ちっちゃな種が暮らしいい。

phase-50-2「分かるだろう、お前には。俺は、ラウ・ル・クルーゼだ!」

レジェンドとストライクフリーダムの決戦は続く。両者共にドラグーンの対決となれば決着もつかず。いいねえ、ドラグーン対ドラグーン。この二者の対決が漸く最終話になって見られる、それはよしとしよう。
「何故なんだ、何故こんな!」
キラが叫ぶのは、ラウが生きているはずはないと思うからか。そうだな、その手で殺したのだ。あとは、何故その遺志を継ぐものがいるのかという問い、そして、再現される恐怖。
「ええいっ!!」
レイ……口開けすぎ。何度見てもここでどうしても笑ってしまう。どうやったらフルフェイスのメットを被ったまま、口の下側だけ顎が落ちそうなほど開けるという芸当ができるのか誰か教えてください。
放たれるドラグーン。両者の決着は、未だ着かない。因縁の、対峙。

アカツキとインフィニットジャスティスは真っ直ぐレクイエムへ向かう。あれ? 何でデスティニーが追いついていないのだ??
「えらい数だなあ、こりゃあ。が、数だけいたってねえ!!」
名無し男が蟻でも潰すように、防衛線を突破していく。
そうだ。問題は数ではない。問題は──機体性能と、遺伝子、そして、神の寵愛。何て虚しい物語なのだろう。何故人は、報われないのだろう。
一方AAもゴットフリートをぶっ放していく。そこへ、ミネルバが来襲。
「距離16!」って、そりゃちょっと近いですな。しかしこの間「距離20!」とかを聞いているのでまあたいしたことはありますまい。
タリアさんが、く、という顔をする。今回は本気だな。

ミネルバに戻らず雑魚をぱしぱし落としていたルナマリアは、ジャスティスを発見。無論、同時にアスランもインパルスを発見。
ルナマリアの脳裏に過ぎる、アスランの思い出。ミネルバに勝手にやってきた頃から始まって、ちょっかいかけた様々な記憶が。さらにそこにメイリンを思い出す。
「でも、何であなたがメイリンを……!」
すみません、その後に続くべき言葉は「連れて行った」とか「たぶらかした」とかなんですかね?
「よくもメイリンを!」
いやそんなこと言われても、あれは単なるモノの弾みって奴ですから。行きがかり上ついつい、女難フラグ大量に立てはしたものの、君を連れて行く訳にはいかなかったもので。つうかメイリンが勝手について来たって言っちゃ駄目ですか? まあルナの立場からしたらそうは見えないんでしょうが。
インパルスの砲撃を当然シールドで防ぐアスラン。力の差は歴然、といったところか。
「やめろルナマリア! お前も!」
「逃げるな!」
逃げてくれるだけましだと思ったほうがいいかもな。本気でぶつかったらあなた死にますよ。
「邪魔をするな! 君を討ちたく等ない!」
…………アスランって本物の馬鹿だと思うのはこんなときだ。ルナマリアがどういう性格か、上官だったくせに全く分かっちゃいない。侮られたと思えばルナは激昂し、普段以上の力を発揮する人だ。その辺り、レイの操縦術とか少々参考にしたほうがいいんじゃないかと思う。
「何をぉっ!?」
しかし彼我の差は埋めがたく、ルナにダメージ。そこへシンが助けに来る。いや遅いって。先刻はジャスティスのすぐ後ろくらいを追い縋ってたんじゃなかったのか?
「こんのぉー、裏切り者がぁーーっ!!」
シンの言葉はレイに規定されている。アスランを裏切り者だと呼ぶのは、それはシン自身の言葉ではなく、レイの言葉だ。だからその言葉は、あくまでも借り物で、シンの一番深くには根ざしていない。だがそれを使わなくては、シンは行動できないのだ。
「シン!」
アスランは自分の育てるべきだった部下の名を呼ぶ。どうして分かってくれないのだと言いたげに。しかし彼は、自分がいかに分からせようとしなかったかを、問わない。
「大丈夫か、ルナ!」
「シン!」
デスティニーが羽根を開く。飛べない翼。
「あんたって人はぁーーーーーっ!!!!」
シンが本当に言いたくて、本当にシンの言葉であるのは、寧ろこちらだ。ずっとシンはそう言ってきたのに、アスランの心には正しく響くことはなかったけれども。
「よくもルナを、ルナをやったなあっ!?」
シンの怒りの種が割れ、ジャスティスを地へ落とすばかりに。
ルナは二人の名を呼ぶ。……何ていうか、もう彼らは兄弟喧嘩しているようにしかみえない。ある意味ほのぼのしていさえする。

