が何を計画していようと、実質的に彼らに開放をもたらしたのはザフトなのだ。
きっとこの物語の最後に同じことを言ってはくれないのだろうと思うと、寂しくはあるが。


議長はミーアを同道しないために別のシャトルを用意させる。ま、正しい選択だろうね。今同行すれば議長の立場が更に危うくなるというものだ。
ミーアは自分の失敗に怯える。ラクスが介入したことは彼女の責ではないが、その後の対応に失敗したことは彼女にも責がある。
振り向いた議長の冷たい目!! いいねえ、やっぱり議長はそういう目をしてこそ議長だよ! その眼が明らかに嘘っぽく柔らかくなり、議長は怯えるミーアに「姿を隠す」よう指示。あの…後ろにいる女の人、ものっそ怖いんですけど。鞭持ってそう。
「決して悪いようにはしないよ。君の働きには感謝している。君のおかげで世界は本当に救われたんだ。私も人々も。それは決して忘れやしないさ。だからほんの少しの間だよ」
永遠にサヨウナラっぽく聞こえるのは何故ですかね、議長。そうだな、例えば片手で引き金を引きながらもう片手で首根っこを掴まえて言う感じ。
ミーアは雨の中脱走するアスランに言われたことを思い出す、だが時既に遅く、自分が用済みになったと知る。
いつかはこうしてミーアを捨て駒にする、当然議長はミーアを立てた時から準備していたのだろう。思ったよりやや早くその時が来ただけに過ぎない、議長を見ているとそんな気がする。
だがミーアをただ捨てるだけではない、もう一つ罠として最後に利用しておくのだろう。ああどこまでもトラップばかりの男だよ議長あんたは!


議長はシャトルで要塞メサイアへ。救世主に自らを準える、議長らしいというべきか。…ラスボス感がやや無理矢理っぽい。
「いやしかし、色々なことがあるものだ」
全く、この終盤に来てな! つか、今まで色々起きなさすぎただけだがな!
「だがもう遅い」
あと6話で纏めきるにはな。2~3クールの無駄な女難だけでも省いておけばどれほど尺が稼げたことか!
「既にここまで来てしまったのだからね」
そうだよな、もう44話なんだよな。色んなことが真っ当な説明がされないままに終わっていく、それが心配だよ何よりも。
いや、揚げ足取りはさておき。
「既にここまで来てしまった」とは、議長の計画が所々破綻しながらも概ね予定通りに進んでおり、世界を己の手に把握するその瞬間がますます近づいた、ということだろうか。
レクイエムまで織り込み済みと、議長の言葉はそう聞こえた。


ミネルバにて、ラクスが二人ということを知った兵たちが驚く中。
レイがひどく怒った顔をして、そこから無言で立ち去る。と、それを追ってシンが、さらにルナマリアが着いていく。
シンはレイに最近依存しているようだ。レイが立ち去るのに自分が着いていかない選択などないようにみえる。その依存が、後で響いてこなければいいのだが。

タリアが艦橋へ。
それにアーサーが問おうとする、だがタリアは遮断。
「訊かないでよ、私にだって何が何だか分からないわ」
本当ですかタリアさん。まあ例え知っていたって言えるような面子じゃないですがね。特にアーサー……こいつに機密を漏らしたが最後、全世界に知れ渡るような気がする。
「ま、一つはっきりしてるのは、我々の上官はラクス・クラインじゃないってことよ。彼女から命令が来る訳じゃないわ」
お! いいねえタリア。こういうところ、やっぱ大好きだよ!

そこに艦隊司令部から通信が。ミネルバを宇宙へ上げるべく、指令が下る。…まあ明らかに議長の思惑だわな。
タリアさんが俯いて唇を噛む、議長に翻弄されることへの怒りからか。
最終決戦は宇宙でと、ガンダムである限り相場が決まっているのだから、如何ともし難いのだよタリア。
しかし、この指令のタイミングは少し妙だ。レクイエムを撃たれる前にミネルバを宇宙へ上げることを決めている、それは何が起るか議長が知っていたためではないか。ジブリールが宇宙へ上がったことで起きること、それを想定していたから、このタイミングで自分もプラント首都ではなくメサイアへ上がり、手駒であるミネルバをも宇宙へ上げる指示を出した、と
……穿ちすぎですかね?


ずんずんと先に行くレイをシンが呼び止める。だがレイは歯牙にもかけぬという雰囲気で、一応立ち止まる。
シンが一大決心をしたという顔で、レイにラクスについて尋ねる。それはまるで、他に自分を導くものはないといわんばかりの様子だ。レイは本当によくシンの手綱を取っているよ。
「あのオーブのラクスクラインのこと、レイはどう思う」
「どう、とは」
レイ、怖いって! その質問が許せないとばかりの声を出すなって!
「いや、その」
レイの剣幕にたじたじとなるシン。代りにルナマリアが、ラクスが二人情報を盗み聞いたことを思い出しながらフォローを入れる。
「どっちが、本物って話?」
「……何だお前まで、ばかばかしい」
背を向けて歩き出すレイが、いかにもだ。歩きながら吐き捨てる。
「そうやって我々を混乱させるのが目的だろ、敵の。
恐らく皆、そうして真偽を気にする。お前のように。なかなか穿った心理戦だな」
ルナマリアが少し下を向くのは、やはり当初から偽者を用意したのはプラントだったのかと思ったからか。…てか、ルナマリアが一々驚いたりしているのがちょっと腑に落ちないんですが。何故?
「だが何故かな。何故人はそれを気にする」
シャトルの中で俯くミーア、キラやカガリと明るく喋るラクス。ミーア可哀想だよミーア。
「本物なら全て正しくて、偽者は悪だと思うからか」
その言葉に被るのは、アスランとメイリン、名無し男とマリュー、そして、メンデルで仮面を飛ばされ素顔を曝された、ラウ…………。
「俺はそれはどうでもいい」
ラウに連れられ、デュランダルに恐らく初めて会ったときの、幼いレイを、レイが回想する。子ども目線で見上げたラウと、微笑みかけるデュランダル。
「レイ!」
「議長は正しい、俺はそれでいい」

何でだろう、目から水が。…おかしいな。
「本物なら全て正しくて、偽者は悪だと思うからか」、それはラクスとミーアのことだけでなく、多分にクローンであるラウと恐らくはレイ自身の存在をかけて言っているのだと思われてならない。
クローンは確かに元々の存在からすれば「偽者」と言われかねない存在かも知れない。存在そのものが嘘だと、偽だと、だからどう扱っても良いと、他者に扱われてきた存在。
だが、そこにはいるのだ、生きている人格が。人が。
何だろう、レイの憤りが痛いほど、伝わる。
レイの中で何よりもまずラウが、そして議長があるのだろう。それはその「偽者」である過酷な生に、新たな意味を与えた人たちという意味で、かけがえのない人たちとして。
レイが議長の目指す世界のためなら何でもする、その動機が少し、分かった気がした。…確かに、そういう思いがあるなら、レイが「どんな生命でも生きられるのなら生きたいだろう」「生きていると言うことはそれだけで価値がある」と言うことも、裏切りについてひどく過敏であることも、全て統べられる。
レイという存在の、哀しいところは、「議長は正しい。俺はそれでいい」という言葉に自らの存在理由を規定してしまったところだ。
自分の外に正しさを求める、それは自分という存在に一度でも疑念を抱いてしまった者に避けられないことかも知れないが、そして自分を救ってくれた存在に対して自分を投企することは人が望むことだが、だが、存在理由を外延化してしまうことは、大変に危険なことだ。常に間違わぬ唯一神など、この世にはないのだから。
だがそうせざるを得なかった経緯が想定できるから、そうしたことがあるから、私には彼を責めることはできない。ただ、哀しいだけだ。


ちなみに、「本物なら~」の台詞の中で名無し男が映った件について。
彼についても、「本物」かどうかある意味どうでもいいのかも知れない、と思った。
ネオという「偽者」、ムウという「本物」、そのどちらでもないような現在、名無し男としてその生を選択するのも一つの道、ではあるだろう。
だからとて、彼の行なってきたことが帳消しになるものではないが。
いずれにせよ、「偽者」であるラウに対して、ムウは一つの「本物」であるわけだ。……そう思うと、暢気に昼メロやっている男に腹も立つが。
で、何故アスランが映ったのかについては……不明。アスランも己が「本物」であるかをかけて世界を流離う人、だからですかね?


