phase-44-02 「未来をつくるのは、運命じゃないよ」
普通に感想を書いていたと思ったのに、今回は随分長くなってしまったようで、最後だけ分けました。以下続きでどうぞ。
AAで、アスランが悲愴な顔で呟く。 「同じだ、ジェネシスの時と…! もう、どうにもならない!」 巨大な暴力の前に、人は無力で。 だがそのジェネシスを、自爆で止めたのは君だったのではなかったかね、アスラン? 「うん。プラントは勿論だろうけど、こんなの、もうきっとみんなが嫌だ」 おお、他人事だねキラよ。事態は嫌だとかいうレベルを通り越していると思うんですがね。てか、連合はこの事態が嫌だと主張している訳ではないのでは? みんなって誰のことですか? 「でも、撃たれて撃ち返し、また撃ち返されるというこの戦いの連鎖は、今の私たちに終わらせる術がありません」 …そう、結局前の大戦から君が学んだことはそれなのだね、ラクス。暴力の応酬、それは結局終わらないと。だからレクイエムの惨事も、仕方のないことなのだと。………は! お前があのプラントの中にいて同じ言葉が言えたらその時に聞いてやるよ! 「誰もが幸福に暮らしたい、なりたい、そのためには戦うしかないのだと、私たちは戦ってしまうのです」 つまり君の結論はこうだ、戦いこそが人間の幸福追求だと。暴力の応酬と悲惨こそが、人間の望みだと。だって、君には戦いを終わらせる術などないのだから。終わらせる意志もないのだから。暴力の応酬こそが君の答えなのだから。君が作らせていた暴力を、私は忘れないよラクス・クライン。撃たれて撃ち返す、その応酬そのものを何の目的も世界像も持たぬままに君が為したことを。 「議長は恐らく、そんな世界に全く新しい答えを示すつもりなのでしょう。 議長のいう戦いのない世界、人々がもう決して争うことのない世界とは、生まれながらにその人の全てを遺伝子によって決めてしまう世界です…恐らく」 ……あちゃ。議長の描く世界とは本気でそれか? 思わず自分の口が言ったのかと思ったよ。 36話で予測していた議長の思惑がほぼ当たり、というところか。…もっと意表を衝いて欲しかったな。 というより、自分の見通しがラクスと同じでうんざりした。まあ判断材料はあの世界の神であるラクスと、視聴者=神視点に立つ我々とは同じだから、導き出す答えも同じということか。 前作のクルーゼの台詞を思い出す。 「私のではない! これが人の夢! 人の望み! 人の業! 他者より強く、他者より先へ、他者より上へ! 競い、妬み、憎んで、その身を喰い合う! 既に遅いさ、ムウ。私は結果だよ、だから知る! 自ら育てた闇に喰われて、人は滅ぶとな!」 それを無くすための一つの方法として、誰もが無駄に競い合わなくて済む世界を提唱するならば、議長はやはり、ある意味ラウの意を継ぐ者なのかもしれない。恐らくは、レイも。 「それがデスティニープランだよ」 とはもう一人の神、キラのお言葉。つか、ラクスが持つそのノートにそこまで書いてあった訳じゃないだろ? 断言するには早いんじゃないかね? 「生まれついての遺伝子によって人の役割を決め、そぐわないものは淘汰・調整、管理する世界だ」 「淘汰、調整?」 その言葉を聞いて名無し男が思い出すのは、ステラ、スティング、アウル。………今頃か! お前は彼らをどう扱ったのか、その責任を問われる立場であることを忘れるな! てかあんた早速溶け込みすぎだよAAに。 エクステンデッドも、結局は淘汰・調整されて残った者だけが兵器として利用された、その点ではデスティニープランと似ているのかもしれない。だからOPのミネルバの背景はロドニアラボなのかもしれない。いずれもその操作方法は異なるにせよ兵器として人間を扱い、操縦する。 役割を与えられて生きること、それにエクステンデッドもデスティニープランも変わりはないということか。 「そんな世界なら、確かに誰もが本当は知らない自分自身や未来の不安から解放されて、悩み苦しむことなく生きられるのかも知れない」 ……まあね、アスランは悩まないとアスランじゃないですからね。悩んで成長しないところもアスランだけどね。 「自分に決められた、運命の分だけね。望む力を全て得ようと、人の根幹、遺伝子にまで手を伸ばしてきた、僕たちコーディネイターの世界の究極だ」 「そこにおそらく戦いはありません。戦っても無駄だと、あなたのさだめが無駄だと言うと、皆が知って生きるのですから」 二神かく宣いき。 いずれもがコーディネイターである彼らがこう語る、そこに大きな矛盾がある。しかも片方はスーパーコーディネイター。 コーディネイターという存在を、突き詰めればデスティニープランになる。遺伝子を操作して望みを叶えようとする、その社会が辿り着くべくして辿り着いた道なのだ。だからデスティニープランの否定はコーディネイターという存在そのものの否定に繋がる。 そこにキラとラクスの自己否定と混迷を結びつけたなら、この物語はもう少し広くなったろう。だが彼らは、「もう迷わない」のだ。残念なことに。 AAは、この会議が始まったときのプラントの大惨事を全く忘れ去ったかのように、「議長を止める」ために宇宙へ上がることを決意。 「未来を作るのは、運命じゃないよ」 どうしてだろう、それが、「未来を作るのはシンじゃないよ」と言われている気がして、少し虚しくなった。 ああどうせ未来はAAが造るものだろうよ! そんな未来には私は住まないがな! 全く、自分たちがジブリールを結果的に宇宙に上げたことの責任を僅かでも問うてみろよ! 暢気にハイタッチしてる場合じゃないだろ! 人がゴミのように殺されてるんだぞ! 間接的にあんたらの手でな! 玉座にも似た椅子で、議長が満足げに微笑む。 ああ、この笑いを見たくてここまで来たのだと、思った。
by gil-mendel
| 2005-08-23 00:39
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