そんな痴話喧嘩の戦場とは別な場所で、レイとキラは激突を繰り返していた。最中のレイが、妙に幼く見えたりする。
「誰だ、誰なんだ!」
……キラよ、そんなこと問うても無駄だと思うんですが。つうか知って意味がありますか?
彼ら二人の能力はある意味怖い。明らかに通信回線を開かずしてお互いの顔を見、お互いの心を聞き取るのだから。
ついにキラは相手が誰か知りたいという一念で、こちらを睨み付けるレジェンドの搭乗者の顔を知る。少年。ラウ・ル・クルーゼではなく。
「君は!」
「……分かるだろう、お前には。俺は、ラウ・ル・クルーゼだ!!」
「!」
キラが怯んだ隙に、レイは集中攻撃を喰らわせ、そのいくつかは微かにヒット。
レイにもキラの声が聞こえ、顔が見えているのだろう。だから会話が成り立っているのだが……何者だ君らは。
「人の夢、人の未来、その素晴らしき結果、キラ・ヤマト!」
……そうだな、キラもまた、結果の子だ。レイ同様に。素晴らしい結果か、その踏み台かという違いはあれど。
怯んだところへ集中砲火を浴びせるも、防がれる。さらにその上に言葉を重ねるレイ。
「ならばお前も、今度こそ消えなくてはならない!」
死人の名を名乗られて、キラは明らかにトラウマに入る。もともと前大戦の後半分死んだようだったのは、そのトラウマがあったからだろう。
メンデルで相対したラウを思い出す。仮面を着けた男。
「俺たちと一緒に──生まれ変わるこの世界のために!!!!」
レイが何を為そうとしていたのか、はっきりしたと思う。「お前『も』『今度こそ』消えなくてはならない」、つまりは自分もラウもキラも、同じ人間の業として、次の世界にいてはならぬものとして、消えねばならないとレイは言うのだ。
議長が創る、新しい世界に、元からレイは生きるつもりなどないのだ。自分が何かを知っているから。

ふと、レイが回想する。
何故かアカデミーの赤服を着たレイが、まだ議長になっていないデュランダルへ問う。
「ねえ、ラウは?」
明らかに時空がおかしい。まさかアカデミー卒業時までラウの生死を隠しておけた訳もあるまい。だが議長の回想も時空がばらばらなことを思えば、仕方ないのか?
にしても、レイの声が妙に幼い。多分、こちらがレイとしての素、なのだろう。
「ラウは、もういないんだ」
背を向けたまま、デュランダルが答える。そして、振り返りながら。
「だが、君も、ラウだ」
「は?」
何を言っているのだろう、と不可思議な顔をする幼げなレイに、ポケットから例の薬を出して渡すデュランダル。
「それが、君の運命なんだよ」

いくら考えてもこの回想がよく分からない。レイが薬を貰ったのはもっと幼い、それこそ7歳くらいの頃だったはず。あのとき、デュランダルから薬を渡されて泣いていたのは、自分の運命を知ったからではなかったのか?
まあ勿論、今回は象徴としてラウの薬を手渡したのだという考え方も成り立たなくはない。それまではラウとレイが同一の遺伝子だと語っていなかった、のだとしたら。ということは、レイの立場からすると、自分と同じ薬をラウが持っていたと、このときになって知らされたことになるのか。まあ、そうでなければあの年齢よりもさらに幼げな表情はあるまい。とすると、レイのやたら大人びた人格が形成されたのは、ラウ死亡後ということになるのか。あり得ないとは言わないが。
だがそうだとしても、時空がおかしい。百歩譲ってアカデミー入学前くらいにしておいてくれるなら、意味不明な部分も調整つけられるような気がするのだが……どうだろう。
いつからレイは、自分もラウもキラも消えねばならない存在だと思うようになったのか。ラウ死亡後、その死の意味を考えていたのか。議長が描く世界の露払いとして消えようと思うようになったのはいつなのか。……まだそのあたりについては分からない。矛盾しない回答がうまく見出せない。

さて、一方シンとアスランは兄弟喧嘩を続けている。アスランに本気でシンを殺すつもりがないのだから、そうとしかとれまい。
シンは種割れするが、迷いを吹っ切り赤い機体に乗ったアスランには全く敵わず、ソードを叩き斬られてしまう。息を呑むシン、そしてルナマリア。