シンはインフィニットジャスティスとの戦闘を思い出して頭を抱える。それを心配するルナマリア。そこにレイの言葉が降る。
「そんなことより俺たちには、考えて置かねばならないことが他にあるだろう」
さっさとPCを出してくるレイ。作中実は一番PCを触っている人、それがレイかもしれんと思うくらい、作業多いな。議長、レイの事務量多すぎますよ。そのうちドライアイになるぞ?
「え」
「フリーダム、そしてアスラン・ザラ」
憎々しげに、レイが言う。シンとルナマリアが驚くが、それぞれ別種の驚きだ。
「ァ…、アスラン?」
「ああ」
「アスランって! どういうこと!」
ルナマリアがシンに詰め寄っている。あちゃ。言ってなかったか…いや、言う機会もなかったかな。
「生きてAAにいる。この機体に乗っていたのが、奴だ」
………レイ。それ、42話のラストカットのインフィニットジャスティスだろ? わざわざそんな逆光の画像を出してこなくてもよかったんじゃないんですかね。つか、どこから撮ってたそれ。あの時点ではザフトは気付いてなかったろ?
「……じゃあ、メイリンも?」
その言葉にシンが愕然となる。落としたと思った瞬間を回想。…いや相手が補正効いてるから生きてるに過ぎませんから!
「メイリンも生きてるの?」
「さあ、それは分からない。だが生きているとすれば、あの艦に乗っている可能性はあるだろう」
シンがひどく狼狽えるのは、それはもう一度アスランを、メイリンを殺さねばならぬと知るからか。……無理だろうな、多分。結局狼狽しまくって、落とせないような気がする。



ミネルバが飛び立つ先の宇宙では、その頃異変が発生していた。
軌道間全方位戦略砲レクイエムの発射準備が着々と進められていたのだが…いや、えーっと、反射衛星砲じゃないよな? ……考えないで置こう。
ジブリールは連合軍月基地の責任者と喋っている。
「最近は、必要だと巨費を投じて作っておきながら、肝心なときに撃てないという優しい政治家が多いものでね。これでは我々軍人はいったい何なのかと、つい思ってしまうのですよ」
兵器の一つの側面だ。より高度な武力をと政治家は求め、作らせ、それが作られれば武力自身が戦争を始めたがる。使う当てのない武力にされた側にはいい迷惑なのだ。だから自らの有用性を証明するために、暴力は先走りしたがる。
「私は大統領のような臆病者でも、デュランダルのような夢想家でもない。撃つべきときには撃つさ、守るために」
ジブリールの口から「守る」という言葉が出たことに正直驚く。彼はここまで来て何を何処から守るつもりなのか。地球を、ナチュラルを、コーディネイターの手から? それとも、自らの地位を? 連合軍を?


ビーム偏光ステーショングノーの近辺で、ジュール隊が戦端を開いていた。元気だね、イザークにディアッカ。
それを議長が報告を受けている。
「12宙域に妙な動き?」
「はい、防衛警戒エリア外だったので対応が遅れたようですが、オニール型コロニーが少しずつ動いていると」
「プラントへ向かってか」
「距離はまだかなりありますが、警戒に出たジュール隊やジャニス隊がその護衛艦隊と現在戦闘中とのことです」
「分かった。以降もこの報告を最優先に」
機動要塞メサイアへ向かう議長は、報告を聞き終え目を閉じ、そして小さく息をついて、口角を上げた。
うひょーっ! 明らかに計画の内って顔ですね議長! 嬉しいよ、あんたの計画が進んでいくのがな! 初期から今まで、あんたの真っ黒さに惹かれて山谷を乗り越えてきた身には、その黒い笑いが物凄く嬉しい。
人が何かを聞くときに、それが初めてか否かは態度で分かる。報告を受けているときの議長の目線は、はっきり、既に知っているものを聞く態度だった。敢えて言うなら、戦闘中であるということに少しひっかかったか。だが楽しみだ、正直こんなに嬉しいことはないよ!
それにしてもメサイアの輪っかが、DNA二重螺旋構造をかたどっている気がしてならないのは、もう気のせい以外の何ものでもないよな?


レクイエムの発射準備に伴ってグノーが動く、その意図が掴めぬままにイザークらは止めようとする。…いや大きすぎて無理なんじゃないかと思うのは私だけですか。
議長は続報を求めるが、「停止を第一に考えるようにと」と報告を受けて、やや考える。議長が停止など望んではいないように、見えてならぬ。
一方ジブリールはレクイエムの目標をプラント首都アプリリウスに設定。
ジュール隊の攻撃は、グノーの一部を傷つける。
トリガーに手を掛けたジブリールは叫ぶ。
「さあ奏でてやろうデュランダル、お前達のためのレクイエムを!」
………それが言いたいがため、ただそれだけのためにこの兵器にそんな名前を付けたのかジブリール。実はあくまでも詩人だな、君は。
いくつかの経由点を経てビームはグノーへ。
「何だこれは!」
「ビームが曲がった?!」
はいはいはいはい。それが言いたいがためにそこにいたんですねお疲れ様。
レクイエムの光はプラントを直撃、その幾つかをぶった切る。……ああ、人がゴミのようだ。というより、このアニメでは随分以前から人類の大半はゴミのようだがな。
しかし、崩壊したプラントの外に吸い出された人たちは、必ず全員死んでしまうのだと思うと気分が悪くなる。いや、プラントという機密性のある物体が宇宙で損傷した時点で、その中の生命体は全て死ぬしかないのだ。……ああ。真空の、絶対零度の中で死ぬ気分とはどんなものだろう。吐き気がする。
プラントにプラントが衝突し、更に被害が拡大していく。大惨事、という言葉など追いつかないくらいの被害。
議長、その顔には『あれ?』としか書いてないように見えますよ。もっと驚き、怒らなくてはまずいんじゃないですかね? もしかしてアプリリウスじゃなかった驚きですか? 評議会とか全滅してくれると有難いですもんね!
いきなり崩壊したプラントを見つつ、側近が唖然とする中、議長はその側近をちらりと横目で見遣ってから拳を握りしめ、「どういうことだ、どこからの攻撃だ! 一体何が起きたというのだ!」とアップで怒ってみせる。そのいかにも演技臭い顔がまたいいですな、議長。今回の作画に結構満足しました。
側近はしかし無能じゃなかった。議長の怒りのタイミングのズレ、演技の臭いを確かに嗅ぎ付けて不審に思っていましたよ、彼は。議長、刺される日も近いですよこのままじゃ。何せ、プラント崩壊を促した容疑が掛かってくるんですから。……演技は慎重にね。まあ、それを隠せなくて失敗してこそ議長だがな!