レイとキラに戻ると、どうもキラはレイの回想部分まで見えてしまったかのようで、恐怖に眼を見開いている。
「そんな、何故君が! 何故君がまた!!」
キラはレイとラウを同一視することから抜け出せない。そうでなくては「また」などと言えない。どう考えても明らかに別の人物であるのに、恐怖のあまり亡霊がそこに現れたかのように感じてしまうらしい。
「逃れられないもの、それが自分」
議長の声、恐らくはレイの回想。そこにオーバーラップする、研究所で若い議長から薬を渡される7歳くらいのレイ。幼く、従順な。自分、というか遺伝子というものから逃れられないことを知ったレイ。
そしてアレックスと名乗っていた頃のアスラン。彼も自分というものから逃れようとしていたのだった。
オーブの慰霊碑の前で立ち尽くし、悔し涙に暮れるシン。
再びフリーダムに乗ることを決意したときのキラ。戦士であることから逃れられなかったキラ。
カガリ。オーブを背負わなければならなかった少女。
撃たれたミーア。影武者として、始めからこうなると定められていた少女。
「そして取り戻せないもの、それが過去だ!」
声はレイ自身の声へ。レイが自分で得た答えなのだろう。
幼いレイはデュランダルの手から薬を受け取り、その運命に泣く。けれども次には、彼はデュランダルの傍からピアノへ嬉しそうに駆け寄り、微笑んで弾いている。どちらの時間がより早いのかは分かりにくいが、同時期のことと考えてもよさそうだ。
取り戻せないものは、辛い思い出も優しい思い出も、同じように流れているのかもしれない。
「だからもう終わらせる、全てを!!」
殺戮されるコーディネイター、血のバレンタイン、オーブ陥落。人類の負の歴史。
「そしてあるべき正しき姿へと戻るんだ!」
最初のコーディネイター、ジョージ・グレン。人工子宮を開発する研究者たち。人は人の命を手段にし、歪めてきた。
「人は! 世界は!」
憤りと激情を、レイはぶちまける。それを遠く、メサイアから注視している議長。
レイがこんなに激昂したのを、初めて見た気がする。今までは、例えばアスランを追うときも、計算されつくした「怒り」だった。感情に走らない人が感情に走るとき、それは殆ど、敗北へと繋がる。
それほど、許しがたい存在だったのだろう。踏み台にした者への、踏み台にされた者の怒りとだけ言うのでは足りない。存在そのものがあってはならない、自分と同じく存在してはならないモノ。自分と同じく、新しい世界を歪める者。だからともに、消えねばならないのだと。
レイはずっと、死へ向かって疾走していたのかもしれない。新世界建設という名の死へ。
一緒に死ぬんだと言われたキラは、反論する。
「でも違う!」
キラに撃ち抜かれる、レジェンドのドラグーン。レイは一瞬怯むが、新たなドラグーンを差し向ける、しかしそれも撃ち抜かれてしまう。
「命は、何にだってひとつだ!」
思わぬことを聞いたように、レイが硬直する。確かに、先刻まで自分とラウがイコールだと認めていた敵から、やっぱり違うといわれると驚きもするだろうが。だが、多分意味合いとしては、『君も、ラウだ』と言った議長の言葉に対するものとして、『俺は、ラウ・ル・クルーゼだ』という名乗りに対するものとして、聞き取ったのだろう。
「だからその命は君だ! 彼じゃないっ!!」
「ぁ……」
キラがどういうつもりでそう言ったにせよ、実は自分こそが亡霊に囚われているのを否定したくて言ったにせよ、その台詞はレイの弱い部分を衝いてしまった。いや、恐らくはレイ自身が心の隅で思っていたことだからこそ、図星を衝かれたというべきなのだろう。そうでなくては、そんな短い曖昧な言葉で虚に墜ちる理由がない。
心の底で、納得などいっていなかったのだろう。議長の描く世界を理性では理解し、賞賛し、それしか望む世界はないと考えていたとしても、奥深くの感情の部分で、違う、と叫ぶ思いが伏流水のように存在していたのだろうと思う。激情に駆られていただけに、言葉が感情の深い部分に届きやすかったというのもあるのだろう。
……だが、こんな状況で、こんな土壇場でそんな想いに気付かされるとは、レイがあまりに哀れだ。そんなことに気付くのは、もっと早く、せめてシンたちとの温かい時間の中であってほしかった。こんな段階では、もう、できることが少なすぎる。
身動きできなくなってしまったレジェンドを、キラはフルバーストで斃す。
レイの絶叫が、……耳に、残った。


駆け足でAパートを追ってきました。Bパートは、やはり私にとってかなり辛いので、もう少し先になると思います。また、Aパートについても後日追記する予定です。
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by gil-mendel | 2006-11-19 22:27 | seed-destiny
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議長至上主義。黒くて結構!
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