崩壊したのはヤヌアリウス1~4とディセンベル7・8。首都を狙ったにもかかわらず狙いが外れたのは、グノーについた傷のせいらしい。
プラント崩壊を、防げなかったイザークとディアッカ。そして人は繰り返すのか、歴史を。
「2射めがあったら今度こそプラントはお終いだ! 何が何でも落とすぞぉっ!!」
そうだな、君は必死で走り回ってこそ君だよ、イザーク。


カーペンタリア基地にいたミネルバにも、オーブにいたAAにも、プラント崩壊の一報が届く。
AAで驚いているのは、しかしマリューさんとメイリン、アスランくらいにしか見えないのだが…ラクスやキラの様子が「いやこれも想定の範囲内」に見えるのは気のせいか。ノイマン腰に手を当てて落ち着きすぎ。
オーブ行政府のカガリは悲惨な有様に驚愕。……私はあなたの胸に驚愕していますがね。妙に今回くっきりあるように見えるんですが。

タリアは「何てことなの!」と悲痛な声を上げ、シンもルナマリアも顔を歪める。レイだけ「痛ましいことだが」程度の様子にしか見えないのは、偏見か。
「お母さん、嫌あぁーーっ!」と絶叫する声が響く。
「なんで、何でこんな」と思わず呟いたシンに、答えた声はレイ。
「ジブリールだな」
だーかーら! 答えを求めたんじゃないっての! そこで一人だけ冷静っておかしいだろうレイ! よく考えろ! ……まあ君にとって守りたい存在はそこにいないと、知っているからそう冷静になれるのだろうがな。
皆が悲嘆に暮れる中、一人だけPCに向かって情報を引き出すレイ。…そういえば前もこんなことがあったか。ユニウスセブンが落とされたときも、君は冷静だったなレイ。あの時は議長やアスランがいた、だからそう目立ちはしなかったが、今は悪目立ちする。
「…月の裏側から撃たれた。こっちがいつもどおり、表のアルザッへを警戒している隙に。ダイダロスにこんなものがあったとは」
他の兵士も共同して使用する部屋で、レイの個人用ではない端末から情報を引き出しているところを見ると、事前にレイが持っていた情報ではなく、今本国から送られてきているものにアクセスしているのだろう。にしても、レイだけは事前に知っていた感が否めない。
「何で! 裏側からって! そんなの無理じゃない! どうやって!」
「奴らは廃棄コロニーに、超大型のゲシュマイディヒパンツァーを搭載して、ビームを数回に屈曲させたんだ」
ゲシュマイディヒパンツァー、と聞こえるんですが、とするとGeschmeidig(柔軟性のある)panzer(戦車、甲冑)ですかね。…ううむ、何か違うような気がする。
「そんな…」
あれ……レイが操るこの図、どこかで見たことが。ああ、デストロイとくっついていた情報か。成程ね、議長がご存じだった訳も、レイが知っている様子なのも理由のあることだ。だが、プラントの一部を壊滅させることまでも相当以前からの議長の計画の内だとは。
「このシステムなら、どこに砲があろうと、屈曲点の数と位置次第でどこでも自在に狙える。 悪魔の技だな」
「……っ、そんな、そんなことを」
驚くシンに、レイは振り返って、厳しく言ってのける。
「ジブリールを逃がした、俺達の責任だ」
その言葉に、シンとルナマリアは衝撃を受ける。 …特に、射撃を外したルナマリアには痛い言葉だな。ぐさぐさ来るわ。
「ジブリールを逃がしたって、それは!」
邪魔が入ったからだと、アスランやAA、フリーダムによる邪魔のせいだと、シンは主張。
「何であれ、俺達は討てなければならなかったんだ」
レイの言うことは、表面上しごく真っ当だ。プラントを壊滅させた責任は自分たちにあると、自分たちの失敗にあると、撃てなかったことの責任の重さを述べること、それは決して間違いではない。誰かのせいにしないこと、それは人として正しい在り方だ。
だがこの場合、レイがシンにそれを示すことは、戦いに駆り立てるための言葉でもある。シンがアスランに躊躇しなければ、アスランの話すことなど聞かずに倒していれば、討てたかもしれない敵だったのだと、討てなかったことによる被害の大きさを知ることにより、次は躊躇しないで撃たねばと、シンを動かす。
守らねばならない本国がシン自身の躊躇のせいで壊滅した、それを認識させるレイの手腕は、なかなかのものだ。


ミネルバは宇宙に向けて出航する。死を背負って。
タリアの言葉がいい。
「みんな、連戦でつかれてると思うけど、正念場よ。ここで頑張らなければ帰る家がなくなるわ。いいわね」
帰る家。地球に住む人にとっては、国破れても山河はある。だが、プラントに住むコーディネイターにとっては、一度失えばもう絶対に帰れない、故郷は本当の意味で消滅する場所なのだ。


文字数が多すぎるということで、一旦切ります。ブログ本文でなんて、初めてだ…。
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# by gil-mendel | 2005-08-21 16:14 | seed-destiny

phase-43「お前は本当は、何が欲しかったんだぁっ!」

議長! 残念だったなラクスがオーブにいて!! 本気で驚く顔が見られて嬉しいよ! だが議長、さらに新たな手を打ってくれるんだろうな? でなきゃ存在価値がないぞ! てか、ミーアの放送をそこで入れるのは明らかに下の下の策だろ!
レイ! 声がラウかかってるぞ! しっかし、ラクス登場に何故君は平然としているのかね!
そしてアスラン、ここにきて漸くその為すべきことを為したか。シンを導くその役割、果たさねばこの物語が始まった意味がない。
シン! 今君に言えることは一つだけだ、頑張れ!
名無し男…。いい加減陳腐な台詞吐くのは止めんか! お前の記憶はその程度のものか!



第43話反撃の声。すっかり遅くなりました。




許可も得ずに発進していくアスラン。驚くマードック、止めようとするマリュー、行かせろと言うラクス。
アスラン…未だに「ザフトの坊主」なのだね。笑った。そうだな、マードックが一番真実を衝いているのかも知れない。アスランはAAのメンバーにとって、今だ確実にザフトの一員なのだ。だからAAとの連絡方法も教えなければ、エターナルの現存も知らせていなかった。それはアスランという人間を考えた場合正しい対処法ではあるが、何故だろう、何か寂しい。



ふとOPを見ながら、もしかしたらカガリとアカツキのカットがムウとアカツキに差し替えられるのかも知れないと思ったり。そうすればその直後にレイとレジェンドが来る理由も納得。…え? そんな尺はないって?




ムウ…いや名前を無くした男は、ミネルバの艦橋付近に一発喰らわせるも、スカイグラスパーのエンジンに被弾。
「降ろして…くれるか」
マリューさんがその声に艦を開かぬ訳はなく。
降りていくその中で、亡くしていた過去が鮮明な映像となってダブる。
いやいやいや、この程度のことで記憶が戻るなら、本当にずっと昔に戻ってるから! それとも何か、仮面に記憶埋め込み装置があったとでもいうのかよ!? まあピンポイントで記憶操作できる揺りかごがあるくらいだから、記憶操作可能な仮面があっても間違いじゃないか。…しっかしなあ。


シン・レイとキラの対決。
機体が変わればこうも強くなるものか、レイ。それともラスボス補正が掛かってきたということですかね。レジェンドで集中砲火を浴びせるのがいい感じ。前にも撃てるが後ろにも撃てる、と。便利じゃないですか。
キラはレジェンドの姿とその動きに、ラウを重ねる。…やはりトラウマなんですかね、キラにとってクルーゼは。
キラはシンを蹴り落とす。蹴りはあんたの標準戦闘方式ですなキラよ。
「今だシン、撃て!」
絶叫するレイ、ストライクフリーダムに照準を絞るシン、驚くキラ。そしてそこに、もう一つの絶叫が。
「やめろおぉーーっ!」
止めろと言われてあっさり退く、それがシンの素直さだと言えますかね。
己の手で殺したはずの男が新たな機体で飛来し、割って入る。
…いやそこでレイが何故あっさり上空に退いているのか分からないんですが。放置しとくんですか、アスランを?
「自分が今、何を討とうとしているのか、お前、本当に分かってるのか!戦争を無くす、そのためにロゴスを討つ、だからオーブを討つ。それが本当に、お前が望んだことか! だから討つしかないと、あの国に刃を向けることが!」
問われて回想するシン。…ああ、トダカを思いだしてくれて、良かった。シンの記憶の中に恩人として残っていてくれて、本当に良かった。
そしてアスランとのミネルバでの日々を回想するシン。そうだな、シンにとってアスランは、何だかんだ言って、よい上司だったのだ、と思う。シンを自分に重ねて、迷いながらでも半歩先を進んでくれるアスランは、シンにとって必要な存在だったのだと思う。
だが、アスラン!
君の言うことも分かるけど!(分かってない)
どうしてキラを撃つことがオーブを討つこととイコールなのだアスラン!
今シンが撃とうとしているのは、己の家族の仇であり戦場の攪乱者であるのに。
もしアスランが割って入ったのが、デスティニーとアカツキとの間ならまだアスランの言葉も分かるというものだ。だが、オーブを討たねばならなかったシンの絶望も、また分かってやって欲しいと思う。
そして何より、アスランの言葉はアスラン自身に一番深く返ってくるのだ。
戦争を無くす、そのためにザフトを討つ。それが本当に君が望んだことなのか、アスラン? だから討つしかないと、ザフトに刃を向けることが?
「思い出せシン! お前は本当は、何が欲しかったんだ!」
その言葉と共に回想する主体は、明らかにアスランだ。彼は思い出す、父を、カガリを、キラを。それは、ああ、アスランの欲しかった、もの。…己を殴り飛ばし撃った父がそこにある、それが、アスランという人間の絶叫なのだと思うと、切ない。
…何が欲しかったのかと、それはあんたも同じじゃないのかアスラン!
アスラン、あんたは本当は、何が欲しかったんだ!
……そう、アスラン自身に通底する問いだから、シンを自分に重ねるから、アスランはシンに問うのだと思う。
シンは問われて回想する、家族を、踊るステラを、死の間際ステラの胸元から零れた桜貝のペンダントを、力を失う手を。
シンの欲しかったものは、だが、アスランと大きく違う。アスランの欲しかったものの内多くは未だこの世にあり、立ち返ればそこにあるもの。だが、シンの欲しかったものは、もう全て、この世にないのだ。
個人として欲するべきものがもうこの世にない、それは人を、ある意味とても空虚にし、ある意味吹っ切らせもする。

アスランの問いかけに、レイの我慢の尾が切れる。
「死に損ないの裏切り者がぁ、何をノコノコと! 惑わされるな、シン!」
うっひょー! 言うねえレイ! しっかしキレると本当に口が悪いね、君は。
レイはシンとアスランの間に割って入り、アスランを、キラを撃つ。レイがキラの攻撃を防いだのを見てシンが助けに行こうとするが、更にアスランがそれを防ぐ。
「シン! オーブを撃っては駄目だ! お前が!」
…じゃあアスラン、君はザフトを撃たないと? ミネルバを撃たないと?
君の言葉でなかったら、裏切り者の言葉でなかったら、それはまた胸に響く言葉だったろうに。


ユウナはシェルターに連れ込まれようとして抵抗。後ろ手に縛られたまま、兵から逃げて行こうとしたところに、丁度上空でムラサメと交戦していたグフがやられて落ちてくる……え? え?
………グフが落ちてきたところにユウナがいた? 待て、まさかこれで死んだなんてこと、ないよな? 冗談だよな、ユウナをこんな殺し方してどうするよ! ユウナは生きてこそのキャラだろ? カガリが無駄に国家反逆罪に問うたことの意味を問い直してくれるはずじゃなかったのか? え?
………まあ、ユウナが生きていることによって生じる、カガリへの問題提起を、冗談のような死亡によってあっさり片付けた訳だ。こりゃカガリも成長しないよな。…虚しい。本当に虚しい。


キラはレイと、アスランはシンと交戦中。というより、アスランはシンを説得中。
「その怒りの、本当の訳も知らないまま、ただ戦っては駄目だ!」
オーブを愛している、だから裏切られたと思って自分の手で潰そうとする、そこに更なる本当の理由があるとすれば何だろう。
ただ戦っている訳じゃない。シンにはシンの、理由があるのだ。
「何を言っているんだ、あんたはぁーっ! 何も分かっていない癖に、裏切り者の癖に!」
シンはレイの言葉を自分の理由に紛れ込ませる。いや、レイが理由を提起しているといっていい。シンの当面の情動を操るのは、やはりレイだ。


「フリーダム!」
レイの言葉には怒りと怨みが満ちている。やはり彼には、怨みを抱くだけの個人的な理由があるのだろう。
種割れ状態のキラとほぼ互角に斬り結ぶ、レイ。


AAは隙を見て潜行。それを見てタリアは「潜られたらこちらに攻撃オプションはないわ」と言う。…え? 海戦装備を何も持ってないって? 嘘でしょう艦長! ミネルバは勿論地球上用の艦じゃないが、補給・補充はここまで来る間に色々できたはずですが? てか、いつか魚雷ぶっ放してなかったっけ? それともあれはあそこで尽きて、その後補充なし?
上昇するミネルバにAAは海中からバリアントを撃つ。およよ、当たるじゃん?


ジブリールはウナトらを待たずに月に上がることを決める。
まあここまでオーブ兵に自らを護衛させるための口実に過ぎなかったセイラン家同行だから、そうあってしかるべきだろうが。


シンはアスランと斬り結びながら回想する。
「悪夢はそれか」と語りかけたレイの声。
叙勲の際の言葉。
自分に問いかけるアスランを撃墜したときの風景。
そして、ステラの命が消える前にその唇から漏れた、「シン……好き…」そいう言葉、その眼から流れた涙。
フェイスに任命された際の議長の言葉、そして、レイの言葉「それは弱さだ。それでは何も守れない」を思い出して、追い詰められたように種割れする。
にもかかわらず、何をきっかけに種割れしたのかよく分からないアスランに一撃を食らってしまうシン。
……多分、種割れはより冷静である方がいいのだろう。シンの種割れは常に言葉に詰まるような状態で発生していた。AAに戻り己を見出した(という位置づけである)アスランに勝つのは、やはり難しかろう。
シンは「守る」という言葉に一番反応するのだろう。その意味で、レイの問いと助言は正しかったという訳だが。


タリアはザフト軍指令に一時の撤退を進言するが、聞き入れられないままAAの攻撃により指揮艦が轟沈。
……AAって本当に、不殺じゃないな。本気でそう思う。
ジブリールを引き渡すことに全力を使うならともかく、オーブ軍の一部としてより戦闘を広げることのみに腐心し、結局は両軍の死者を増やしているだけではないか。
この戦闘をもしも本気で招きたくなかったのなら、カガリを国外へ連れ出すことなぞせずに、オーブ国内で彼らに心寄せる政治勢力を育て、ウナトらを抑え、ジブリールが逃亡してこようとしたら拒否し、それでも国内へ侵入したのなら捕縛すべきではないか。…常識がないにもほどがある。


そうこうしている間にジブリールはセイラン家のシャトルで宇宙へ。
慌てたタリアは残っていたルナマリアに追わせて撃墜させようとする。
カガリはムラサメを向かわせる。……なあカガリよ。どうせならキラにも追わせておけよ。明らかにストライクフリーダムの方が速いだろ? まあその程度の目標だったということなのかな、君にとっては。いくら戦闘中だからって、オーブ国家元首であろうとする君には、それ相応の責任があるはずだろう?
…そしてルナマリアは暢気に合体して決めポーズまで取ってから追いかけるが、やはり射撃が苦手というルナマリアでは役に立たず、完全に取り逃す。………私が彼女の立場なら、辞表くらい書きますがね。「あ!」で済むことと済まないこととあるんだよ、全くな。


ところが、タリアの反応は以外に冷静だった。
「旗艦撃墜に伴いこれより本艦が指示を執る。信号弾撃て、一時撤退する!」
当然ここで驚いてくれるのはアーサー。「ってええ」とかいいなと思ったらすぐにこれかよ。やはり君はミネルバの癒しだね。
「か、艦長!」
「戦況はこちらに不利よ、彼も発見できない。これでは戦闘の継続は無意味だわ」
「し、しかし、それでは議長の!」
「議長の命じたのはジブリールの身柄の確保でしょう? オーブと戦えということではない!」
「…あ」
「MS帰投、全軍オーブ領域外へ一時撤退する!」
…タリアの様子を見るに、彼女が議長の言葉に疑念を持っているのは明らかだが、それ以上に、オーブと好んで戦いたくはないと思っている様子ではある。(別にこのまま進軍しても構わぬ訳だから)
最後にタリアがプラントを糺してくれるかというと、それは役柄的に少し無理なようではあるが、ザフトにしっかりと足場を置きながら疑念を持ってくれる、いいキャラだと思う。願わくば議長に撃たれませんように。

MS撤退の信号弾は万国共通なのだろう。あの光、ネオが時々打ってたのと同じだな。…それを見たレイの悔しそうな顔が印象的だった。落とせるものならこの場でストライクフリーダムを落としてしまいたかったろうから。……相手に主人公補正が掛かっている以上、無理なのだろうね。残念ながら。
信号弾を見ていたオーブでもカガリが「…グラディス艦長」と呟く。かつての恩を、忘れた訳ではない。
レイはシンに一声かけて先に帰投。無理に命令に背いてまでは、というあたり、レイらしいというべきか。
カガリはタリアの思いを感じ取ったか、追撃しないよう指示を出す。……てか、ここで追撃したらオーブは全世界からバッシングを受けるでしょうしな。

立ち去るシンを見ていたアスランは、緊張の糸が切れたか、気を失う。それと同じくMSも自由落下……待て! どこまで一体化してるんだ人とMSは!
もっとあんまりなのは自由落下を上回るスピードで追いついたキラだ! いくら性能が良くたってそりゃちと速すぎるんじゃありませんかね? 空気抵抗、という割には重そうだしなインフィニットジャスティス!
MSがMSを抱きかかえて去っていく姿は、もう視聴者を唖然とさせるためとしか思えない。


さて、オーブの被害はやはり相当なものがある。ザフトが市街地にはできるだけ影響させないよう努力したとは言っても、そこにオーブ軍がいる限り戦闘になる訳で。
カガリは唇を噛みながら被害状況を見つめる。……だがカガリ。結局は自分の力のなさが招いた事態だと、責任を持って国のトップにあった者ならまずそう思うよな? 1~10話あたりの自分を思い出せ。君が一体何をした、オーブで何ができたよ。なすべきことをなせず、国外へ連れ出されたことに甘んじ、そして政治ではなく戦場に介入して戦局を度々混乱させた。
今唇を噛んでみたところで、己の手の無力さを感じるだけだ。
平和は弛まず構築するものだ。政治家は、努力したからといって結果を為さなければ、何の意味もない。この被害状況を招いたのは、あくまでも言おう、カガリ自身だ。きついようだが、政治はあくまでも、結果だ。何故なら、国民の運命を、ひいては世界の人々の運命を、その結果が左右するのだから。
「外交ルートで今当てになる国など!」とカガリの背後で誰かが話している、それはそれだけの国交をカガリらオーブが結んでこなかったことの結果だ。プラントに直接話ができる、かつてそうだったオーブは今すっかり孤立し、道を閉ざされた。


AAに戻ったアスランは床に転がっている。キラがそのメットを取ってやると、左額部の傷が開いたのか、ひどく出血している。スーツの中にも所々血が。メイリンや整備士らが集まっている。
……だがラクスはそこにはいない。例えばアスランが死んでも、ラクスなら、出撃させたことを悔いたりはしないのだろう。それはそれで、ラクスらしいといえば言えるだろうか。
きっと私も悔いないだろうけれども。アスランはあそこで飛び立てねば、さらにぐちぐちと回想を続け、届けられなかった言葉で自分を埋め尽くし、出口を塞いでいくだけなのだ。それよりは、出撃させて自分の言葉で語らせた方が、余程大局的に意味がある。例えそこで死んでも。
よりよい結果のためにはアスランという駒を使い捨てることも構わぬ、それはラクスも議長もスタンスとして同じだ。


タリアは艦長室で議長に状況報告中。
「ではジブリールはそのシャトルに」
「確証はありませんが私はそう考えます」
「いずれにしても彼は捕らえられず、君たちはオーブに敗退した。そう言うことか」
「はい。…そういうことに、なります。
AA、フリーダム、そしてジャスティスと言って差し支えないでしょう、それらの参入によって状況は不利となり、その上、依然として彼が国内にいるという確証も得られませんでしたので。
あのまま戦っても、ただの消耗戦になるだけでした」
「そうか。いやありがとう、グラディス艦長。判断は適切だったと思うよ」
「いえ」
「シャトルの件についてはこちらで調べてみよう。オーブとは、何か別の交渉手段を考えるべきかな」
「私はそう考えます」
タリアはこの短い間に、「私はそう考えます」と2回も発言している。臨時の指揮官として、というよりも、タリア個人としての見解が多分に含まれた発言だと見て良いだろう。
タリアは常に、考えそして行動する人だ。議長に翻弄され、部下に翻弄され、AAに翻弄されながらも、自分が何をすべきか、為すべきことに含まれる価値とは何か、見据えている。彼女が良いのは、見据えるだけでなく、己の置かれた立場の中でそれに呑み込まれすぎずに、行動することだ。AAのような枠の超え方はしないが、常識のある大人としてできる最大限のことを、ミネルバ艦長という役割の中でやってくれる。
彼女は成長するタイプのキャラではないが、最後にきっと、我々を驚かせてくれるに違いない。恐らくは、良い意味で。


タリアとの通信を終えて何やら考える議長。
離れた部屋で窓の外を見遣るミーア。その目から落ちる涙は、アスランを思ってのものか、それとも自分の生死を思ってのものか。…ああ、泣いてる顔が綺麗だと、思う。


AAの甲板にて、夕暮れの海を見つめる名無し男。
そこにやってくるマリューさん。
とくれば、昼メロなんだな、やはり。
名無し男はネオとしての自分の記憶に自信がないと主張。…はあ。そうですか。
「いや、知ってるんだ。きっと俺の、眼や、耳や、腕や、…何かが」
だーかーら! もういいよ名無し男! 記憶は脳にのみ宿るんじゃないってか? それとも何か、フラガ家の特殊能力として、皮膚感覚の隅々までが広大に広がって、皮膚が脳を操りさえする状態になっていると?
アウルなんか死の間際までステラのこと思い出せなかったってのに、どうしてあんただけ死んで再生してしかも恋人と再会してるんだよ! 世の中不公平って言うより、あんただけあり得なさすぎるよ! あんたが生きてるならラウも生きてるよ!
……待て。もしかして本当に生きてるんじゃないだろうな、ラウが? そのための延々張られた伏線だったとでも?!? ……あり得ねーっ!


起き上がろうとするアスラン、駆け寄るメイリン。
「大丈夫ですか!」って、そりゃキラじゃないけど、アスランに言うべき台詞じゃないよな。というより、明らかに大丈夫じゃない人に「大丈夫ですか」と問うのは間違っている。
キラとラクスが現れるが、…もうこの二人がセットで現れる度にうんざりしてしまう。私は神が見たい訳でも神の使徒が見たい訳でもない。人間が見たいんだ人間が! まだアスランの方が人間らしくて好きだよ。年がら年中ぐるぐる回っているけどな。
キラが喋っている背景で、ミリアリアとノイマンがお茶をしているところにチャンドラが割り込む。それにムッとしたノイマンがおかしい。ノイマン…君が幸せであることを願うよ、本当に。前作からそういう面で恵まれてこなかったしね。
しかしキラ、「TV、点けていい? カガリが声明を出すんだ」って、わざわざ病室にまで来なくったってTVはいくらでもあるだろうよ! ま、アスランに見せるためなんだろうけどさ。だがアスランはカガリが出るというのに興味がなさげ。おいおい大丈夫か。


カガリが発するメッセージは、ほとんど意味が取れぬ内に、ミーアの演説に取って代わられる。カガリを見ている議長の顔が、やたらに悪人だ。
ミーアの横にある旗に意味がある。左に地球連合の、右にザフトの。これは、いずれもがミーアの後ろにいる、すなわちオーブは孤立したというメッセージだ。
ミーアにロゴス極悪論を唱えさせ、それを擁護したオーブを世界的に更に叩いて孤立化させ、議長はその様子を酒でも飲みながらモニターで見ていれば充分、という訳だ。…そうだな、それが成功すれば、だが。

メイリンが不思議そうに横のラクスとTVのラクスを見る横で、ラクスはキラを促して出ていく。こうなると予定されていた気に。
「大丈夫ですわ、キラ。私にも、もう迷いはありません」
……ああそうでしたね、あんたは迷いながらストライクフリーダムとインフィニットジャスティスを作らせてたんでしたね! ああとんでもない神だよ!
悟った二人が目を見交わせながら出ていく様は、全く、苛立たしいものだ。


ミーアの演説は、ラクスとキラの到着によって再びオーブの手に戻る。というよりはラクスの手に落ちる。
「その方の姿に惑わされないでください」
君の姿は僕に似ている、と、効果的に歌が重なる。
映ったラクスの姿は、確かにラクスの姿をしてはいて。
世界が動揺する中、少し眉をひそめただけのレイは、恐らくこのような事態も想定していたということなのだろう。議長の「……ん?」よりも君の方が驚きだよ、レイ。
今ひとつ解せぬのは、タリアが驚いていたことだ。ミーアの存在を知っていたと19話の様子で思ったのだが、とすると、タリアはラクスは死んだと思っていたということか?
議長が驚いたのは、恐らく未だエターナルにいるものと読んでいたからだろうが、しかしエターナルにいたって電波ジャックは為されうるのだから、そこまで驚くに値しないと思うのだがね。
「私は、ラクス・クラインです」
「……ばかな。何故彼女が、オーブに」
なあ、議長。寧ろカガリに演説させて、その破綻と矛盾を全世界に広めさせた方がよかったんじゃないんですかね? 折角相手が自分の無能と逃亡を全世界に曝してくれようというのだ、放置しておいた方が得策だったのでは?
大体、キラが出ていったら電波ジャックも取り返せるというのが酷い設定だ。ああそうでしたねあんたスーパーコーディネイターなんでしたね! は!
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# by gil-mendel | 2005-08-17 20:55 | seed-destiny

phase-42「あれは亡霊だ」

アスラン…そうだな、君は真実を衝いたよ。ラクスも議長も君を戦士として扱う、人を手段として扱う奴だということを!
レイ、睨みすぎ。フリーダムの搭乗者が死んだかどうかを調べなかったのは自分だろう! 睨んだって失策は取り返せないぞ! 早速フェイス権限使いすぎだ君は!
ドム3連星、「ラクス様のために!」ってくだらねえ。てか、ジェットストリームアタックはあれは笑わせたいんだよな? 失笑したわ。
シン……がんばれ。デスティニーエネルギー切れかあ…。
タリア、かっちょいい! これでレイがいなきゃもっとやりやすかっただろうに…この世界一番の苦労人タリアに幸いあれ。
ムウ、てかあんたはもうムウでもネオでもない! てか、あんたのその台詞は危険すぎるんだよ! お前が何の不可能を可能にしたよ、可能も不可能にしてきた癖に! ステラを、スティングをアウルを思い出せーーーーっ! 人を弄んできた男が、何が不可能を可能にだよ!




第42話、「自由と正義と」。いずれもを、この情勢の中で、だが信じない。
今回は完全に1週間出遅れた感想で、よって結構端折ってます。



アバンにメイリンの肩を借りてAA艦橋に現れるアスラン。
「大丈夫です…CICに座ることくらい出来ます」
CICを舐めてんじゃねえぞアスラン! くらいって何だくらいって。


一方、マリューさんはムウをスカイグラスパーと共にAAから降ろしていた。腕のくびきを切り落とす。
「もう、怪我も治ったでしょ。ここにいると、また怪我するわ」
…ええと、ムウを拾った目的は療養ですかマリューさん? なら地上のあらゆる負傷兵や一般人を拾ってみろよ! できもしない癖に、しようともしない癖に!
「スカイグラスパー、…戦闘機だけど、用意したから」
逃げろっての? 相手が何をした人間だか分かってて? あのベルリンの大惨事を引き起こした張本人だってのに? ああ罪を憎んで人を憎まず、いい言葉だよな! だが私は忘れない、決してそれを忘れない。
まあ現実的には、連合軍捕虜としての役割が全く機能しなくなってしまった現在、ムウなぞ置いておいても積極的価値はない訳だが…なら拾わなきゃいいんじゃないかと。
私情で殺戮犯に戦闘機を譲渡する、それは美談でも何でもない。
「あなたはムウじゃない。……ムウじゃないんでしょ!」
本人がムウだと名乗った訳じゃなし。…いや、マリューさんの気持ちは分からなくはないんですが……それでもちょっとどうかと思います。


一方、メイリンをAAから降ろそうとするアスラン。
ザフトと戦うこの戦いには巻き込めないとアスランは主張。いやそれなら初めから巻き込むなと。大体君が脱走したのは当然ザフトとの敵対も含んでのことだろう?
だがメイリンは、姉を回想。しかも姉と仲の良くないシーンばかり。…え?
「大丈夫ですから…あたし、大丈夫ですから! だから、置いていかないでください!」
そういう回想をつけると、姉と仲が悪いからミネルバと敵対するように思えるんですが…どうなんですかね、その辺り。


で、AAは完全復旧したんですか? あと2日かかると言ったのはアレは嘘ですかマードック?



戦場にたどり着いたミネルバへの旗艦からの呼びかけに、タリアは答える。
「しかし目標は? 未だ押さえられないのですか?」
まあどっちかっていうと、目標を押さえることよりもオーブを攻撃することがこの作戦のポイントですから。

アカツキとデスティニーが戦闘へ。
「こいつに来られたらオーブはっ!」
いや別にデスティニーに限ったことではないんですがね、カガリ。
シンはカガリの技量を完全に押している。
「あんたが大将機かよ、大した腕もない癖に!」
中の人がカガリだと、まるで知っているかのようなシン。
アカツキがどれだけ高性能な機体かは知らないが、中の人に満足に扱える技量がなけりゃ結局意味がないってことか。…ウズミよ、無駄だったな。オーブを守りたいならそれ相応の腕を持った者に譲渡すべきだった。
デスティニーはアカツキの腕を一本落とし、更に攻撃を重ねようとしたところで、上空から降下してきたのがストライクフリーダムとインフィニットジャスティス………。
はあ。すみません、こういう展開で燃えるようにはできていないんです。ひどく萎える。MS同士が手つなぎで空から降りてきて窮地に陥った姫を救う、そんなものが見たい訳じゃない。


ストライクフリーダムの登場に最も衝撃を受けたのは、シンとレイ。シンは己が落としたはずの機体復活に混乱に陥り、レイは憤りに殺気を放っている。その睨んだ顔、怖いながらに結構いいかも。
で、何故彼らがフリーダムとストライクフリーダムをイコールと見なすのか。明らかに別の機体なのだが…認識コードを全く同じものを使っているとでも? いや、レイは明らかに肉眼で認識しているし…ここは、搭乗者から同じ電波が発信されているのを感知しているということで。


「本艦が前に出ます。宜しいですね。…離水上昇急げ、面舵10。これよりAAを討つ!」
タリアはAAを落とすことを決意、ミネルバで前に出る。
「ミネルバが来るわよ…いいわね!」
マリューもミネルバとの対峙を決意。
アーサーかっこいいよアーサー! うろたえたり驚いたりしてなきゃ実は普通の軍人だよね! いやちっとも砲撃当たってないけどさ!
「トリスタン・イゾルデ、照準AA!」
「ゴットフリート、バリアント、照準…ミネルバ!」
「「てえぇーーーーっ!!!」」
うお、ハモるのいい感じ!! どっちも頑張れ!


っと思ったら、ものっそい憤りを持ってレイがストライクフリーダムを睨み付けていたCM前。うお!
……それだけ怒るならさ、あの時最後まで搭乗者の死を確認しておくべきだったろ? 怒ってみても仕方ないじゃん、自分の失策なんだからさ。
だが、レイの憤りには、やはりラウの件での私怨があると思われて仕方ない。ただ議長の行く道を塞ぐ、それだけの存在としてキラを憎んでいるとはやはり思いがたい。
最高のコーディネイターとして作られた、ある意味「君のようになりたいと」願われる存在と、そこへ至るまでに踏み台にされた、寿命の短い失敗作クローン。
どちらの側に深く心惹かれるかと問われれば、やはり私は、無駄に最強で不死身な者よりは、痛めつけられた者の側に立ちたい。



さて、ドムトルーパー3機が登場。
「ラクス様のために!」
…………個人崇拝は本気で良くないと思うんですがね。吐きそう。
ザフトのために、の対義語としてあるというのなら、より劣化した、対義にも大義にもならない言葉としか言いようがない。偉大なる首領様のためにとしか聞こえない。
まあAAやエターナルの矮小さ卑小さを表わすというのなら、そう受け止めておきましょうか。


ラクスはインフィニットジャスティスでAAに降りる。
それを迎えるアスラン、メイリンに肩を借りて。いや君、CICの任務はどうしたんですか? そうやって引き受けた仕事をどんどん片端から自分に見合わないと放り出していくから信頼が得られないのだよ! 待ってりゃラクスなんぞ艦橋に戻ってくるんだから、せめてそれまでCICで働いてろと。それとも何ですか、明らかに自分の色の機体っぽいので自分にくれるんじゃないかと気になりましたか? この自意識過剰男が。
ラクスのパイロットスーツはピンク。……特注なんでしょうな。はあ。
そのラクスを見るメイリンはひどく驚いた顔。まあミーアを見ていますからね。
「君が乗っていたなんて、大丈夫か」
「はい、本当にただ乗っていただけですから。アスランこそ、大丈夫ですか」
「大丈夫だ」
「お体のことではありませんわ」
……頭が大丈夫かって? てか、明らかにアスランは怪我人だろ? 身体の心配をしてやっても罰は当たらんのじゃないですかね、ラクスよ。
要するに人間として大丈夫か、正しいのはAAであると認識し、ミーアを認めた過去を悔い改めたかと教主ラクスは問うている訳だ。
罪人アスランはミーアを認めた過去を告解する、ただし回想で。


一方、ストライクフリーダムと斬り結ぶデスティニー。
さっさと種割れしたキラは真剣白羽取り………いやありえないから!
「これがビームだったら、もう終わってるって、そう言いたいのかよあんたはぁっ!」
ビームじゃなくたって終わってるよ、シン。頭に血が上っているぞ、落ち着け。


ミネルバでは、タリアがAAのエンジンを狙わせている。……そうだな、何をしてもきっとAAは落ちないんだろうな。それを思うと、ミネルバが気の毒ですらある。
そこへ待機室からいきなりレイが通信を入れてくる。
「艦長、シンを戻します。状況が変わりました…よくありません」
待て、レイ。艦橋の現在の必死さが分かってるだろ? そりゃ君も必死なんだろうが、タリアに通告するタイミングとしては今ひとつだよ。
ていうか、レイの最近のタリアに対する物言いは、報告というよりどう見ても通告だな。
「なら、あなたかルナマリアが出なさい」
「無論、我らも出ます。その前にシンの帰投を。整備と補給の必要もあります。あれを落とさねば、この戦闘に勝利ははありません」
この忙しい時に何を言ってくるんだ! とタリアならずともキレそうなところだが、そこは大人、レイの要求を呑んでやるタリア。
「いいわ、任せます、でも急いで。…アビー、前線の状況はどうなっているの? 目標は未だ押さえられないの?!」
うう、アビーのせいじゃないよタリア。怒鳴らんでやってくれ。


「こいつ、何で落ちないんだよおぉっ! 落ちろっ!」
頭に血が上ったシンに、レイが命令する。…命令とか通告とか似合いすぎて怖い。全くラウの遺伝子そのままだな君は!
「シン、帰投しろ」
「何で、まだ!」
「命令だ。奴に勝ちたければ、一旦戻るんだ。いいな」
それを聞いて計器を見たシンは、初めてデスティニーのエンジン切れ直前状態に気付く。…あれ? 核動力も搭載してませんでしたかねデスティニーは? それとも地球上では使えないのか?
それにしても、シンはレイなしでは戦えない状態だな。それはシンにとっていいのか悪いのか…。


カガリは国防本部のユウナの元へ。
ユウナの顔は既にボコボコにされている。……やりすぎじゃないですかね、オーブ国防軍諸君。殴ればいいってものじゃないんだよ全く。
「ひどいよこれは! 僕は君の留守を一生懸命、」
しかしカガリはそのユウナを更に殴り飛ばす。…相手が弱い立場にいるのを更に殴り飛ばすのは如何なものか。オーブで国家元首を務めようとする者ならば更に如何なものか。まああの国には基本的人権とか特別公務員暴行陵虐致傷罪とか存在しないんだろうな…。
「お前だけが悪いとは言わない、ウナトやお前、首長たちと意見を交わし、己の任を全うできなかった私も充分に悪い! だがこれはなんだ! 意見は違っても、国を守ろうという思いだけは同じと思っていたのに!」
国を守るとはいったい何のことかと思う。逃亡し、都合のいいときだけ現れる元国家元首が何を言うのだろうかと。
確かにユウナらの選択は不正解だろう。だがそれは、同じく誤った選択をしたカガリが言い募るべきことでもあるまい。
カガリには失望した。ユウナらを国家反逆罪という巫山戯た罪名に問おうという時点で、もう正直、うんざりだ。だが今回は更に絶望させてくれた。オーブという国を、結局はカガリも引きずり回しただけに過ぎなかったのではないか。己の責任を果たさないまま、問題から逃避し、世界を勝手に漫遊し、戻ってきたらこの様か。…ああ、似合いだよオーブ、この国にはこの程度の元首がな!


一方、ラクスと対峙しているアスラン。
ジャスティスを示され、躊躇うアスランにラクスが言う、
「何であれ、選ぶのはあなたですわ」と。
だがその選択肢しか示されない状態で、人は選んだと言えるのだろうか?
だからアスランはやや憤りをもってラクスに問う。
「君も、俺はただ戦士でしかないと、そう言いたいのか」と。
自分を戦士、ただの戦う駒として扱い、そうでなければ切り捨てようとする議長の掌から逃げてきたと思ったのに、キラとラクスの元に戻って示されるのはまたも戦士という駒なのかと、アスランは怒っている。
アスランの怒りととまどいは、だが理由のあるものではある。ラクスにとっても議長にとっても、所詮、アスランというのは一つの力のある駒なのだ。それをどう言いくるめるかは別として。
「それを決めるのはあなたですわ」
そういうラクスの言葉に、だが私は、怒りしか感じ得ない。そう仕向けたのはお前ではないかという怒りしか。
「そしてあなたは、確かに戦士なのかも知れませんが、アスランでしょう? きっと、そういうことなのです」
……そう言うのなら、アスランの前にインフィニットジャスティスなど降ろさねば良いのだ!
何かしたいと思ったときに何もできない、本当にそうなのかキラよ?
人間は暴力以外に語る術を、暴力以外に世界を変える術を持たないと、お前はそう思うというのか? だから己もダブルスタンダードな言い訳をつけて剣を取り、アスランにも取らせようとそう言うのか? 巫山戯るな!
……だがアスランは彼らの言葉にさらりと騙され、インフィニットジャスティスに乗ることを選ぶのだ。哀れなるかな、アスラン。
アスランがラクスの言葉を聞いて連想したのは、議長だ。
己にできること、己の望むこと、それは己自身が一番よく知っている…。
ああ、そういうことなのだ、つまりは。




AAに迫った砲撃を、撃ち落とした機体が一つ。スカイグラスパーだ。
驚くマリューに、ムウが通信を入れる。
「すまんな、余計なことして。でも俺、あのミネルバって艦、嫌いでね。大丈夫、あんたらは勝てるさ。なんたって俺は、不可能を可能にする男だからな」
待てムウ! 嫌いかどうかという問題じゃないだろう! 照れ隠しにしたって、言って良いことと悪いこととあるだろうが! 不可能を可能にするだ? 巫山戯るな、先ずはステラを生き返らせてみろよ! 嫌いだからミネルバを執拗につけ回していたとか言うんじゃないだろうな! 戦争はいつから好き嫌いの感情でするものになったよ!!!
お前なんか、ムウでもなければネオでもないわ!


オーブ軍は内部に造反者を抱えている。封鎖したはずのカグヤの近くと思われる場所で、ジブリールとその猫がオーブ兵の一部に守られている。
「第3区異常ありません」って、異常ありありだよ。


ミネルバでは、デスティニーの修理を終えてシンが再出撃しようとしている。
一緒に出ようとしたルナマリアを、だがレイが止めた。
「ルナマリアは残れ。……命令だ。気を散らせばシンは負ける。今のあいつにお前は邪魔だ」
そりゃそうだけど! ルナマリアがいればシンは確かに守らなくてはいけなくなって、集中できないだろうけど、でもその言い方はないだろうよレイ!
……言い過ぎた、とでも言わぬ気に、驚いたルナマリアから顔を一度背けて走り去っていくレイが、少し可笑しかった。

「落ち着いていけ、シン。お前が挑発に乗って自分を見失ったら、勝てるものも勝てない。それこそやつらの思うツボだ」
機体に搭乗して尚シンに声をかけるレイ。実は一番挑発に乗っているのは君ではないのかね、レイ。落ち着けよ、お前が。
「わかってるよ」
「だが、あれは亡霊だ。今度こそ沈めるぞ」
……亡霊は君なのだよ、レイ。残念ながら、な。




アスランは議長とラクスの言葉を回想しながら、インフィニットジャスティスに搭乗する。
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!」
発進の言葉が「出る」に戻った。それはアスランが迷いから立ち戻ったということを示しているのか。

自由と正義、いずれの名の下にも、だが、屈しない。
正義という杖に寄らねば立てぬ者にも、自由という剣を振りかざさなくては己の放埒を正当化できぬ者にも、未来はないから。
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# by gil-mendel | 2005-08-13 17:23 | seed-destiny

状況が変わりました。

種運命感想、個人的な事情により今回はかなり遅れます。少なくとも火曜日以降になる予定です。
しかしながら一つだけ、呟いておこうと。
アスランが思い返した、議長の言葉とラクスの言葉。一度議長の言葉に惹かれてザフトに戻り、その言葉の裏を知ったと感じてザフトを離れ、また同じような言葉をラクスにかけられて議長の言葉を思い返したアスランは、その二つの言葉の違いを見出したように見える。
だがいずれも、その実違いはしないのだ。
起つ決意、それは自らの中から湧き起こるものだから。誰からどのような示唆を受けたとしても、起つのは常に、自分自身。立ち位置を決めるのは常に、自分。
アスランが議長とラクスの通底に、気付いてくれたら何よりだと、そしてかつその上で、自分の立ち位置を選んでくれたなら何よりだと、思う。
………にしても、この物語は本当に、アスランのための長い長い前置きなんだな……。
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# by gil-mendel | 2005-08-08 07:08 | seed-destiny

phase-41「全ては俺の甘えだったのか」

ダブルスタンダードだろキラ! その言葉をお前自身に向けてみろよ!
アスラン…キラキラキラキラって、もういい加減にしろ!
総集編、しかも前半はアスラン視点の、後半はキラ視点の回想。
もうつっこむのも面倒なくらいなので、今日はいつもになく端折ります。


第41話リフレイン。種運命がアスランとキラの物語だと、明確に告知された総集編。


OPが訂正された。
カガリのバック機体がアカツキになっていた…。これから順次この方法で一部ずつ追加されたり訂正されたりしていくのだろうか。…はぁ。
そういえば、レイのバック機体のレジェンドにも書き直しが来ていたような気がする。ドラグーン、宇宙で使ってくれますかね。


「俺がほしかったのは、明確な答えだったのかも知れない」
まあ、まともな話し相手にもならないキラ、公務に追われてばかりで空回りのカガリ、何を考えているか全く不明なラクスよりは、議長の方が明確な答えと目標を示してくれますからね。
人は弱いものだ。信じるに足る強い何かに身を委ねてみたくなる。
自分が為すべき役割がザフトにあるのだと、君は信じようとした。


「戦争を止めるためには戦うほかに道は残されていなかった」
それは言い訳だな。或いは自己欺瞞だ。
戦争はいつかは終わる。どんな形にせよ。ただそれを終わらせるのは戦闘ではなく、政治だ。
先の大戦、終わらせたのは君たちじゃない。カナーバらが出てこなければ、あのまま続く可能性もあり得た。


「俺にはキラが分からなくなった。
キラと俺の道はぶつかり合うはずがない、同じ方向に向かっているはずなんだ。
なのに何故戦う、俺とキラが!」
はいはい、君の頭の中にはもうキラしかないんですな。もういいよ好きにしろよ。
いつまでも君はキラが自分に従うべきだと考えている。


「議長の言葉は何処までも心地よく正しく思えた。
でもその裏にある真意を知ったとき、何もかもが信じられなくなった」
いやアスラン、単に君が人の口車に乗せられやすいだけですから!
別に議長は初めからそういう人だし、そういう世界観のもとに動いていた。ただ君がそれを見ようとしないだけで。議長は初めから真っ黒だし、君を掌の上で転がす手口はなかなかのものだったよ、アスラン。
議長の目指す世界とラクスの目指す世界、だがそこに大きな違いが見出せない。



「脱走したわけじゃない、ただ真実を知りたかっただけだ。
信じられるものがほしかっただけなんだ」
何を脱走と呼ぶかは、立ち位置によって違います。しかしザフトからすれば君の振る舞いは脱走です。
そして君はまた、世界を彷徨う。
何処かに信じられるべき、永遠のシャングリラがあると夢想して。
自分で自分の足元を掘らなければ、そこに泉はないのに、誰かが泉を知っていないかと世界を探して彷徨う。


「アスラン、君は僕に答えられるの?
君が信じるようにデュランダル議長を信じることは、僕にはできない。
だって、戦いのない世界をつくるためだからといって、こんなにも多くの血を流さなきゃならないなんて、どうしても僕には正しいと思えないから」
質問に質問で返すのがキラならば、更にそれに問うてみよう。
多くの血でなければ君は構わぬというのか、キラ。
君が殺した命はどうでもいいというのか、キラ。それは「多くの血」でないから?!
議長が歩む血の道と、多く変わらぬ血の道を歩く君。
君に議長を否定できるだけの何があるというのだ。



「このまま進めば世界はやがて認めぬ者同士が際限なく争うばかりのものとなる。そんなものでよいか、君たちの未来は」
議長が描いた世界はそうではない。議長はある意味、最もラクスに通底していると言えるかも知れぬ。到達の方法がより明確でより過激なだけで。


「君と僕にできるのは確かにただ戦うことだけなのかもしれない。
戦いからは何も生まれないのに。
でも、ラクスやカガリ達は一生懸命未来を切り開こうとしている。
その努力を打ち砕こうとするなんて、許せやしない。
だから僕は、未だ戦っているんだ」
結局キラがseed-destinyで得たものは、ラクスやカガリのために人を殺す、それが自分の立ち位置だということだと、彼は告白している。
それは議長の描く世界のために人を殺すシンやレイと、敢えて言えば議長に誘われてザフトに戻りその剣となっていた頃のアスランと、どれほどの違いがあるというのだろう? 何の差がある?
例えばキラ、君は「一生懸命未来を切り開こうとしている」議長の「努力を打ち砕こう」としている訳だが? それをダブルスタンダードと言わずして何という!
所詮、剣は剣だ。暴力は所詮どこまでいっても暴力だ、それ以上でもそれ以下でもない。
「言葉で、話し合いで分かり合える道を探そうって……………当たれぇーーーーーーっ!!」
……それは何のギャグだ。



次回予告…ムウがMSに乗っている………ああ。もう、溜息しか出ない。
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# by gil-mendel | 2005-07-30 20:08 | seed-destiny



議長至上主義。黒くて結構!
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